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お洒落に余念のないパリジェンヌの間では、近東やマグレブに伝わる美容法、いわゆるオリエンタルエステが大好評。パリのあちらこちらにあるハマム(蒸し風呂)で簡単にできる美容法をモロッコ出身のアミナさんに伝授してもらいました。 |
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パリには、かつてのフランスの植民地だった、モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカからの移民が多数住んでいます。大半がイスラム教徒である彼らは、非常に清潔好きで、特に女性は、お洒落に余念がありません。お洒落といっても、西洋式に派手な化粧をしたり、最新のバイオテクノロジーに基づいた美顔術を受けるのではなく、100%ナチュラルな天然素材を使って、家族代々、母親から教えてもらってきた伝統的な方法で美肌作りをするのです。
まず、アミナと私は、瓶につめた石鹸やら、土やら、泥やらを一式バスケットに入れ、グラン・モスクに出かけました。グラン・モスクとは、パリのカルティエ・ラタンにある美しい回教の礼拝堂です。世界大戦の際にフランス軍として戦死していったイスラム兵の魂のために建てられたものですが、中に美しいタイル張りのハマムがあるのです。 |
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「まさか、あそこも?」と聞いてみれば、「もちろんよ。本当のお洒落さんだったらね」、と彼女。 「シバの女王っているでしょ? 旧聖書にでてくる絶世の美女。あれが私たちの、理想女性像よ。シバの女王は、体には、髪の毛以外の毛は一本もなかったのよ」。 体の熱が冷めたところで、ふたたびスチームの中へ。今度は、サボン・ノワール(オリーブオイルの黒石鹸)を取り出したアミナは、パンにバターを塗るがごとく、私の体をくまなくぬりたくります。 「これはね、皮膚の毒素をとって、すべすべの、角質のないソフトな肌にするためのもので、私たちの必需品よ」とアミナ。 |
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「このガスールは、泥みたいなもの。余計な皮脂とかをとってくれるらしいよ。ヘナは知っているでしょ? これでタトゥも入れるのよ。髪にハリと、美しい色と輝きを与えてくれるの」。ヘナの独特な匂いの中、アミナは、妹のことや弟のこと、両親のことなどを話してくれた。 「やっと終わった!」と思ったら、まだまだ甘かった。今度は、かかとやひじなどの硬質皮膚の手入れ。モロッコ伝来の円盤型の石を使い根気よくマッサージ。そして、輝く歯のためには「スワック」と呼ばれる木でゴシゴシと歯と歯茎を磨く。そして、再び休憩室へ……。 |
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今度は、火照った体に、エッセンシャル・オイルを使ったマッサージでリラックス。これは極楽! アミナと交代で10分づつ背中に円を描くようにマッサージ。私は、ツボなどをいくつかアミナに教えつつ、指圧をサービス。 マッサージが終わったころ、軽い疲れを感じたので、庭のテラスでミント・ティーを一杯飲むことにした。私は、松の実入りのミントティ−を。アミナはアーモン入りを注文した。お茶の甘さが体を安らげてくれてリラックス。ここで、私たちは、調子に乗って、水煙草も注文した。私はりんご味、アミナは蜂蜜味の煙草。お昼に出発したのに、気が付けば、もう夕方だった。 |
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モロッコの家族代々にわたって受け継がれてきた美へのオマージュ、誘惑術、フェミニティーのすべて。モロッコ式美人、アミナは、こうしてつくられたのだと妙に納得。 最新のバイオ技術を駆使した美容術がファ−スト・エステだったら、太古から伝わるこのオリエンタル式美容法は、正真正銘のスローエステではないだろうか。 |