![]() |
![]() |
パリをひさしぶりに訪れて「おや?」と思われた人も多いかもしれない。パリの主要な道に自転車専用レーン(pistes
cyclables)ができたのだ。自転車専用の信号までできた。 環境先進国ドイツをの自転車タクシーは、この専用レーンをぐんぐんと走っていく。しかし、パリでは、まだ、それほどには活用されておらず、人がこのレーンを呑気に歩いている姿も見受けられる。 ドイツを始め、スイス、オーストリア、そして、もちろん北欧にもあるエコタクシー。 もはや、自転車タクシーのない都市はソフィスティケイトされた都会とは呼べなくなっている。去年の秋にやっと東京でもスタートしてくれたが、フランスの現在の自転車事情は……? |
![]() |
日本でも京都発の可愛いエコ・タクシー、VELOTAXI(ベロタクシー)が話題になっている。ハイテクなデザインがかっこよく、坂道では電動機がシュルシュルと運転手を助けてくれるが、排気ガスは一切出さない。これはドイツ型のエコ自転車タクシーで、スイスやオーストリアなど他のの欧州の国でも時々見られる。 一方、パリの自転車タクシーは、もっとレトロ。運転手は、ベレー帽に同色のチョッキを身につけており、まるで20世紀前初頭スタイル。御覧のとおり、ベトナムのシクロ(3人乗自転車)だと横幅がとられるので、それを二人乗用のタンデム式に変型したスリムな形だ。この形は、渋滞も物ともせず滑らかに進む合理的な交通手段。寒い冬でも運転手と一緒にペダルを漕ぐから運動不足解消にも有効だし、1キロにつき1ユーロ(125円)と料金もかなり良心的。利用者は流しを拾うパターンが多いようだが、予約をすれば自宅にも来てくれる。 |
![]() |
|
![]() |
|
![]() |
この自転車タクシーを経営しているのは、非営利民間団体(NPO)の“タンデム・サービス”。主宰者のステファン君は、できるだけ都会から車を排除しようと活動している若きエコロジストだ。 「アジアを旅し、ベトナムには4年間も住んでいました。しかし、フランスに帰ってきたときに、この国の無駄の多い生活にショックを覚えました。特に、パリには車が多すぎる。サイゴンでシクロが活躍しているように、パリだって自転車が活躍できる比較的小さなサイズの街だと思うんですがね。 僕はサスティナブル・デブリップメントに非常に興味があります。個人的には、自転車は、人間が発明した最後の有益な道具だと思っています」。 確かに、パリの面積は東京やロンドンに比べると、ずっと小さい。山手線の内側ほどの広さ、あるいは世田谷区の2倍しかないのだ。 ステファン君も言う通り、自転車の速度というのは、パリ観光にはぴったりの速さ。車と違って止めたい時にすぐにストップできるから、写真を撮ったり、おみやげを買ったりするのに最適だし、団体ツアーとは違い、自由気ままにスケジュールが組むこともできる。 客はリピーターが多く、タクシー自転車をバイク便代りに頼む人もいれば、子供の学校への送り迎えを頼む人もいるという。 |
![]() |
今から一年前にNPOを作り、自分の貯金を下ろしてタンデム式自転車を100台購入したというステファン君。彼の熱意に動かされ、3つのフランスの企業が後援を申し出てくれたそうだ。割と順調な滑り出しだったが、現在、最初の障害に遭遇しているという。 「問題は、運転手が少ないことです。私たちNPOの目的は、環境改善だけではなく、年々増えていく失業者たちに職を提供しようという意図もあるのですが、今のところ、アクティヴに毎日仕事をしている運転手は10人程度しかいないのです」。 もったいないことに、残りの 90台の自転車はルーブルの横のガレージで眠っている。小さなNPO団体が自分たちの力だけで宣伝活動をしていくのは困難が多いことだろう。口コミで情報が伝わっていくのも時間がかかる。愛犬の糞でさえ未だに拾うことができないジュ・マン・フティスト(「私の知ったことじゃないわ」と思っている人)が多いパリの市民に環境問題を諭していくのは忍耐が必要かもしれない。がんばれ、ステファン君! |
![]() |
|
![]() |
実は、パリにはもう一種類のエコ・タクシー「velo taxi」と呼ばれる種類のものがある。こちらは、NPOではなく会社経営。エコロジーに興味を持っているパトリック&ディディエ・レオナール兄弟が考案したもので、シクロの原形をとどめた3人乗りタイプ。 統計によれば、このエコ・タクシーを見たパリジャンの96%が「すぐれた交通機関だ」と賞賛し、42%が「日常的にパリを走ってほしい」と思っているそうだ。 この自転車タクシーは1996年12月に改定されたパリの空気に関する法律を意識し、「これからは優しい交通機関にとってかわる」という信念から生まれた。こちらは、運転手の費用や会社の運営費用をスポンサー(広告主)から捻出している。主な広告主は、展覧会やサロン、メッセなどの行事関係。 しかし、残念ながら、こちらのタクシーも、いまひとつ普及していない。パリは、他の世界の都市に比べたらタクシーが随分と少ない街だ。パリの郊外(空港など)を含めて約15000台しかいない。しかも、勤務時間は厳粛に制限されており、12時間以上勤務することは許されていない。ということは、一度に7500台も走っていないということになる。これならば、エコ・タクシーが活躍できる場が望めそうだが……。 いずれにせよ、自転車タクシーがパリでドイツのように普及するには、少し時間がかかりそうだ。 |
![]() |
|