続いて、ゲストの4人によるミニ・パネルトーク。3つのトピックについて、話を伺います。
左から
久保田さん、山下さん
高橋さん、仁藤さん
<ゲスト>
NTT都市開発 プロジェクト推進部 企画担当課長 仁藤さん
NTT都市開発 プロジェクト推進部 建築担当課長 高橋さん
大成建設 建設本部 専門技術部 環境デザイン室 室長 山下さん
大成建設 建設本部 設備建設第二部 小野田室 シニアエンジニア 久保田さん
NTT都市開発は、プロジェクトの事業者代表企業という立場。仁藤さんは提案時から事業面を担当、高橋さんは設備計画などを担当しています。大成建設は、事業者、設計、施工を担当。山下さんは緑地水辺のランドスケープ設計を、久保田さんは空調衛生の設計などを担当されてきました。事業者、プランナー、技術者といった異なる立場から、建築費用を抑え、環境に配慮した快適な空間をプロデュースすることに尽力してきた皆さんです。
仁藤:駅からこのビルにたどり着く道のりからの眺めが好きです。このビルの建設地は、元々は何もなかった土地でしたので、建設前は「ビルができたら東京タワーが見えなくなってしまう」という声もありましたが、それよりも付加価値の高い緑地などをつくって皆さんに貢献しますと説得して、このプロジェクトを進めてきました。それが形になったという、感慨深さを感じるのです。
高橋:オフィスフロアの海側からの、レイボーブリッジの眺めが好きです。
森:社長になると、部屋が持てるという場所でしたよね。
山下:東京タワーを望むプロムナードが一番好きです。最近は子どもが自然と触れる機会が少ないと言われますが、あの場所では、子どもが水辺で遊んでいる姿もみられるのです。最近は子どもが自然と触れる機会が減っていますが、水辺で、少し危なっかしい様子で遊んでいる、そういう姿が見られる空間が増えたらいいなと考えています。
森:「ギリギリセーフ」な空間をつくると(笑)。
久保田:設備設計を担当しているので、設備室などのバックヤードの部分が好きです。アトリウム空間の床放射暖房など、提案したプランを盛り込んで竣工できたことは嬉しかったですし、将来を見据えて、新しいオフィスビルとしての付加価値を与えられるものを設備の面から実現できることに喜びを感じます。
山下:私が担当しているランドスケープは、自然・緑に関わる部分なので、できあがりの緑豊かなイメージを伝えることが難しく、信頼を得ることに苦労しました。竣工が冬で、その時期にはまだ全体的に土が見える茶色い外観でしたので、しばらくは「本当に緑になるの?」と言い続けられてきましたね(笑)。
仁藤:春から夏になって緑がでてきて、ああこれで信頼できるってね(笑)。
久保田:設計とは、何もないところから組み立てていくもの。技術を二次元の絵に落とし込んで、それでは伝えきれないスケール感を、三次元の世界へと、形に落とし込んでいく。その実現に7-8年はかかります。長い時期取り組んでいただけに、竣工した後は、ある種の失恋感覚のような喪失感がありました。
高橋:このビルの設計は、収益構造がまったく違う業態の4社が連携して、ひとつのものをつくりあげるプロジェクトでしたので、意見の食い違いもありました。関係性を高めるためにと、「分科会」と称して夜にもよく顔を合わせていたので、プロジェクトが完了して会えなくなって、寂しいですね。
森:できあがってみたら「思っていたのと違った」ということはなかったですか?
仁藤:緑地構築に当たり、何度かワークショップを開いて、地元の人の意見なども聞いてきました。地元の方からの「このあたりの高層マンションや幼稚園には子どもたちが遊ぶための園庭がないので、子どもたちが裸足で走り回れる芝生が欲しい」という声を形にしました。そういう意味では、いい意味で想定外と言えるほどに、地域の方からたくさんご利用いただいています。オフィスに入居された方にもより積極的に利用いただくことを、今後は考えていきたいですね。