増田:去年、キープ協会は30周年を迎えました。展開している事業は4つ。ひとつは、キープ・フォレスターズ・スクール。ここでは、インタープリター的センスを持って日々を暮らす「普段着インタープリター」を増やすことをめざしています。インタープリターとは、通訳者という意味です。人と自然、人と人をつないだりすることが役割ですが、プロだけではなく、インタープリター的センスを持って生活する人を増やしていきたいと思っています。
森:音楽の演奏なんかもやっているんですね。こういうのも、インタープリターには、大事なのでしょうか?
増田:そうですね。音や音楽を通じて、伝わるものもありますから、ギターを弾くインタープリターは多いですよね。他には、やまねミュージアムや山梨県立八ヶ岳自然ふれあいセンター、日光国立公園那須平成の森/那須高原ビジターセンターの運営などを手がけています。
森:そんなキープ協会が2006年から、J-POWERとコラボして環境教育プログラム「エコ×エネ体験プロジェクト」を開催しています。電力会社という異業種と組むことのインパクトは?
増田:キープ協会の取り組んできた自然体験型環境教育とは違う切り口の環境教育に取り組むことにつながったと思っています。
増田:この図にあるように、キープ協会では、2000年以前は「自然系環境教育」と呼ばれることを手がけてきました。エコ×エネは、地域や社会に触れる「生活系」のプログラムですよね。そして、世界のことに目を向ける「地球系」と呼ばれるものがある。僕らは「自然系」からきているけれど、生活の必要なことは自然から得ている、地球系の人も、地域がないと生活がなりたたないよねということで、それぞれが重なっていった。それが、この図(総合系)です。エコ×エネと出会うことで、キープ協会も総合的な環境教育に踏み込んでいった、そしてその総合的な環境教育がESDなのかなと思っています。
森:そんな増田さんが、山梨県北杜市に暮らし、持続可能な地域づくりにこだわっている理由とは?
増田:地域にこだわり始めたのは学生時代で、修士論文は「持続可能な地域づくり」だったんです。人によって地域の捉え方はいろいろありますが、僕としては、自分が関わりを持つ領域とか、人(主体)によってその領域は異なるのではないかと思っています。年代(ライフステージ)によって、地域との関わりは変化するし、自身の関わりによって、地域の捉え方(領域)も変化していくんです。
増田:僕は、「持続可能な社会」というのはある日突然生まれるものではなくて「持続可能な地域」がいくつも生まれ、それが広がることによって、地球全体が持続可能になることだと思っています。大切なのは、地域。ESDでも「持続可能な地域づくり」が大事だと言われています。
森:なるほど、少しずつ、地球を持続可能な地域で覆っていくと。でも、具体的にはどんなことをしていけばいいんですか?
増田:「フットパス」という言葉を聞いたことありますか?「歩く小径」という意味なのですが、今暮らしている北杜市では、歩いて地域を見てみようと、フットパスづくりをやってきました。地域の大人向けには、北杜市環境リーダー育成講座を開催し、市民のインタープリター育成を手がけています。参加者には、新しく地域に移り住んできた人たちも多いですね。それから、幼稚園向けのプログラムや、親子向けのエネルギー教室を開催しています。