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第7回 「これからの日本のエネルギーの未来を語ろう」荻本 和彦 氏

  • 2012年1月17日
  • 緑のgoo編集部
J-POWER エコ×エネ・カフェ
中長期的な取り組みを考える

森: 原子力発電所のコストの問題についてはいろいろ議論があると思いますが実際はどうなんでしょうか?

荻本: 原子力事故が起こると6兆円相当の被害が出ると言われますが、それで電気代はどれくらいあがるか、ということを考えると、原子力発電所で発電する電気の量があまりに大きいので、一つ事故が起こっても一円も上がらずに対応ができてしまうのですね。だからいいとか悪いとかを主張したいのではなくて、計算上は、そういう数値が出てくるのだということです。これが原子力発電の可否を議論する上で難しいところですね。再生可能エネルギーを活用したらどうかという話もありますが、安定供給の問題もありますし、前提として相当額の設備投資も必要となります。つまり、部分的には効き目があるけれども根本的な解決には結びつかないことを認識するのが必要です。私はシステムをやっている人間ですから必ずしも原子力を推進するという立場ではないですが、いろいろなシナリオを描くと、現実は当面原子力発電なしでは難しい。これが現在の状況だと思っています。

森: CO2削減についてはどうでしょう。

荻本: 原子力を止めると2.5億トン程、つまり今より2割ぐらい余計に出てしまうと言われています。

森: 再生可能エネルギーが最大限入ってもコストが上がってしまうし、CO2も抑えきれないということなのでしょうか。

荻本: 私は再生可能エネルギーの導入を進める研究をしてきていますが、「原子力がなくなる」という前提を持ってしてもどうかと言われると再生可能エネルギーだけでCO2の目標を達成することは厳しいのではないかと思っている。そういう状況ですね。

森さんの問いに答える形で話を展開する荻本さん
森さんの問いに答える形で話を展開する荻本さん

今、何をしなくてはならないか
持続可能な社会へ
持続可能な社会へ

荻本: 全世界でも燃料の問題が指摘されていますし低炭素社会より普遍的には持続可能な社会の実現というのは大きな課題です。そこで、前回お話しましたスマートグリッドの話にもつながるのですが、変動する再生可能エネルギーからの発電量を調整し、どう上手に使っていくかということを考えていかなくてはなりません。

荻本: 変動する発電量を安定化するというためには、電池が有効だと期待されていましたが、NAS電池は安全性に関する問題を起こしてしまいましたし、リチウム電池が導入されるのはまだまだ先といわれています。一方で私たちの力で変えることが出来る部分があります。それが需要です。震災以降、電力不足が懸念されましたが、メディアなどを通じて「節電しよう」と呼び掛け合うことによって、節電が実現出来てしまった。今は電力不足という危機感をもとにそれを行なっていますが、例えばそういった情報を常に需要側に送ることを通じて、あるいは時間帯によって値段を変えるなどの制度を取り入れることで需要サイドの協力を得た上での節電対策が可能になるのです。震災直後、そうやって節電ができること、もしかしたらこの東京エリアの人たちは世界ではじめて需要側の大規模なコントロールを実現できてしまった人たちと呼べるのかもしれないですね。

荻本さんの話に真剣に耳を傾ける参加者たち
荻本さんの話に真剣に耳を傾ける参加者たち
荻本さんの話に真剣に耳を傾ける参加者たち

荻本: 日本は確かにエネルギーに関してさまざまな課題を抱えていますが、裏を返せば、日本が最初に気づいていけば、世界にも応用できる事例を作れるのではないかと思うんです。私が研究しているスマートグリッドなどについても、世界でもコンセプチュアル(概念的)には存在しているものも多いですが、それを実現するための技術や制度が追いついていない。日本には優れた家電メーカーがたくさんあり、次の時代に求められる製品を開発するだけの力を持っています。こういうことをもっと活かしていけるといいなと思いますね。

森: なるほど。

荻本: 一つ言えるのは、私たちは変わるためのプランを選んでいかなくてはならないということです。確かに選択肢はいずれも厳しいですが、目をつぶったまま何もしないで5年を過ごしてしまうと、さらに悪い状況になってしまいます。

多くの資料をもとにカフェは進行された
多くの資料をもとにカフェは進行された

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