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料理動画メディア「DELISH KITCHEN」監修のほか、テレビや書籍でも活躍する人気料理研究家、井原裕子さん。文字数や「難しそうに見える」という理由で、これまでなかなか料理本に書けなかった「おいしい」のコツを、たっぷりと詰め込んだ『レシピに書けない「おいしいのコツ」、全部お話しします』(主婦と生活社)より、「しょうが焼き」にまつわるエッセイと、鶏むね肉で作る、目から鱗のレシピを抜粋してお届けします。
しょうが焼きは豚肉で作るもの。そう決めつけてしまっては、違うおいしさを見逃してしまいます。子どものころから大好きなしょうが焼き、あるとき豚肉の脂がちょっと重たく感じられるようになって、鶏むね肉で試してみたら、これがさっぱりとしてやわらかく、おいしくて。以来、うちの定番になり、「しょうが焼きは、鶏むね肉がいいのよ!」と人にもおすすめするようになりました。
鶏肉は、キッチンペーパーで一度包んで全体のドリップを拭くと、味が格段によくなります(むね肉に限らず、鶏肉全般で同じことが言えます)。鶏むね肉は、さわってみるとかたい筋が必ずあるので、ここをキッチンばさみで取り除くのがコツ。
細かなことですが、食べたときの口当たりが違います。私は「シルキー万能はさみ」というステンレス製のキッチンばさみを使っています。切れ味がよく、肉はもとより、魚の骨やあらもよく切れて、小さな部位や細かなところも切りやすいんです。
しょうが焼きや照り焼きなどの甘辛い味つけは、たれの味が濃いので肉の下味はいりません。片栗粉をまぶして焼くのは、むね肉をやわらかく仕上げるためと、たれのからみをよくするため。そして「しょうが焼き」というぐらいですから、しょうがの風味が肝心!
手間ですが、生のしょうがをたっぷりすりおろして作りたいところです。生のしょうがを使うと、その繊維がたれによくからんで、味わいも風味もよくなります。生とチューブでは同じようでまったく別物。大根でいえば、生と切り干し大根ぐらい違うと思っています。
つけ合わせの話も少し。せん切りキャベツやベビーリーフなどでもいいのですが、今回はれんこんの甘酢漬けと塩もみきゅうりを添えてみました。このふたつ、こってり味のつけ合わせにとてもいいんです。れんこんはスライサーで1.5mmの薄切りにし、水にさらしてからさっとゆで、水で薄めたすし酢に漬ければもう完成。みずみずしい新れんこんが楽しめる初夏から10月の初めくらいまで、よく作る一品です。きゅうりは、薄切りにしたら軽く塩をふってあえるだけ。塩をすることで、きゅうり独特の青くささがなくなり、食べやすくなります。レシピが長くなってしまうので、雑誌ではなかなかご紹介できないのですが、どちらもシャキシャキとした食感がよく、箸休めとしても優秀。ぜひ試してみてください。
『レシピに書けない「おいしいのコツ」、全部お話しします』本文より
・鶏むね肉:1枚(300g)
・片栗粉:大さじ1/2
・おろししょうが:大さじ1
A
・みりん:大さじ2
・しょうゆ:大さじ1と1/2
・砂糖:小さじ1
・米油:大さじ1
(1)鶏肉はキッチンペーパーで水けを拭く。1cm幅のそぎ切りにして片栗粉を両面にまぶし、余分な粉ははたいて落とす。
(2)Aは混ぜ合わせる。
(3)フライパンに米油を中火で熱し、(1)を並べて2分ほど焼く。裏返してさらに2分ほど焼き(むね肉は脂がないのでこんがりとはいかず、白っぽいままですが、火は通っています)、(2)とおろししょうがを加え、汁けをからめながら軽く(1/3量ほど)煮詰める。
井原裕子(いはら・ゆうこ)
料理研究家、食生活アドバイザー。愛知県生まれ。大庭英子氏のもとで12年間のアシスタントをつとめた後に独立。日本の家庭料理を軸に幅広くレシピを考案、著書多数。企業向けの商品開発やフードコンサルティングも行う。
Instagram @iharayukoo
聞き手・構成 白央篤司(はくおう・あつし)
フードライター、コラムニスト。東京都生まれ。「暮らしと食」をテーマに執筆、主な著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『自炊力』(光文社新書)、『はじめての胃もたれ』(太田出版)など。
https://note.com/hakuo416/n/n77eec2eecddd/
文=井原裕子
撮影=豊田朋子、平松市聖(人物)