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【ビーチで乗馬も】フランス「ラ・ボール」が約150年続く“最高峰の穴場リゾート”になった2つの出来事とは?

  • 2024年11月30日
  • CREA WEB

#314 La Baule
ラ・ボール(フランス)

 今回の旅はフランス西部のロワール川の河口の街、ナントが起点。ナントから電車で約1時間のところに位置するラ・ボールは、150年ほどの歴史を誇る由緒正しいビーチリゾートです。


150年近く前からリゾート開発が始まった老舗リゾート地、ラ・ボール。

 パリからも、ラ・ボールへはモンパルナス駅から電車で約3時間程度。毎年7〜8月のバカンスシーズンには多くのパリジャンが押し寄せ、数週間を海辺で過ごします。そのため夏になると、この街の人口も劇的に増加するとか。けれど、コート・ダジュール(紺碧海岸)に比べると、フランス国外にはあまり知られていない穴場なビーチリゾートです。


ラ・ボールは北大西洋岸の“コート・ダムール(愛の海岸)”の一部。コート・ダムールというエリア名は、1913年に新聞が一般の意見を集めて決めたとか。

 ラ・ボールはロワール地方の大西洋に面したビスケー湾沿岸、ポルニシェ港からル・プリガン港までの約9キロメートルにわたるハーフムーン形のロングビーチ。歴史あるブルターニュ文化と海辺の文化が融合した、独特な味わいを感じます。


サンセット前にビーチでくつろぐ人々。

150年近くの間、夏になると、パリのセレブたちの海辺の社交場に。

 訪れた9月は夏の賑わいからひと息ついた、落ち着いた風情が漂っていました。朝の潮が引いたビーチでは乗馬クラブの馬たちが仕事前の散策を楽しみ、数人のツーリストが遠浅の海を眺めていました。海岸線には風格のあるリゾートホテルやコンドミニアムなどが連なっています。


海岸線を縁取るように、真っ白な建物が並んでいます。建物の色はルールで決められているそう。

 貝殻がたくさん拾える淡い色調の砂浜や、白いビルの群れ、そして松林……どこかノスタルジックな風情を感じます。シックな大西洋のリゾート、という印象です。

住みやすいとは言えなかった土地がなぜリゾートに?


早朝に釣りを楽しむ地元の人。

 ラ・ボールのビーチリゾートとしての歩みは、1879年の鉄道の開通がきっかけでした。

 それ以前は、ここは湿った砂丘が広がる、不安定な地盤。住みやすいとは決して言えなかったようです。1779年にはひとつの村が嵐によって砂に埋もれてしまったこともあったとか。ちなみに、ラ・ボールの地名は、洪水に見舞われやすい海岸の土地を意味する古ブルトン語の“ボル(bôle)”に由来しているそうです。

 そして19世紀中ごろ、フランス人実業家説やナントの船主説など仕掛け人には諸説ありますが、松の木やハンノキなどを植樹することで地盤を強化。

 折しも当時は、鉄道の普及に伴い、欧州やアメリカでは今のビーチリゾートの原型が形作られた黎明期。パリの実業家は地盤が強化されたラ・ボールに鉄道を引く構想を練り、遊歩道などのリゾートプランを計画しました。そして別荘としてのヴィラも、続々と誕生。今でも当時のヴィラが6000棟も残っているそうです。


松の木などで地盤を強化し、鉄道も開通。19世紀中盤にブームだったビーチリゾート化の道を進むことに。

 そして1918年、ドーヴィルで成功していたカジノ実業家のフランソワ・アンドレがラ・ボールのリゾートの青写真を再構成。そのコンセプトは、カジノ、高級ホテル、アクティビティをひとつの敷地に揃えた、いわゆる統合型リゾートでした。


乗馬もクラシカルなアクティビティのひとつ。

 そのフランソワ・アンドレが、現在フランスやスイスでカジノやホテルを展開するリュシアン・バリエール・グループの創設者。今もラ・ボールには同系列の3つの高級ホテルがあります。

スター御用達、癒しのタラソ・スパ、お城のような空間……

 1926年に建造された英国ノルマン・スタイルの「ホテル・バリエール・エルミタージュ・ラ・ボール」は直接ビーチに出られるロケーション。屋内&屋外プールやスパ、海辺のレストランなど、あらゆる魅力がバランスよく揃った5つ星です。

 開業以来、歌手のエディット・ピアフや映画監督のサシャ・ギトリ、俳優のモーリス・シュヴァリエなど、往年のスターに愛されてきました。


海の青と白を基調に、ブルターニュ風の装飾でまとめた“エルミタージュ”。

「ホテル・バリエール・ル・ロイヤル・ラ・ボール」は2フロアにまたがる広大なタラソ・スパが特徴。フェイシャルやボディトリートメントのみならず、クラゲの水槽を見ながらのソフロロジーやフローティングプール、クリニークのメディカルスパまでも備えた、まさに癒しの殿堂です。


沖合700メートルから海水を引いているタラソ・スパ。最新施設を備えています。

インテリア・デザイナーのシャンタル・ペイラによってリノベーションされた“ル・ロイヤル”。

 美食で知られるルレ・エ・シャトーのメンバーでもある「ホテル・ル・カステル・マリー₌ルイーズ」は松の木々に包まれた、瀟洒なお城風。1970年代に世界を席巻したインテリア・デザイナーのジャック・ガルシアによるリノベーションに時代を超えたエレガンスを感じます。背筋がすっと伸びるような、おごそかな雰囲気です。


手入れの行き届いたガーデンを眺めながら、本格的なフレンチが楽しめます。

まるでお城のような“ル・カステル・マリー₌ルイーズ”。客室数31。

 こうした高級ホテルのリゾートステイにカジノ、本格的なゴルフコース、タラソ・スパ、乗馬クラブ、サイクリングなど、あらゆるアクティビティが、ここラ・ボールではまとめて楽しめるというわけです。このマスタープラン、100年前には実に画期的なこと!


海辺にそびえる“エルミタージュ”。ノルマンディーと英国のテイストが融合した建築デザイン。

 ラ・ボールで過ごしながら、「どこかで似た気分を味わったなぁ」と記憶をたどってみたところ、サンディエゴのホテル・デル・コロナドに思い当たりました。

 ホテル・デル・コロナドも1888年、鉄道が開業したことにより誕生した、あらゆるアクティビティを備えた統合型リゾート。クラシカルな佇まいの中に、当時の華やぎの余韻を感じるセレブ御用達のヒストリカルホテルです。

 日本ではカジノを中心とした統合型リゾートが2030年をめどにスタートするもよう。今は、新しいリゾートスタイルが始まる、いわば夜明け前。そう思うと、ラ・ボールが歩んできた歴史とどうも重なる気がしてくるのです。


パリから3時間のリゾート地、ラ・ボール。パリジャンにとっての夏の優雅な逃避先。

ラ・ボール

●アクセス パリのモンパルナス駅から電車で約3時間。またはナントから電車で約1時間。
●おすすめステイ先 ホテル・バリエール・エルミタージュ・ラ・ボール
https://www.hotelsbarriere.com/en/la-baule/l-hermitage/

取材協力
ナント観光局 https://www.levoyageanantes.fr/
ラ・ボール/ゲランド半島観光局 https://en.labaule-guerande.com
フランス観光開発機構 https://www.france.fr/ja/
エールフランス航空 https://wwws.airfrance.co.jp/


古関千恵子(こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●Instagram https://www.instagram.com/chieko_koseki/

文・撮影=古関千恵子

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