新米が出回り、一年で一番、“白いごはん”がおいしい季節になりました。フードライターの白央篤司さんと料理研究家のしらいのりこさんが、365日毎日交代で綴ったCREA WEBの人気連載「のっけて、食べる」より、ふっくら艶やかで、みずみずしい味わいの新米を存分に楽しめるレシピをまとめてご紹介します。
先日、静岡県の伊豆地方を訪ねました。『伊豆の踊子』なんて名作の舞台にもなったあのあたり、わさびの一大産地でもあります。わさび農家さんを訪ねて取材していたんですが、「これが一番うまいごはんの食べ方!」と教えてくださったものを、本日はご紹介しますね。
・おろしわさび:小さじ1
・おかか:大さじ1と1/2
・醤油:適量
・ごはん:1膳分
(1) わさびとおかかをよく混ぜ、ごはんにのっけて、醤油をかける。
シンプル・イズ・ベスト、という感じですが、わさびとおかかってありそうでなかった組み合わせ。わさびの辛さ×おかかの旨み×醤油の香り、たしかにごはんがバクバクいけてしまう!
なんとも刺激的かつ、素敵なごはんのお供でしたよ。
本わさびってご自宅で使う機会はなかなかないかもですが、やっぱり格別のおいしさ。食いしん坊のあなた、ぜひ試してみてほしい。チューブのおろしわさびが余っているときにもいいですよ。おかかをもうちょい多めにして、海苔巻きの具にするのもおすすめです。
最後に、伊豆の山清水のカットを。
この日はまだ暑さが残っていて、水の冷たさがなんとも気持ちよかったなあ。道脇にはセリやクレソンが自生していて、あたりには栗が実りだしていて、なんとも豊かなところでした。
きのうの白央さんの「イチジク feat. ローストビーフ」のっけ、ご覧になりました?
洒落てる、洒落すぎてる……。白央さん、さらなる高みにむかってます。
アンサーフードとして、私は日本が誇る「イクラ feat. 新米」を。秋になってスーパーに出回る生筋子。実山椒、梅などの「今しかない」食材シリーズでは最強です。今回は塩漬けにしました。できたてのイクラはさっそく、大根おろしに卵黄を混ぜる「黄身おろし」と一緒に新米にのっけました。
写真はイクラを恐る恐るのっけたため少なめですが、その後、もちろん追いイクラをしました。秋だけの贅沢使いです。
・黄身:1個
・大根おろし:大さじ3
・イクラの塩漬けまたは醬油漬け:好きなだけ
・薄口醤油:お好みで
・ごはん:適量
(1) 大根をおろし、軽く水気を絞る。黄身を混ぜる。イクラを好きなだけのっける。お好みで薄口醤油をかける。
黄身おろしは和え衣としても使えます。お浸しに和えたり、焼き魚に添えたり。すき焼きにつけていただいても。余った白身はかきたま汁などに。ちなみに白身は冷凍もできます。
豚バラ肉と大根の煮物が大好きで、冬になると必ず作っているのですが、大根に味がしみるまで時間がかかるんですよね。そこで、大根を千切りにしてきんぴらのように炒めたところ、あっという間にできて、そしてごはんがすすむすすむ。
見た目が非常に地味なので、他のおかずがあるとこの甘辛煮は素通りされがちなんですが、一口頂くと心(胃袋)を鷲づかみにされます。だまされたと思ってぜひ作ってみて。
・豚バラ薄切り肉:2〜3枚(75g)
・大根:4cm(200g)
・生姜千切り:1片
・赤唐辛子輪切り:小さじ1/2
・ごはん:適量
A
・醤油:大さじ1と1/2
・みりん、酒:各大さじ1
・砂糖:小さじ2
(1) 豚肉は2センチ幅に切る。大根は5ミリ幅の千切りにする。
(2) フライパンに豚肉を入れて強めの中火で熱し、箸で崩しながら1分ほど炒める。豚肉から脂が出てきたら、生姜、大根を入れる。Aを入れ、大根がしんなりするまで炒める。ごはんにのせて食べる。
お肉は豚バラ肉一択です。豚バラの脂がおいしさの秘密なので、他の部位の代用は禁止です。すみません、時には厳しく参りたいと思います。
熱々の白ごはんに豆腐をのっけて、お醤油かけて混ぜて食べる。ただそれだけなのに、なぜこんなにうまいんだろう……と、小さい頃からよく思ってました。
お行儀悪いと言われるかもですね。すみません。でも、でも、好きなんです! たまにやりたくなるんだなあ。冷や奴でもちろんいいけど、たまには温奴にしてやると、また違うおいしさですよ。
・豆腐(絹ごし、木綿、お好きなほうで):1/2丁
・醤油:適量
・ごはん:適量
・青ネギ、白ごま:お好みで
(1) 豆腐を耐熱容器に入れて、レンジに600Wで1分半かける。
(2) 豆腐の粗熱がとれたら、食べやすい大きさに刻む(そのままでもよい)。
(3) ごはんにのせて、醤油や青ネギ、白ごまなどをかける。
かけるお醤油ですが、「だし醤油」もいいですね。醤油とかつおぶし、だし昆布を清潔な瓶などの容器に入れて1日ぐらいおけば、即席だし醤油のできあがり。
冷蔵庫で保存して、早めに使い切ってください。豆腐やかまぼこ、蒸し野菜なんかにかけるとおいしいですよ。
とっても相性がいいんですよ、このふたつ。魚卵と大豆の組み合わせ。青森の津軽地方では人気の取り合わせと、地元の方に教えていただきました。やってみたら、「なんで今までやらなかった……!」というおいしさ。ごはんが進むこと、うけあいです。
・すじこ:適量
・納豆:1パック
・ごはん:適量
(1)ごはんを盛り、かき混ぜておいた納豆をのっけて、すじこを好きな量のせる。
すじこはサケ科の魚の卵を塩漬け、または醤油漬けにしたもの。北海道や東北、北陸では定番のごはんのお供にして、晩酌のアテ。おにぎりの中身としても大人気ですね。コンビニが普及した今、全国でもおなじみかな。
さて、のりこさんお誘いありがとうー! ジュンイチさん(のりこ’s 夫)と一緒にまたあなたのところの近所の立ち飲み酒屋に行きたいよ。のっけもん会議もやりましょう。
鮭の焼漬(やきづけ)は私の故郷、新潟の郷土料理。
私の実家の魚屋の人気商品でもあります。焼漬だけでもごはんに合うのですが、さらにイクラをのっけて、もみのりをかけると、甘辛と塩味、海苔の旨みで、もう、ごはん、エンドレスです。
はぁぁ〜、このイクラののった焼漬の姿の美しいこと……。
「いいよ〜、焼漬、イクラちゃん、最高だよ!」とファッションカメラマンのように声をかけながら(あくまでイメージです)、たくさん撮影しました。載せられる写真が1枚で非常に残念。
・生鮭:2切
【つけだれ】
・醤油:大さじ4
・酒、みりん、中ざら糖:各大さじ2
・イクラ:好きなだけ
・もみのり:好きなだけ
・ごはん:気が済むまで
(1) 鍋に酒、みりんを入れて中火で熱し、アルコール分を飛ばし、中ざら糖と醤油を加えて混ぜ、中ざら糖がとけたら火をとめ、そのまま冷ます。
(2) 鮭は食べやすいサイズに切り分け、グリルで焼く。熱いうちに(1)になじませ、1時間〜半日漬ける。
(3) ごはんに(2)をのせ、イクラ、もみのりを好きなだけのせる。
鮭はサーモン、銀鮭など脂が多いもので作ってください。中ざら糖は砂糖で代用可ですが、中ざら糖で作った方が圧倒的においしくできます。焼漬は冷蔵庫で1週間くらいもちます。お弁当のおかずにもどうぞ。
おいしいもののっけ隊(隊員2名)
白央篤司(はくおう あつし)
「暮らしと食」がテーマのフードライター。日本各地のローカルフードに詳しい。著書に『自炊力』(光文社新書)など。オレンジページやメトロミニッツなどでコラム連載中。
https://www.instagram.com/hakuo416/
しらいのりこ
お米料理研究家。米農家出身の夫、シライジュンイチと共にごはん好きの炊飯系フードユニット「ごはん同盟」として、美味しいご飯の炊き方やお米の料理、ごはんに合うおかずなどのレシピ考案を行う。
https://linktr.ee/shirainoriko
文・撮影=白央篤司、しらいのりこ
イラスト=二村大輔