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休業を経て復活した名宿「旅館万亭」へ。数寄屋造りの名建築と古湯に浸る

  • 2024年11月3日
  • CREA WEB

 CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。当時は「女性がひとりで温泉なんて!」と驚きを持って受け止められたこのテーマも、いつしか珍しくない光景となりました。

 好評発売中の「CREA」2024年秋号では、コロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集しています。


磨きぬかれた復活の名宿へ

●旅館万亭[和歌山/白浜温泉]


大正の香りが色濃く残る和洋折衷様式の食堂。白浜の海を一望しながら地元の食材を味わえる。

 万葉集に「牟婁温湯(むろのゆ)」や「紀温湯(きのゆ)」の名前で登場し、日本三古湯の一つとして知られる、白浜温泉。関西屈指の人気ビーチである白良浜を囲むように多くの宿が立ち並ぶこの地で、ひときわ存在感を放っているのが、「旅館万亭」だ。


ビリヤード室。創業当時から使われている調度品が並ぶレトロな雰囲気に、胸が高鳴る。

 大正時代に建てられた数寄屋造りのこの宿は、京都・祇園の老舗茶屋「一力茶屋」の別荘を数寄屋建築の巨匠である平田雅哉が改築し、開業したという物語を持つ。

 老朽化により長らく休業していたが、再開を望む地元の人たちの熱い声に応え、満を持して2023年夏に再オープンした。


館内には、先代館主が集めた骨董品や絵画作品が並ぶ。それらを鑑賞する時間が滞在をより豊かにする。

 巨匠の美意識が息づく、粋で懐かしい空間はそのままに、より快適に過ごせるようにと客室などをアップデート。時を重ねてもなお美しい床やガラス、そして調度品からは日々の細やかな手入れと愛が感じられ、心が温かくなってくる。

日本ならではの美を見つける

 また、館内におおらかに配されている骨董品と、格調高い建築の相性の良さを愛でるのも楽しいひとときだ。


離れの客室「浜木綿」に差し込む美しい光。

 窓の外に広がる青い海を眺めながら部屋でのんびりと過ごせば、谷崎潤一郎が著書『陰翳礼讃』で論じた、障子から差し込む間接的なやさしい光や、床の間の暗がりといったような、日本ならではの美を見つけることもできるだろう。


白浜温泉の泉質は4種類あり、万亭は硫黄泉と塩化物泉の複合泉のかけ流し。

地元で採れた旬の食材をふんだんに使ったフレンチ朝食を重厚感のある食堂で。

 名建築、塩化物泉と硫黄泉が複合されたかけ流しの湯、見飽きることのない海、そして土地の恵みを味わえる食事。すべてを兼ね備えた空間にひとり、浸ろう。

旅館万亭

所在地 和歌山県西牟婁郡白浜町920-16
電話番号 0739-43-5005
ひとり料金 1泊2食付き22,950円〜
ひとり対応 通年可
客室数 12室
食事 夕 食事処/朝 食事処
アクセス 熊野白浜リゾート空港よりタクシーで約10分、JR白浜駅よりバスで約15分


 「めぐる旅」と「こもる旅」をテーマに47都道府県のひとりにいい温泉宿68軒、旅の目的地になるサウナと蒸し湯10軒など、最旬の温泉スポットを特集した「楽しいひとり温泉。」は、「CREA」2024年秋号でお読みいただけます。

文=高田真莉絵
写真=岡本佳樹

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