この秋、発表された「CREA夜ふかしマンガ大賞2024」。選考委員を務めてくれたのは、小説家、お笑い芸人、ミュージシャン、マンガ家、テレビプロデューサー、ベテラン書店員など、各界を代表するマンガ好きの31名。
CREA2024年秋号では紹介しきれなかった、選考委員の皆さんのほとばしるマンガ愛を大公開!
「夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品」「人生で思わず夜ふかしして読んだ作品」「マンガを読むときのマイルール」など、マンガ好き必読のアンケートです。
変わり者で「普通」ができない転校生の宇野。その姿に惹かれ共通点を見出したヤンキーの小林は自分も変わろうと努力を始める。生きづらさを丁寧に描いた心温まる友情物語。
「普通って言葉はときにとっても暴力的で。その概念としての普通を前に、まるで宇宙でひとり漂っているような心もとなさを感じたことがある人には、きっととても大切な作品になるはず。言葉一つ、表現一つとってもとても丁寧で繊細で、高校生たちが他者との出合いを通じて自身を見つめ直すその行程がしみじみと染みました」(宇垣美里さん・以下同)
「ほんとそれな、と声がでちゃうくらい。その痛快さたるや。一方で『じゃあ、やってみるか!』と料理に挑戦し、その中でどんどん弱音を吐けるようになったり、素直にアップデートできるようになったりと、変化していく主人公の姿に胸打たれた。食べるって生きることだよな、自分が食べたいものを自分で作るって究極のセルフケアのひとつなのかも、としみじみ」
「なんて美しい作品なのでしょう。それぞれの人生のままならなさと、それでも確かに存在した幸せな瞬間。生きていくということをしみじみと嚙みしめるような作品で、全部読み切ったあとにもう一度また最初に戻って読み返すと、また違った味わいがぐっとくるので、何度でも楽しめる作品です」
ぬるま湯のような日常から抜け出したい女子中学生、藍田苺。将棋好きの元校長に底しれぬ才能を見出された苺は、将棋の大会に参加することに。初心者ながらも天才の閃きと闘志を見せる彼女が、将棋界に闘いを挑む物語。
「友人からおすすめされて読みだしたらもう止まらず、気づいたら全巻(17巻まで)読み切ってしまった。寝る前にちょっと読もうかな、と思っただけなのに、普通に夜が明けていてびっくり。傍若無人な苺の成長スピードが凄まじすぎて、途中で止めることなどできなかった……。なにより藤井聡太竜王・名人のいる世界に生きているのでさして夢物語のようにも感じないところがまたたまらない」
「日付が変わった瞬間に電子書籍のアプリを徘徊して新刊をチェックしまくります」
とあるマンガ編集プロダクションを舞台に「自分が自分であるために」闘う女性たちの夢とリアルを描いたオムニバスストーリー。
「理不尽に折られ、損なわれ、傷つけられてきた人たちがマンガを通して繋がり、連帯し、生き延びようともがく姿が力強くてたまらなかった。セリフ一つひとつが響いて思い出しただけで泣いてしまいそう。でも、生きることも世界も人間も諦めたくないから、私も頑張りたいって思えました」
デザイン事務所で働く原田織ヱは装丁デザイナー。食べることが大好きな彼女は、なかでも特にスープが大好きで、自宅で、レストランで、職場の給湯室で季節の「スープ」をおいしく食べる。思わず食べたくなるスープの物語。
「出てくる四季折々の食材を使ったスープのなんとおいしそうなことか! たくさんレシピを真似して作ってみたし、立ち止まりたくなるときだって、とりあえずごはん食べよう、食べられる人は強い! と元気が出てくる。読むとほっこりと幸せになる作品です」
愛犬との暮らしの記憶と介護生活、お別れの日までを描くコミックエッセイ。
「犬への愛がそのまま具現化したような作品。つづ井さんの瑞々しい感性によって掬い上げられた愛犬Aと過ごした日々の温かさと愛おしさ、そして少しの切なさ。犬と暮らす日々のあるあるだらけで愛犬家としてはそうそう、と頷きながら笑って癒された。ああ、犬と暮らす毎日のかけがえのなさといったら。読んだあとは思わず犬のいる場所に走っていって、迷惑がられようとむんずと頬ずりして抱きしめてしまう」
フリーアナウンサー・俳優
宇垣美里(うがき・みさと)さん
2014年にTBSに入社。19年に退社し、現在はドラマや舞台出演、執筆業など多方面で活躍。「週刊文春」で「宇垣総裁のマンガ党宣言!」を連載中。
眠りにつく前のひとときに、日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる力のあるマンガを称える「CREA夜ふかしマンガ大賞」。昨年からはじまった一般読者による投票を一次選考として、200作品以上が候補にあがるなか、2024年のナンバーワンが決定しました。
文=大嶋律子(Giraffe)