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“謎めく世界”【西奈良】へTrip アートスポットが点在する魅惑の地

  • 2021年4月12日
  • CREA WEB

作家の森見登美彦さん。

 住宅街に現れる森、神秘的な寺などが点在する「西奈良エリア」。

 この地とゆかりが深い作家・森見登美彦さんに魅力を伺い“森見ファンタジー”を育んだ、ひと味違った奈良の旅へと誘います。


桜が咲き誇るころの風景は聖なる“死後の世界”のよう


日本最古のため池と言われている蛙股池。橋の奥に見えるのが、緑に覆われた大和文華館。

『夜は短し歩けよ乙女』をはじめ、京都を舞台にした作品が多い森見登美彦さんだが、出身は奈良。

 近鉄奈良駅から大阪方面に向かう近鉄沿線、奈良北西部に、小学4年生から高校時代まで住んでいた。数年前からは執筆の拠点を置いている。

「ここは森や野原だった丘陵地帯を切り拓いた新興住宅街です。新しさのなかに古いものが残っているところが好きなんですよ。

『ペンギン・ハイウェイ』には、子どものころに過ごしたこの街の風景がちりばめられています」


ジョギングや散歩をする地元の人たちが行き交う、蛙股池に架かる、あやめ新橋。

 お気に入りの散策ルートは大和文華館と中野美術館があるアートエリア。

「大和文華館に竹の中庭があって、そこに光が差し込む景色が神秘的です。敷地内の庭もきれいで、紫陽花や梅などを見に行ったりしていますね。

 目の前には日本書紀に記されていた蛙股(かえるまた)池が広がっており、とくに桜が満開の時期がいい。

 池に架かった長い橋から大和文華館と隣の中野美術館、近くにある菖蒲(あやめ)池神社をぐるりと見渡すと聖なる“死後の世界”のように感じます」

 丘陵の地形を生かし、高台には眺めのいいカフェもある。

「喫茶店の梨風庵は大渕池と松伯美術館が望める、美しいお店です。かなりおしゃれな雰囲気で、僕にはあんまり合ってない気がしますけど(笑)」

 そんな閑静な住宅街に突如としてペンギンが現れる物語が『ペンギン・ハイウェイ』。旅の途中、ふと目にした小道をペンギンがよちよち歩く姿を想像し、しばし空想の世界へ。

郊外の街である。丘がなだらかに続いて、小さな家がたくさんある。駅から遠ざかるにつれて街は新しくなり、レゴブロックで作ったようなかわいくて明るい色の家が多くなる。
――『ペンギン・ハイウェイ』より


日本や中国などの名作をテーマに合わせて展示

◆大和文華館


作品を自然な環境で見てほしいと作られた竹の坪庭。

 門からスロープを進むと、桃山時代の建築、なまこ壁を模した芸術的な建物が目に入る。



左:特別企画展〈中国青花と染付磁器―京都の鹿背山焼―〉で展示されている中川利三郎作の《染付花鳥山水文水指》。
右:青い文様が美しい《祥瑞写染付結文形根付》。

 こちらは日本や東洋のコレクション約2,000点を所蔵する美術館。年8回のペースで展覧会が行われ、2021年4月4日(日)までは、中国の影響を受けた京都の鹿背山焼の作品を展示していた。

「ほどよいサイズの美術館なので気軽に行きやすく、展示作品が定期的に変わるので行くたびに楽しめます」


庭には野趣溢れる木々、しだれ桜などの花が咲き誇る。

大和文華館

所在地 奈良市学園南1-11-6
電話番号 0742-45-0544
開館時間 10:00〜17:00(入館は16:00まで)
休館日 月曜(祝日の場合は翌平日休み)※展覧会開催時のみ開館
料金 一般 平常展 630円、特別展 950円
https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/

明治から昭和にかけての日本の近代美術に出合える

◆中野美術館


洋画の展示室には常時25点が飾られている。

 林業に携わっていた中野皖司氏が、約25年間にわたって集めた約200点の洋画や日本画に接する感動を、多くの人たちと分かち合いたいと設立した美術館。


窓辺にはいくつか椅子が置かれ、水鳥が池で戯れる姿なども楽しめる。

 蛙股池に面した丘の地形を生かした、2フロア吹き抜けの開放的な館内。

「向かいにある池と大和文華館の庭の景色にほっとさせられる。作品としては岸田劉生をはじめとした有名な日本画家のものが見られます」

中野美術館

所在地 奈良市あやめ池南9-946-2
電話番号 0742-48-1167
開館時間 10:00〜16:00(入館は15:45まで)
休館日 月曜(祝日の場合は翌日休み)※臨時休館あり
料金 一般 600円
http://www.nakano-museum.jp/

西奈良を代表する稜線と池の眺めが広がる

◆梨風庵


晴れた日は生駒山まで眺めることができる。

 静かな住宅地にある喫茶店「梨風庵」は大渕池が見渡せる絶好のロケーション。この眺めをひとり占めするのはもったいないと、自宅だった建物を改装し1992年にオープン。

「アニメ映画化した『ペンギン・ハイウェイ』に出てくる店」と、森見さん。


手前から、コーヒーとよく合う“洋梨のシブースト” 400円、ペルーとコロンビア産の有機豆を使った“梨風庵ブレンド” 500円。

 有機豆のブレンドや自家製サンドイッチなどを味わいながら、本を読んだり、景色を楽しんだり、豊かな時間を過ごせる。

梨風庵

所在地 奈良市登美ヶ丘2-1-40
電話番号 0742-48-1859
営業時間 12:00〜17:00
定休日 月・火曜
http://www1.kcn.ne.jp/~sf-1/

森見登美彦(もりみと みひこ)

1979年、奈良県生まれ。2003年、京都大学農学部卒。同大学院在学中に『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。’07年に『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞する。著書は『ペンギン・ハイウェイ』『夜行』『熱帯』ほか多数。

※価格はすべて税込です。

撮影=佐藤 亘

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