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いま大注目の女優・伊藤沙莉が話す! ブレイクまでのキャリア

  • 2020年10月30日
  • CREA WEB

 劇団「□字ック」主宰の山田佳奈が、2013年初演の同名舞台を自らのメガホンで映画化した『タイトル、拒絶』。その主演を務める伊藤沙莉が、自身の状況の変化やキャリアについて語る。

●世間からの認知の変化


――2017年にNHK朝ドラ「ひよっこ」が放送され、主演映画『獣道』が公開。このあたりから、伊藤さんの周囲の状況が変わったと思いますが、声をかけられることも多くなりましたか?

 それまでは学園ドラマに多く出ていたこともあり、「ひよっこ」で人生の先輩方から声をかけていただけることは有り難かったです。ただ、そのときは伊藤沙莉というよりは、“米子”役を演じていた子という認知のされ方でした。「伊藤さんのドラマ観ました!」と直接言われるような世間の反応でいうと、「獣になれない私たち」(18年)や「これは経費で落ちません!」(19年)だと思います。

――今年に入っても、「いいね!光源氏くん」や、主人公の声優を務めた「映像研には手を出すな!」と、その勢いは止まるところを知りません。

「いいね!光源氏くん」では「けもなれ」「経費」にいそうなOLキャラでしたが、「映像研」のお仕事をやらせていただいたことで、今までとは違った方が声をかけてくださることが多くなった気がします。現場のスタッフさんやキャストの方から「見たよ!」と言われるのは、断然「映像研」と「全裸監督」(19年)が多いですね(笑)。

●環境が変わったという感覚はない

――ぶっちゃけ、ブレイクしたという実感や周囲の変化は?

 どうなんでしょう? この数年で、立て続けにお仕事をいただいていることは、とても有り難く、幸せですし、いただけるお仕事や周りの対応で、なんとなく自分の中で「ステップがひとつ上がったかも?」と思うことはあります。でも、基本的には、何か環境が変わったという感覚がないんです。お芝居をすることで、新しい作品がひとつできて、宣伝などをやって、次の作品に行く。そういう自分がやってることの流れは、昔から変わっていませんから。

――ちなみに、15年放送のドラマ「トランジットガールズ」で主演を務めた後に、また小さい役を演じるような状況に焦りはありましたか?

 もともと、私は真ん中の人ではないので、「トランジットガールズ」の後に1シーンしか出番がない役が来ても、それが自分のホームというか、自分がそれまでやってきたことなので、安心しますし、だからこそ、自分を見失うことがないと思っていたぐらいです。なので、「これでブレイクしなきゃ!」という焦りのようなものはなく、意識的にはフラットでしたね。

●「GTO」での飯塚健監督との出会い


――ちなみに、キャリアの中で転機となった作品や出来事を挙げるとすると?

 まず、役者としての考え方とか在り方、役や脚本との向き合い方が大きく変わったのは、ドラマ「GTO」(14年)での飯塚健監督との出会いです。今はだいぶ丸くなられたのですが(笑)、そのときはガンガンに尖っていて、現場で怒鳴っていたのは日常茶飯事。いちばん愛があって、いちばん厳しい。最近はさすがにないですが、ちょっと前までは飯塚組に入る前日は必ずお腹を壊すぐらい、緊張感がエグいんですよ! テンポのいい会話の掛け合いを長回しで撮ることが多かったので、リズムがひとつ崩れるだけでダメなんです。

――「GTO」で伊藤さんが演じた加奈子は、同級生の智美と「KT」コンビと呼ばれる、いわゆるイジメっ子キャラでした。

 2人のセリフの掛け合いに関しては、監督からたくさん注意されましたし、「例えば、このセリフをこんな状況、こんなリズムで言ってみると?」と突然振ってくるんです。それに対して、反射的に答えを出せる訓練をさせていただきました。私は子役時代のクセで、言われたことだけをやってきたので、朝イチで飯塚監督に呼び出され、「このシーン、どんなプランを組んできた?」と言われたのも衝撃でした。

 でも、そうやって鍛えられていくことは当然で、そういう緊張感は、どこの組も持っていた方がいいと思うんです。実際、私は「GTO」の現場で鍛えられたことで、俳優部として作品作りの一員でいることを実感し、お芝居をすることが倍楽しくなりましたから。

●内田英治監督による長編初主演映画


――その後も、ドラマ「REPLAY & DESTROY」(15年)などの飯塚組に参加し、オムニバス『全員、片想い』の一編「MY NICKNAME is BUTATCHI」(16年)では、映画初主演を務めます。

「GTO」の後、『ブルーハーツが聴こえる』(公開は17年)という作品を撮ることになり、飯塚監督とお酒を飲む機会があったんです。そのときに「お前は焦らず、3年待て。そのときに状況が変わるから! それまでは俺が面倒を見て、のし上がらせる」と言ってくださったんです。それで連続でお仕事させていただいて、その3年後が「ひよっこ」でした。「この人、占い師⁉」と思いましたよ(笑)。最近、「伊藤さん、ずっとブレイクすると思ってました!」と言われることが多くて、とても嬉しいですが、その言葉をいちばん言っていい人が飯塚監督だと思っています。その後、作品との向き合い方やアプローチの仕方が変わったのが、内田英治監督の『獣道』です。

――長編初主演映画となった『獣道』を撮った内田監督はどのような人ですか?

 表情もあまり変わらないぐらい本当に読めない方で、ちょっと痩せると、「丸いままでいてくれ」と言われたり、何を考えているか分からないんです(笑)。オムニバス映画『家族ごっこ』(15年)のワークショップ・オーディションを経て出演させていただいたのですが、作品が終わったときに、現場での監督の感じから「内田組には一生呼ばれないな……」と思ったんです。だから、『獣道』で、主演として真ん中に立たせていただけたことに驚きました。

 監督から、よく言われるのが「お前の芝居は100%じゃないし、現場を離れたらつまらない人間だが、編集で繋げたときに「こいつしかいない」と思わせる何かがある」と。これに関しては、自分ではどうしようもないことですから! それで「次は30年後だな」と言われましたが、ちょこちょこお仕事をさせていただいて、多くを語らないなか、深い愛を感じます(笑)。

●自分がいちばん自分を分かってない


――自分の居場所を探し、ヤンキーや性風俗の世界に身を委ねていく愛衣を演じた『獣道』では、いわゆる“脱ぎ”のシーンがありました。そこに対する不安や抵抗はあったのでしょうか?

 そのことに関しては、当時からは抵抗ありませんでしたが、映画の取り上げられ方や残り方が、すべてそこに集中してしまうことに不安がありました。愛衣という役を演じるだけでなく、ほかのお仕事に関しても常に体当たりなのですが、脱ぐことに関しては、別に体当たりではないので、そこばかりクローズアップされるのは、ちょっと違うのかなって。案の定、後々エゴサーチしたときに、AVサイトで、私がランキング1位になっていたんです。みなさんの娯楽になっていることは光栄ですが、やっぱり「どういうこと⁉」と思いました(笑)。ただ、作品を観てみたいと思うきっかけは、どんなことでもいいんです。今では、伊藤沙莉の胸目的で『獣道』を観ることで、この映画のメッセージをガツンと喰らってほしいという気持ちです。

――なぜ今、多くのクリエイターが女優・伊藤沙莉を起用したいか、自己分析できますか?

 何でだろう? 毎回キャスティングされるたびに、「なぜですか?」と思っているぐらいですし、自分がいちばん自分のことを分かっていないんですよね。楽しいから続けてます(笑)。あえて、セールスポイントを挙げるなら、近くにいそうな存在だから。子役時代から、イジメっ子や三の線のような分かりやすいキャラを演じてきたと思いますが、最近になって、それが会社にいそうだったり、街にいそうな感じになってきた。そういう普通の人が持っている、どこか素直じゃなかったり、不器用だったりするところが求められているような気もします。自分で言うのもなんですが、ひょっとしたら染め甲斐があるのかもしれませんね(笑)。

〜次回は、最新主演映画『タイトル、拒絶』についても語っていただきます〜


『タイトル、拒絶』

雑居ビルにある事務所で、デリヘル嬢の世話係であるカノウ(伊藤沙莉)は、さまざま文句を突きつける彼女たちの対応に右往左往。しかも、人気No.1のマヒル(恒松祐里)が店に戻ると、部屋の空気は一変していた。ある日、モデルのような体型の若い女が入店したことで、店内の人間関係が崩れ始めていく。
http://lifeuntitled.info/
2020年11月13日(金)より、新宿シネマカリテ、シネクイント他 全国順次ロードショー
©DirectorsBox


伊藤沙莉(いとう・さいり)

1994年5月4日生まれ。千葉県出身。03年、ドラマ「14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜」でデビューし、「女王の教室」「GTO」などに出演。その後も、映画・ドラマ・CMなどで活躍。20年、「第57回ギャラクシー賞」 にてテレビ部門個人賞を受賞した。『蒲田前奏曲』は現在公開中。『十二単衣を着た悪魔』(11月8日公開)、『ホテルローヤル』(11月13日)、声優を務めたアニメ映画『えんとつ町のプペル』(12月25日公開)が控えている。

文=くれい響
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=AIKO
スタイリスト=吉田あかね

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