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波もなく穏やかな鹿児島の“瀬戸内” ストーリーに満ちた加計呂麻島を歩く

  • 2020年8月1日
  • CREA WEB

#201 Kakeroma Jima
加計呂麻島(鹿児島県)


東部の徳浜。映画『男はつらいよ 寅次郎紅の花』のロケ地です。

 奄美大島の南の沖に浮かぶ、周囲約150キロの大きな加計呂麻島。

 加計呂麻島には瀬相(せそう)と生間(いけんま)、2つの港があり、滞在する場所により、目指す港が異なります。

 また、海上タクシーとフェリーでは奄美大島の古仁屋港での乗り場や乗り方も異なります。そのあたりがよくわからず、すったもんだ。


奄美大島から生間へ向かう海上タクシーから見た加計呂麻島。赤茶色の断崖が印象的。

瀬相と生間の間を結ぶバス。

 どうにか上陸して、港近くのレンタカー屋さんへ。そこでまず言われた注意点が……。

「道路でハブを見かけたら、轢いちゃってください。または、通り過ぎるまで待つか。いちばんいけないのは、様子を見に行くこと。死んだふりしておいて、襲ってきますから。あと、イノシシに気を付けて」

 いきなり度肝を抜く注意事項。それくらい自然が優勢な島です。


「ホライゾンクラブ」オーナーの開発さん。

 今回、選んだ宿は諸数にある「ホライゾンクラブ」。ダイビングがきっかけで20年前に移住した、元子ども服のデザイナーの開発さんとパートナーの大室さんが、試行錯誤しながら手造りしたプチコテージです。

 立派な流木を柱に使い、潜水ヘルメットや船室の窓などの装飾に、海のテイストを感じます。

 そんな開発さんにおすすめの場所を聞き、島内を気ままにドライブすることに。

島の風景はどことなく あの地方に似ているような……


生間に近い海水浴場&ダイビングスポット、穏やかなスリ浜。

アダンなど熱帯の木々が元気いっぱい。

 西側を目指し、最初にスリ浜へ。アダンの木々で縁取られた白砂のロングビーチで、対岸に奄美大島のジグザグとした海岸線と、幾重にも折り重なった山並みを望みます。

 波もなく穏やかで、スノーケリングに向いている人気のビーチです。


島の暮らしはのんびりペース。

武名のガジュマルの木。沖縄のキジムナーのような妖怪、ケンムンが隠れていそう。©寺本薫子

 島いちばんの賑やかなエリア(商店と土産物屋、食堂がある程度)の瀬相でお弁当を仕入れ、ガジュマルの大木で知られる武名(たけな)の桟橋で遅めの昼ごはん。

 湾の向こうには山並み、一角には生け簀も見えます。


山が折り重なる風景が、どことなく瀬戸内に似ているような?

 加計呂麻島の風景はどこかに似ているなぁ……あぁそうだ。瀬戸内や伊勢志摩の賢島のリアス式海岸!

 温暖な気候やアダンなどの植物は亜熱帯ながらも、島の折り重なり具合がどことなく似ています。

島の東西に残る源氏と平家の歴史


実久のサンゴを積んだ石垣。

 さらに西へ進んで、実久(さねく)へ。集落に入ると、サンゴを積んだ石垣が、これまで沖縄などで見たものよりも平たいのに気づきます。

 聞くところによると、テーブルサンゴの欠片を積んでいるのだそうです。

 そして浅瀬が広がる、実久の浜へ。あいにく天気が悪く、“実久ブルー”と呼ばれる、青い海は見られませんでしたが、それでも太陽が出たら、さぞや美しいに違いないと思わせるビーチでした。


源氏の流れを汲む実久三次郎を祀る神社。

 実久の集落の入口にあるのが「実久三次郎神社」。

 保元の乱で敗れ、伊豆大島に流された鎮西八郎為朝(源 為朝)が、琉球に渡る途中にここに寄り、島の娘との間にもうけた子供に三次郎と名付けたという言い伝えがあります。


諸鈍の集落にほど近い徳浜。途中、アカショウビンを見かけました。

 一方、島の東の諸鈍(しょどん)には、源平の戦いに敗れた平 資盛が落ち延びてこの地に城を構え、島の人々に伝えたという国指定重要無形民俗文化財の民俗芸能「諸鈍シバヤ」が残されています。

 旧暦の9月9日には、島の西では源氏の「実久三次郎神社大祭」、東では平家の「諸鈍シバヤ」、島の東西で源氏と平家、それぞれが祝う1日になっているのも、何かの因縁を感じます。

「ホライズンハウス」の紹介で、ガイドの寺本薫子さんからもお話を聞く機会を得ました。最初の質問は、島名の由来。

「みなさん疑問に思われるようです。図書館に『瀬戸内町の地名の由来』というようなプリントがあって、そこに加計呂麻島は奄美大島の南端が欠けた島(欠けの島)、影の島という意味があるのではないか、と書かれていた記憶があります」とのこと。


「背後に山が迫り、入江ごとに集落があり、それぞれに独自の宇宙観を感じる」と寺本さん。

 地図を見ると、大島海峡を挟んでパズルが合致するような海岸線の奄美大島と加計呂麻島。“奄美大島から欠けた島”に一票を投じたくなります。

 そして、加計呂麻島では3つの星の風景が堪能できるというお話。

 光害の影響を受けない加計呂麻島ではみごとな天の川が夜空に流れ、波打ち際には夜光虫がきらきらと青白い光を放ち、水中ではアマミホシゾラフグがミステリーサークルのような産卵床を形成します。


島の東端にある安脚場(あんきゃば)の戦跡公園。

 224ページにわたる立派なガイドブック「まんでぃ」(島の言葉で“いっぱい!”という意味)が1冊できてしまうほど、ストーリーに満ちた加計呂麻島。次回は、寺本さんのガイドで歩いて回りたいものです。

加計呂麻島

●アクセス 奄美大島の空港から古仁屋港まで車で約2時間。加計呂麻島には生間と瀬相の2つの港があり、どちらも海上タクシーなら約15〜20分、フェリーは20〜25分。

●おすすめステイ先 ホライゾンクラブ
http://horizonclub-kakeroma.mystrikingly.com/

取材協力/kakeroma.com


古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

文・撮影=古関千恵子

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