
長野県にある名湯・野沢温泉。冬は雪に包まれているこの温泉地には、地元の人が昔から大切にしている13か所の外湯があります。素朴な雰囲気にホッとする外湯は、観光客も利用することが可能です。また、集印帳を片手に村内の外湯や名所をめぐる「集印めぐり」も楽しめ、集印の数によって、オリジナルのタオルやてぬぐいももらえますよ。
温泉街をぶらりと歩いて見つけた外湯でゆっくりと温まり、冬の味覚の野沢菜漬けを味わい、冬ならではの野沢温泉を楽しみませんか。
長野県北部に位置する野沢温泉は、北陸新幹線飯山駅からバスで約25分の場所にある温泉地。奈良時代の開湯とも伝わり、昔から多くの人々が湯浴みに訪れている名湯です。100周年を迎えた「野沢温泉スキー場」がある野沢温泉は冬がオンシーズン。近年は、パウダースノーのスキー場で滑るために、海外からも多くの観光客が訪れています。
野沢温泉は小道が多く、歩いて散策するのにぴったりの温泉街。多国籍なお店が増えているなかで、親しみやすい温泉情緒を醸し出しているのが、温泉街に点在している13か所の外湯の存在です。
野沢温泉村で暮らす人たちにとって温泉は、自宅のお風呂のような身近なもの。村には「湯仲間」と呼ばれる制度があり、地域ごとに「湯仲間」が作られていて、住民が日々の管理や清掃を行ない、大切に使っています。この風情ある外湯を観光客でも利用できるのが、うれしいところです。
外湯文化が始まったのは江戸時代といわれています。温泉街の中心にあり、外湯のシンボル的存在の「大湯」は、飯山藩主の保養施設として使われていたもので、村民にも湯治を許可したことが始まりだそう。この天井が高くて美しい建物は「湯屋建築」と呼ばれています。江戸時代を彷彿させるような伝統的な湯屋建築の「大湯」に、まずは浸かってみましょう。
各外湯の入口には薬師三尊や十二神将が祀られ、温泉を見守っています。入口には賽銭箱が設けられているので、湯を観光客にも開放してくれている湯仲間にも感謝を込めて、お気持ちを入れてから利用しましょう。地域の人たちやほかの観光客に会ったときは、あいさつも忘れずに。
野沢温泉の特徴は源泉かけ流しの熱い湯で、源泉も30余りあるそう。大湯は源泉の温度が約66度。浴槽はあつ湯とぬる湯の2つがあります。大湯はぬる湯でもかなり熱いので、ゆっくり浸かって。水を入れるのはOKですが出しっぱなしにせず、水を入れる際には声をかけるなどマナーを守り、地域の人たちと湯を楽しみましょう。
熱めの湯が苦手な方におすすめなのが「熊の手洗湯(くまのてあらゆ)」。猟師に撃たれた熊が、ケガした手を池で癒やしていたのを見たことから発見されたといわれる湯で、火傷や切傷などに効くといわれています。
あつい湯とぬるい湯の浴槽があり、ぬるい湯は約42度のため、他の外湯に比べると入りやすく、人気の外湯です。あつ湯は麻釜の源泉も入っているため、熱めの湯になります。泉質は単純硫黄泉で無色透明ですが、グリーンがかった湯の色になるのは、緑に見える成分が多いのではと考えられているそう。
湯の花が特徴的なのは「真湯」。“お湯が濃い”といわれ、黒い湯の花が多く浮ぶ珍しい湯にファンも多いといいます。濁っていることが多いのも特徴のひとつ。撮影の日は青みがかった乳白色の湯色でしたが、緑色になっていたり、透明だったりすることもあるそう。
こぢんまりとしたタイル貼りの浴槽も、レトロな雰囲気ですてきです。花を飾っているのも、大切な癒やしの空間というのが伝わります。13の外湯はそれぞれ個性的な温泉で、管理する地域の人たちの愛情も感じられますよ。同じ気持ちで、大切にお湯に浸かりましょう。
外湯の源泉のひとつ「麻釜(おがま)」も野沢温泉の名所です。かつて、ここで麻を浸して皮をむいていたことからそう呼ばれています。温度は90度近くあり、毎分500ℓも湧出しているとか。
5つの用途別の釜があり、今も住民が野菜や卵を茹でたりすることから「村の台所」といわれています。村民以外は立ち入り禁止なので、外から見学しましょう。
「松葉の湯」「熊の手洗湯」「上寺湯」「十王堂の湯」の4か所の外湯には、温泉卵が作れる釜もあります。外湯によって時間が違いますが、松葉の湯は22分ほどで濃厚な温泉卵が作れますよ。土産物店で卵やネットが買えるので、試してみてはいかが。
4月から11月は高台にある「ミニ温泉広場 湯らり」も利用することができます。茹でる釜の横には冷やす水もあるので、作りやすいですよ。温泉街や北信五岳の山々を一望できる足湯もあるので、グリーンシーズンは訪れてみましょう。
野沢温泉は駐車場が少なく、大きな駐車場に車を停め、歩いて散策するのが基本の温泉街。せっかく歩くのなら、外湯や名所をめぐる「集印めぐり」をするのがおすすめです。
まずは、野沢温泉バス停(中央ターミナル)そばの野沢温泉観光案内所やおみやげ屋さんで「集印帳」を購入しましょう。外湯をはじめ、麻釜や野沢菜発祥のお寺、薬王山健命寺など、野沢温泉の27か所に集印台が設置されています。
集印台にはその場所にちなんだ絵が金属製の版に描かれています。その台の上に緑の紙と白い紙を2枚1組にして版の上に乗せ、緑の紙の上から棒でこすって絵を拓印しましょう。10か所以上集めれば、岡本太郎著「湯」文字入りの限定湯タオル、20か所以上で外湯の手ぬぐいがもらえます。記念にもなるのでスタンプラリー気分で集めてみては。