
古都京都ならではの風景が広がる花街・祇園にある「何必館・京都現代美術館(かひつかん・きょうとげんだいびじゅつかん)」。国内外の絵画、工芸、写真といった近代現代の幅広い作品を収蔵し、年に数回特別企画展を開催する私立美術館です。
現在は、2025年3月30日(日)まで、写真展『没後30年・ドアノーの愛したパリ ROBERT DOISNEAU展』を開催中。表情豊かな人々を映しだすノアール・白黒の世界を楽しみながら、展示空間にも注目をしたい美術館へ行ってみませんか。
四条花見小路の交差点から八坂神社方面へ歩いてすぐ、四条通りの北側にある「何必館・京都現代美術館」は、1981年に開館。美術館名の「何必」とは、簡単に言えば「それだけには限らない」という意味で、「学問でも、芸術でも、人は定説にしばられ自由を失ってしまう。その定説を[何ぞ必ずしも]と疑う、自由な精神を持ち続けたい」という願いから名づけられたといいます。
40年以上経った今も祇園の中心にありながら静寂な雰囲気があり、余計なものを削ぎ落した作品に集中できる空間が広がります。地下1階から3階までと5階にある展示空間は「そこに置かれた作品が、いきいきと躍動するものでなくてはならない」と、設計する段階から考えられたといいます。
どの企画展でも、フロアごとにカテゴリーを変えるなど、わかりやすい展示がされています。1階の展示室は、天井高4m以上を感じる開放的な空間。2階は和風で京都らしさを、3階はホワイトキューブと呼ばれる空間で、白壁にかかる作品がとても引き立ちます。
5階は、エレベーターを降りて目の前に広がる光庭が印象的です。右手に進むと、天井が高い小さな展示空間があり、ひとしきり企画展を楽しんだら、その後はソファに座り自然美を感じる庭を楽しみましょう。この庭は[一木二石]で、木は山紅葉、石は日本三大銘石のひとつとして知られている佐治石で、コレクターからも人気のある鑑賞石です。
5階に奥には茶室があります。この茶室にかかるお軸は、日本画家・村上華岳の『太子樹下禅那図』。美術館を創るきっかけとなった作品です。館長が21歳の時に出会い、この作品を鑑賞するための最上の場所を作りたいと構想し、美術館開館に至ったそうです。
企画展は、2か月から3か月ごとに変わります。現在は、写真展『没後30年・ドアノーの愛したパリ ROBERT DOISNEAU展』を開催中。「子供達」「恋人」「酒場」「街路」「芸術家」の5テーマで構成された、サイン入りオリジナルプリント約60点を展覧しています。
フランスの国民的写真家とも称されるロベール・ドアノー。パリの庶民の日常をとらえた写真が好評価を得た人気写真家は、1994年に享年82歳で亡くなり、今年没後30年になります。彼は、ルノー社のカメラマンなどを経て1939年からフリーとして活動。1949年から51年まで『ヴォーグ』誌の契約カメラマンとして活躍をし、1951年にはニューヨーク近代美術館開催の「5人のフランス人写真家」展に選ばれています。
■写真展『没後30年・ドアノーの愛したパリ ROBERT DOISNEAU展』
会期:2024年11月2日(土)~2025年3月30日(日)
休館日:月曜日(但し祝日は開館)、年末年始は休館
入場料:一般1500 円/学生 1300 円
※記念出版「ROBERT DOISNEAU写真集」3500円
もともと「何必館・京都現代美術館」は、日本画家の村上華岳、洋画家の山口薫、陶芸をはじめ美術工芸のあらゆる分野で活躍した作家の北大路魯山人の作品を柱とした美術館として開館しました。時代とともに変化を経て、いまはさまざまな展覧を開催していますが、地下には京都出身の北大路魯山人の作品室を常設。「自然美礼讃」を信条に、自然界の美しさを生涯をかけて追求していたといわれる魯山人のコレクションから選りすぐりの作品が展示されています。
その時々の企画展を楽しみ、最上階の5階上空から差し込む光と季節とともに移ろいゆく山紅葉の光庭を眺めるのがおすすめの「何必館・京都現代美術館」。何度となく京都を訪れる人々が好む場所でもあります。祇園という喧騒の中で、ゆっくりとした時間の流れと、静寂なひと時を過ごすことができる空間へ、足を運んでみませんか。