平安時代から風光明媚な地として知られた嵯峨野。とうとうと流れる大堰川の背景には黄、赤、オレンジと錦色のグラデーションに染まる嵐山。その風景にすっと溶け込む直線的なフォルムの渡月橋はアートのよう。この秋は、1000年以上も都人に愛されてきた自然美と合わせ、『源氏物語』ゆかりの地をめぐってみましょう。
染色作家・奥田祐斎さんの染色アートギャラリーでもある「嵐山 祐斎亭」へは、嵐電の嵐山駅から大堰川沿いの遊歩道を徒歩で約10分あまり。
秋景色を丸や四角の窓で切り取って見る「窓もみじ」の代表格として、近年知られるようになりました。自然の美と、人の手で作り上げられた美がひとつになり、新鮮な驚きを与えてくれます。
戸外に出ると、嵐山の野趣あふれる自然がすぐそこに。空を覆う紅葉、そこからこぼれ落ちる木漏れ日。祐斎亭は山の中腹に位置し、眼下には大堰川がゆったりと流れています。
秋の紅葉ピーク時(2024年は11月16日~12月1日)は完全予約制。訪れる前には、必ず公式ホームページから予約をしましょう。
嵐山 祐斎亭から「野宮神社」へは、竹林の道を通って徒歩で約15分。源氏物語の『賢木(さかき)の巻』にも描写されている、樹皮がついたままのクヌギを使った「黒木の鳥居」と、クロモジの木を束ねた「小柴垣」が参拝者を迎えてくれます。
光源氏が野宮を訪れたのは、かつての恋人である六条御息所に会うためでした。斎王に選ばれた娘に付き添って伊勢に向かう御息所との別れの場面が、嵯峨野の風景とともに美しく、そして切なく描かれています。
物語では悲しい恋の結末となりましたが、境内には縁結びをはじめとし、健康や知恵授けの神様が祀られています。源氏物語にちなんだ絵馬やお守りで、ぜひご利益をいただきましょう。
このあたりでランチをいただきましょう。野宮神社から徒歩で約15分。JR嵯峨嵐山駅からも近い「発酵食堂カモシカ」は、日本古来の食文化「発酵食を台所に取り戻す」をテーマにしたカフェ&ショップです。
看板メニューは、ご飯以外のすべてに発酵食品を使った「発酵8種定食」。メインの料理に使われている「麹納豆」は、あまりのおいしさに買って帰る人も多いそう。
食後にはスイーツセットをプラスすることも。自家製天然酵母を使ったガレットは、ずっしりとした食べ応えがあります。
カフェの2階はマルシェ(ショップ)になっており、人気の麹納豆や、甘酒ドレッシングなどが購入できます。お土産にすると喜ばれそうですね。
ランチの後は腹ごなしをかねて、徒歩で10分ほどの清凉寺へ。こちらのお寺は『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルとされる源 融(みなもとのとおる)の山荘跡やお墓が残る名刹です。そんなお寺の境内に、注目の庭茶屋「Bhagavan(ヴァガバァーン)」があります。
店内は、漆調のテーブルに窓辺の景色が映り込むリフレクションが神秘的。テーブル席だけではなくお座敷席もあり、靴をぬいでくつろぐこともできます。香ばしく炙ったお餅に、白味噌や醤油のタレをからめた昔懐かしい茶屋団子で、ほっと一息つきましょう。
嵐山から嵐電に乗り、車折神社駅で降りると目の前に現れるのが「車折神社」の鳥居。
境内の「芸能神社」は、芸能・芸術の神様として映画やドラマで活躍する著名人がこぞって訪れることで知られています。奉納された朱色の玉垣に、気になる俳優さんやタレントさんの名前を見つけると、なんだか嬉しくなってきますね!
芸能神社の向かいの小さなお社が「清少納言社」。本殿の御祭神である清原頼業(きよはらのよりなり)の一族であった縁から、清少納言がお祀りされています。
中宮定子に仕え、その思い出を随筆『枕草子』で生き生きと描いた才女にあやかり、より美しく、より聡明にと、願いを託しましょう。
大河ドラマでは、とても好奇心旺盛な女性として描かれている主人公の紫式部。1000年以上昔に、この風景を紫式部が見たかもしれない・・・・・・と想像しながら嵐山・嵯峨野をめぐると、ワクワクしてきますね。