鯉が悠々と泳ぐ庭園を眺めてランチやスイーツが楽しめるカフェ「古民家Cafe×Beer 花やしき」。広大な敷地にはカフェとして開放されている母屋のほか茶室として建てられた家屋が2軒あり、明治時代に使われていた日常の道具も展示されるなど、往時の雰囲気を色濃く残しています。観光地としてにぎわう横浜とは一味違ったエリアを訪ねて、縁側でのんびりくつろぐひと時を過ごしませんか。
静かな住宅街のなかに、石造りの門を構える「古民家Cafe×Beer 花やしき」。江戸末期に建てられたという歴史のある屋敷で、松やモミジが青々と茂るアプローチを抜けると旅館のような玄関にたどり着きます。
この屋敷をカフェとしてオープンさせたのは、この家を引き継いだ川口百合衣さんです。幼いころはこの家に親戚や知り合いが集まって大勢で膳を囲むことが多かったのだそう。時代の流れとともにそうした習慣も変化したため、今度はより沢山の人にこの家の雰囲気を楽しんでもらいたいという思いから、カフェをはじめたのだとか。
広い屋敷はリノベーションをして、10畳と6畳の和室を一つの部屋にした開放感のある広間になっています。天井を見上げると昭和20年代ごろまではどこの家庭でも使われていた電球をつけるための白色の碍子(がいし)引き配線が張り巡らされています。
緋毛氈を敷いた縁側からは、池の鯉が悠々と泳ぐ庭の眺めがよく、風情のある光景を楽しめます。お天気のいい日は緑がまぶしく、雨の日は雨音がしっとりとした情緒を醸し出します。はじめて訪れてもまるで自宅のようにくつろぐことができるのも大きな魅力です。
料理を待つ間は、お屋敷をぐるりと一周するのも楽しいひと時です。玄関の脇には金屏風のある応接間、庭の向こうには茶室「茶蔵庵」「雲夢庵」が2軒もたたずみます。
茶室の前はテラス席になっていて、鶯のさえすりが響き渡るなか、心地のいい風が吹き抜けます。夏の初めにはアジサイが庭を彩り、そのあとはユリをはじめとした盛夏の花が咲きそろいます。
食事には地元でとれた新鮮な野菜をたっぷり使います。好きな具材を3種類選ぶ「おむすびセット」のお味噌汁にもそうした野菜たっぷりで、京都丹後産の特別栽培米を炊いたおむすびはご飯の甘みも感じますよ。
食後には、明治8年創業の京都伊藤柳櫻園茶舗の抹茶を贅沢に使用した冷たいお抹茶をぜひ。旨味のある味わいはもちろんのこと素敵な茶器でいただけます。
こうした器は、おむすびの皿から箸置きに至るまでこの家で代々受け継がれてきたものを使用しているのだとか。大勢の人々をもてなしてきたことから器の種類は多く季節感も感じられます。
老舗の抹茶はスイーツにも。プリンやパウンドケーキのほか「自家製抹茶あんみつ」もおすすめの一品。別添えのあんこと黒蜜をかけて召し上がれ。
四季の移ろいを感じる屋敷で過ごす時間は、日常を忘れて心が少しずつほぐれていくようなひと時です。池に流れ落ちる水の音や涼やかな風鈴の音色、小鳥のさえずりなど豊かな日本情緒を感じて過ごしてくださいね。