仙台のシンボルストリート・定禅寺通沿いに立つ「和菓子 まめいち」。2015年のオープン以来、仙台の和菓子シーンを牽引してきた幾世橋陽子さんが営むお店です。日々の出会いや心突き動かされた情景、季節のうつろいなどから着想を得た和菓子は、どれも気持ちが華やぐようなものばかり。生菓子は毎月、パフェは隔月でメニューが変わるため、訪れるたびに新たなおいしさと出会えますよ。
仙台市地下鉄勾当台公園駅から定禅寺通を歩くこと6分ほど。図書館やギャラリーなどを有する複合施設・仙台メディアテークに隣接するビルの2階に、「和菓子 まめいち」はあります。
元々は青葉区本町にお店を構えていましたが、2023年に現在の場所へ移転。旧店舗より客席が広く取られており、より多くの人が和菓子を楽しめる空間になっています。緑きらめく通りを眺めながら和菓子を味わう、くつろぎのひとときを過ごせますよ。
「和菓子 まめいち」の菓子を手がけるのは、店主であり和菓子職人の幾世橋(きよはし)陽子さん。店内では生菓子と寒天パフェ、お善哉が味わえます。
幾世橋さんがつくる和菓子の魅力は、なんといっても独創的な世界観です。伝統的な和菓子というと季節感を取り入れることが多いなか、インスピレーションを得ているのは、自身の体験や出会った人の人柄、歴史、情景などさまざま。目には見えない気持ちにまでも思いを馳せ、和菓子で表現しているというから驚きです。
時には、菓銘やデザイン、使ってみたい食材が先に思い浮かぶこともあるのだとか。「月末は毎回バタバタ。でも、スタッフとあれも違うこれも違うと話し合う時間はすごく楽しいんです」と、幾世橋さんは笑います。
ひと月おきに内容が変わる季節の寒天パフェは、これを目当てに訪れる人も多い人気メニューです。訪れた日のパフェの菓銘は「優しい人」。「優しい人って、メロン色に見えるんですよね」と幾世橋さん。映画「陰陽師0」を鑑賞した際に、染谷将太さんが演じる源博雅から感じた優しさがインスピレーションを受けるきっかけとなったそうです。
とろけるような甘みのメロンとぶどう、ふくよかな味わいの粒餡、コク深い蔵王ミルクジェラートと、食べ進めるごとに多彩な味がお目見え。濃淡の異なる甘みに、トッピングされたグリッシーニの塩味がアクセントを加えます。
じゃがいもサブレはザクザク、2種類の寒天はコリコリ・フルフルと、食感のコントラストの違いも楽しいところ。食材の組み合わせを変えながら、時間をかけて味わいたくなるおいしさです。
月替わりの生菓子「ひと月の和菓子」は、毎月3〜4種類がラインアップします。訪れた月は、5月。フラワームーンと呼ばれる5月の満月をモチーフにした甘酸っぱい錦玉羹「FlowerMoon」、本わらび粉100%の「本わらび餅」、穏やかな青が美しい「HealingBlue」が並んでいました。
店内で味わうときは、抹茶をセットにするのもおすすめです。上質な生菓子と抹茶のマリアージュに、心も体もほっと癒されます。
生菓子より日持ちする焼き菓子は、手みやげを探しているときに最適。味噌の豊かな香りが広がる「和ラスク 仙台みそ」(410円)や宮城県白石産ササニシキの米粉を使った「まめいちぼーろ」(304円)など、常時6〜7種類ほどが揃います。
いちおしは、仙台駄菓子の定番であるきなこねじりをアレンジした「美人さんのおやつ」です。もっちりとしたきなこに、無花果とくるみをバランスよく練り込んでいます。素敵な菓銘の由来は、きなこはむくみ解消、無花果は整腸、くるみは美肌に良いと、美容に欠かせない素材を使っていることから。自分用にも購入したくなりますね。
幾世橋さんの感性を閉じ込めた和菓子を味わいに、杜の都へ足を運んでみませんか。