「お芋はね、炊飯器で蒸すと簡単なんよ」「帰りのバス分かる?」「今から配達行きます」。まるで、市場のような会話が聞こえてくる店先。織物の町・西陣の一角にある「ベジサラ舎」は、八百屋&食堂という珍しいお店です。自然派野菜を使ったランチが人気で、旅のおみやげとして野菜を買う方も多いとか。その魅力を探りに、さっそく訪れてみました。
「ベジサラ舎」へは、京都駅からバスで約30分。乾隆校前バス停を下車、千本ゑんま堂前の信号を東へ折れ、そのまま蘆山寺通を進みます。やがて軒先に吊るされた「八百屋&すこやか食堂」の旗が見えてきたら、その古い町家がお目当てのカフェです。
オーナーの中本千絵さんが、親戚から受け継いだ町家で小さな八百屋を開いたのは3年ほど前のこと。子育ての傍ら料理教室を主宰し「子供たちに安心して食べさせられる野菜を」との思いから、自身が食べて「おいしい」と感じた生産者を訪ね歩いたことがきっかけでした。
そうするうちに、無農薬や有機栽培で育てられた野菜が評判を呼び、軌道に乗った八百屋でしたが、中本さんには新たな悩みがありました。「野菜が新鮮であることは大切なのですが、鮮度や形を理由に廃棄することは避けたかった・・・・・・。工夫次第で十分おいしく食べられるのだから」
それを解決するための試みとして、昨年7月に「すこやか食堂」を併設、八百屋のスペースも拡大し、新たな「ベジサラ舎」が誕生する運びとなりました。
月替わりのメインに小鉢と汁物が付く「すこやかSet」は、野菜をたっぷりと味わえる一押しメニュー。この日は、カラフルな野菜あんがかかったチキン南蛮に、白和えとかす汁、そしてピクルスが添えられていました。
うずまきビーツなど珍しい素材も使われていますが、大半は人参や大根、ほうれん草にレタスなど毎日の食卓で見かけるものばかり。「ここで味わった料理を、家庭でも作って欲しいので、どこででも手に入る材料を使った奇をてらわないメニューを心がけています」と中本さん。
また、素敵な作家ものの器も、京都の川勝五大さんをはじめとする市販されているものばかり。気に入ったら、ふだんの生活に取り入れることもできます。
ランチだけでなく、スイーツもすべてが手作りという手の込んだもの。シフォンケーキ、アイス、フランボワーズソースも、すべて自家製です。とりわけ、柑橘類などフルーツのおいしさは格別。コーヒーは、京都のロースター「山居」さんの豆が使われています。
「ベジサラ舎」では、ランチやカフェタイムの後に、野菜や果物を求める人が絶えません。
たとえば、「スイーツのオレンジがおいしかったな」とか、「あの人参ドレッシング、どうやって作るんだろう」と気になることがあれば、ぜひお店で尋ねてみましょう。おいしい食べ方やレシピを教えてもらえます。
そのような交流から生まれてくる市場のような空気感こそが、ベジサラ舎の魅力なのです。今度の京旅では、スタッフの方から聞いた料理のレシピが、旅のおみやげになるかもしれませんね。