神戸・垂水にある「ころは」は、1階がスパイスカレーの「カレーや」、2階が焼き物を主とするギャラリー兼ショップ「うつわと道具や」という新鮮な組み合わせのお店。
店のオーナーで、陶芸家の三木あゆみさんにお店のことやオススメの作品について紹介していただきました。
心地よい潮風を感じる海辺の街、垂水。駅から少し坂を登ったところに、カレーと器の店「ころは」はあります。
この店の2階では、オーナーである三木さんの作品をはじめ、全国の作家の手仕事による器や台所道具が定期的に入れ替わりながら並び、様々な作風に触れることができます。
「お客様の暮らしを想像して、普段使いしやすい器ということを大切に並べています。あとは私が直感で気に入ったものもありますね」と話す三木さんに、暮らしに取り入れたいオススメの器を聞いてみました。
三木さんが岐阜・多治見で陶芸を学んでいた際に出会ったという陶芸家・小黒ちはるさんの作品は、陶磁器用のチョークで描かれた自由な線とポップな差し色が印象的です。ぽってりと厚めの手ざわりと、手仕事ゆえの一つひとつ異なるいびつさで、食卓にぬくもりを与えてくれそうです。
三重県で活動する陶芸家・山口和声さんの作品は、暮らしに息づく民藝の精神をもとに、イギリス発祥のスリップウェアという技法で作られています。スリップウェアとは生乾きの素地の上に異なる色の化粧土をかけ、スポイトなどの細いものでマーブル状の線や縞模様を描き出した器のこと。
さぞ上級者向けの器かと思いきや「想像以上に、普段食卓に並ぶ幅広いおかずに合うんですよ。料理をより美味しく引き立ててくれるんです」と三木さん。美しく流れる線が、手に取るたび異なる表情を見せてくれる器です。
陶芸家・伊藤豊さんの作品は、自身が制作の拠点とする岐阜の土で制作され、ていねいに手彫りされた器の縁の「しのぎ」と、ざらりとした質感が特徴です。
白やグレーの器には白い化粧土を表面に塗る「粉引き」という技法を施され、「しのぎ」の縁からのぞく素地の土の色が味わい深い器です。シンプルゆえに使い込むほどに愛着が湧きそうです。
「ころは」の1階では、元は食品メーカーに勤めていた三木さんのご主人・南方浩二さんが「カレーや ころは」を営まれています。
店の定番メニューは、研究熱心な南方さんが3種類のひき肉をそれぞれ異なる調理で炒めてブレンドしたこだわりのキーマカレー。「五感でカレーを楽しんでほしい」と、肉の旨味とトッピングされたナッツ・長芋・水菜の異なる食感、そして15種類からブレンドされたスパイスの風味が味わい深い一品です。
「カレーも器を取り入れるきっかけの一つになれば」と南方さん。三木さんの作品をはじめ、2階で販売する作家もののカレー皿で実際に食べられるのも、このお店ならではの楽しみです。
三木さんご夫婦は「器だけにとどまらず、作家による台所用品も広く取り扱っていきたいですし、面白い企画展もたくさん開催したいです。手仕事の良さを発信できる場にしたい」とお店の今後について意気込みを語ってくれました。
陶芸とカレーという一見異なる視点でありながら、同じ「食と暮らしを豊かにしたい」というお二人の想いが詰まったお店に、ぜひ足を運んでみてください。