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【北海道】〈ギャラリーミグラード〉 世界自然遺産のまち、羅臼町の新たな文化発信拠点|北海道・道東におでかけ|おでかけコロカル

  • 2017年3月2日
  • コロカル
知床の大自然や漁業文化を広く伝える場所

北海道唯一の世界自然遺産・知床半島の南東部に位置する羅臼町。流氷とともにたくさんのプランクトンが運ばれる羅臼の海は多くの魚介類を育み、クジラやシャチなど海洋生物の楽園として知られています。

その羅臼の中心街にある〈道の駅知床・らうす〉に隣接し、ひときわ目を引くネイビーブルーの建物が、羅臼の観光と文化の情報発信スポット〈ギャラリーミグラード〉です。

2016年夏のオープン後、羅臼ならではのテーマで写真展を開催し、カフェスペースやギフトショップも充実させてきました。「進化し続けるギャラリー」として、町内外から注目を集めています。

羅臼の深海のような色の壁が特徴。隣接する道の駅 知床・らうす駐車場から入り口まで小道が続いています。海と渡り鳥がモチーフのロゴが目印です。

ギャラリーミグラードの構想は、2015年冬、知床羅臼町観光協会に勤務する羅臼町地域おこし協力隊の中村絵美さんらによって始まりました。

もともと羅臼は、雄大な自然や野生動物を撮影するため世界中の人が訪れる場所。

「写真撮影ツアーなどの自然観光をもっとPRしたい」

「天候に左右される自然体験以外でも、地域の自然や文化を深く知ってもらいたい」

と知床羅臼町観光協会が木造2階建ての旧ユースホステルをリノベーションし、ツアーデスクを併設するギャラリーの準備が進みました。

自身も美術家であり、ギャラリーの空間デザインを手がける中村さん。

「羅臼の大自然は人の心を豊かにする魅力を秘めています。そんな大自然をまちの文化として捉えることは、地域の自然を守ることにもつながっていくと思うのです」

ギャラリー改装を監修した地域おこし協力隊の中村絵美さん(左)と、同じく協力隊の阪田裕子さん(右)。阪田さんはエゾシカ革小物の作家としてギャラリー内で作品販売も。

当初、「ギャラリー」という言葉にピンときていなかった地元の人たちも、中村さんらの思いに共感し、観光関係者や漁業者を中心に、十数人がボランティアで改装作業に協力してくれました。

1階の4室の展示室は、美術作品の特性を際立たせるため、壁、天井、床をすべて白で統一した「ホワイトキューブ」に。多目的スペースやトイレ、エントランスも、10年以上空き家だったとは信じられないほど、明るく開放的な空間に生まれ変わりました。

「じゅうたんをはがして床を張り替える作業に始まり、壁のペンキをむらなく何度も塗り直すなど苦労しました。『何でこんなに塗るんだ!』と当時は地元の人に言われましたが、実際に展示が始まると『作品が映えるな』と納得してもらえました」

知床岬の昆布漁を紹介した展示。知床が世界遺産になる前の貴重な風景や歴史が紹介されました。(写真提供:ギャラリーミグラード)

2016年7月のオープン時には、実際の羅臼昆布漁のシーズンに合わせ、郷土写真展『The Last Kelp Harvesting-知床岬の昆布漁』を開催。地元の人に借りた昆布漁に関する古い写真を中心に、地元の人から聞き取った話をまとめ、大正時代から現在に至るまでの昆布漁の歴史をひも解く展示でした。

羅臼の昆布漁の技術は根室から伝わったものと言われていましたが、中村さんが歴史を調べるなかで、明治時代、根室から和人ひとりとアイヌ人30人が、日高地方の三石に昆布漁の研修に行ったことが文献からわかり、口伝えでは辿れなかった技術伝播のルートが明らかになったそう。

「漁業組合の人、ツアーガイドさんが喜んでくれました。観光客の皆さんにも、羅臼昆布の奥深さを伝えられたと思います」

2016年10月に多目的スペースで行われた写真家・石川直樹さんのトークイベント。(写真提供:シリエトクノート編集部)

ほかにも羅臼在住の水中写真家・関勝則さん、知床の自然や動物を約20年間撮影してきた写真家・山本純一さんの展示を開催。世界を旅する写真家・石川直樹さんのトークイベントも行われました。

2017年1月28日〜3月6日は、知床羅臼写真コンテスト受賞作品展などを開催しており、知床の野生動物の一瞬や、基幹産業の漁業風景など、羅臼の魅力がつまった写真が展示されています。

展示のほかにも、2017年1月の冬季オープンに合わせ、多目的スペースにカフェコーナーを開設。コーヒーや紅茶、羅臼昆布茶などの飲み物や、地元の女性がつくった焼菓子などを販売しています。羅臼町公民館図書室セレクトの知床に関する本コーナーもあり、飲食しながらゆったり閲覧することができます。観光客から地元住民まで、自然と人が集い、おしゃべりに花が咲くスペースになりました。

さらに奥へ進めば、地元の素材を活用した工芸品が並ぶギフトショップがあります。エゾシカ革の小物や、漁業の浮き球を再利用した照明、地元女性たちが大漁旗をペンケースやポーチにリメイクした「らうす凪」シリーズの雑貨など、羅臼の風土と、暮らす人の顔が見えるような品揃えが自慢です。

2017年度も企画展や、さまざまなイベントを行う予定のミグラード。オープンからまだ半年ほどですが、地元で写真同好会が発足したり、羅臼高校写真部が何度も訪れてくれたり、地元住民と観光客との交流が増えたり、さまざまな広がりを見せています。

「10年間、毎年羅臼を訪れてくれている関東の女性が『ギャラリーをつくってくれてありがとう、これまで羅臼について語り合える場がなかったから』と声をかけてくれたことがあります。町民にとっても、羅臼の観光とは何なのか、気づきを得られる場になっていけばいいですね」

中村さんの思いも広がります。

“ミグラード”とは、世界共通言語・エスペラント語で「渡り」を意味します。オホーツク海と太平洋を結ぶ眼前の根室海峡。トドやアザラシ、ワシ、シャチ、クジラ、海鳥など多種多様な海洋生物は、その豊かさに惹かれるように、毎年「渡り」を繰り返します。人々もまた、これらの生物と響き合うように、何度も羅臼へ訪れてほしいという願いが込められています。

羅臼で撮られた写真は、知床独特の貴重な生態系を伝えるかけがえのない媒体です。さいはての地で、進化し続けるギャラリーミグラード。立ち寄れば、知床の旅がより豊かに、印象深く心に刻まれることでしょう。

information

Gallery Migrado ギャラリーミグラード

住所:北海道目梨郡羅臼町本町4

TEL:0153-85-7331

開館時間:11:00〜16:00 ※変動あり。2017年1月28日〜3月6日は毎日開館

入場料:無料(イベントは有料の場合あり)

次回展示は4月29日から『アイヌプリの原野へ 伊藤健次展』(予定)

※次回の開館日時など詳しくはHPまたはFacebookをご確認ください。

Web:http://gallerymigrado.tumblr.com/

Facebook:https://www.facebook.com/gallerymigrado/

photographer profile

Yayoi Arimoto

在本彌生

フォトグラファー。東京生まれ。知らない土地で、その土地特有の文化に触れるのがとても好きです。衣食住、工芸には特に興味津々で、撮影の度に刺激を受けています。近著は写真集『わたしの獣たち』(2015年、青幻舎)。

writer profile

Yoshiko Nakayama

中山芳子

ライター。北海道斜里町生まれ、斜里町在住。世界遺産の自然や野生動物だけではない、知床の文化や歴史、人々の営みを伝えるリトルマガジン『シリエトクノート』編集部の一員。暮らしているからこそ見える北海道の魅力を発信すべく奮闘中です。シリエトクノートhttp://siretoknote.main.jp

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