こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
今回は、日本の伝統調味料である「味噌づくり」がテーマ!
じつは2月は、味噌を仕込むのにぴったりの季節なのです。この季節に仕込む味噌は「寒仕込み(かんじこみ)」と呼ばれ、気温が低く、発酵のスピードがゆっくりになるため、しっかりと熟成し、旨みの強い味噌になるといわれています。
使う材料は大豆、米麹、天然塩の3種類と、とってもシンプル。添加物一切なしの手づくり味噌がつくれます。
「私にもできるかな?」と思った方。今年はおうちで味噌づくりをしてみませんか?
昨年の、〈いとしまシェアハウス〉での味噌づくりワークショップの様子。大きなテーブルに材料を全部広げて、ワイワイ味噌づくりを楽しみました。
今と昔で、味噌のつくり方が違う?スーパーなどで見かけるお手頃価格の味噌の多くは「速醸法(そくじょうほう)」という方法でつくられています。
これは人工的に加温して、発酵・熟成を早める製法。熟成に半年〜3年ほどかかる昔ながらの「天然醸造」に比べ、速醸法は1〜3か月ほどで完成します。生産期間が大幅に短縮されることで大量生産できるようになり、たちまち全国へと広がりました。
天然醸造は、自然のままにゆっくりと発酵させるので、速醸法の何倍もの手間と時間がかかり、生産量もわずか。そのため値段も高めですが、長期熟成によって旨み成分がたっぷりと含まれ、深い味わいが生まれます。また、発酵や熟成を促す酵母やさまざまな菌が生きているため、発酵食品の本来のパワーを発揮することができます。
味噌の食べ比べ。仕込んだ年によって味が違うのがおもしろい!
市販の味噌の原材料をチェックしてみようご自宅にある味噌の原材料表示を見てみてください。どんなものが入っていましたか?
私が推したいのは、添加物の入っていない大豆、米、麦、塩などでつくられたシンプルな味噌。
今の味噌は、便利さや風味をプラスするためにうま味調味料などが添加されていることもあるので、味噌本来の旨みを楽しみたい方には、無添加のものがオススメです。
また、一部のお味噌には酒精というものが添加されている場合があります。酒精とはアルコールのことで、味噌の発酵を止める役割があります。発酵が進みすぎると味が変化したり、保存容器の中で膨張してしまうためです。
酒精を添加する理由はあるものの、シンプルな原料の味噌や、天然醸造の味噌を買いたい場合は、二酸化炭素を排出する穴の空いているパッケージのものを選ぶといいかもしれません。
味噌づくりワークショップにて。小さな子どもも一緒に参加できるのが味噌づくりのうれしいところ。
自家製味噌をつくってみよう!おうちでつくる味噌は、おのずと昔ながらの「天然醸造」となります。ゆっくりと発酵するのを“待つ”のも、自家製味噌の醍醐味です。あなたの味噌は、どんな味になっていくでしょうか? それではさっそく、自家製味噌づくりを始めていきましょう。
<材料>
大豆 650グラム
米麹 1キログラム
天然塩 390グラム
大豆を蒸す、または煮る鍋(圧力鍋でもOK)
プラスチック製保存容器、または保存用のビニール製保存袋、保存瓶 など
ボウル
消毒用アルコール
※この材料で約3キログラムの味噌がつくれます。
※カビ防止のため、やや辛口のレシピです。
<事前準備>
・18時間以上前に大豆を3倍の水に浸水させておく。冷蔵庫に入れておくと痛みにくいです。
・塩と米麹を混ぜ合わせておく(これは直前でもOK)
<つくり方>
(1)塩切りをする
塩と米麹を混ぜ合わせます。時間に余裕のある人は前日の夜に準備しておくと馴染んで◎。
(2)大豆を煮る、または蒸す
大豆の水を変え、60〜70分ほど鍋で煮ます。大豆を親指と小指で潰せるくらいまでやわらかくなったらOK。圧力鍋ならあっという間です。
我が家の味噌は大量に仕込むので、大豆を大きな寸胴でグツグツ煮ていきます。
ちなみに、大豆を蒸してやわらかくするのはとても時間がかかりますが、大豆の風味にこだわりたい! という方は挑戦してみてもいいかも。
(3)大豆をつぶす
人肌まで冷めたら、大豆をつぶします。すり鉢ですりつぶすと、味噌が滑らかになりおすすめですが、すり鉢がない人は大豆をビニール袋に入れ、ビール瓶などで叩いてもOK。(気をつけて作業してくださいね)
(4)大豆と塩切りした塩・米麹を混ぜる
(3)の大豆と、(1)の塩・米麹を、よ〜く混ぜ合わせるのがおいしい味噌をつくる秘訣です。
(5)団子状にする
(4)でつくったものを団子状にします。味噌の中に空気が入るとカビが生えやすくなります。ギュッギュッと握って空気が入らないようにします。
空気をしっかり抜くのがポイント。
(6)保存容器に入れる
まず、使用する保存容器をアルコール消毒します。味噌を詰めたら冷暗所または冷蔵庫で保存。
・プラスチック製保存容器の場合:味噌を入れたら、味噌が空気に触れないよう、ラップでぴったりと蓋をしてください。その上からプラスチック製保存容器の蓋をします。
・ビニール製保存袋の場合:しっかりと空気を抜いて保存してください。保管中に液体が漏れることがあるので、バットなどの受け皿の上に置いておくとベター。
・保存瓶の場合:保存方法はプラスチック製保存容器とほぼ同じです。脱プラスチックに挑戦してみたい人は瓶を使ったり、ラップの代わりに酒粕や晒しを使って蓋をしてみてもいいかもしれません。少し手間がかかるので、カビが生えてないかこまめに見てあげてくださいね。
たくさんの人の手の常在菌が混ざり合い、特別な風味の味噌ができあがります!
(7)食べられるのは、熟成させて半年くらいから
冬の間に仕込めば、夏の土用(2025年は7月19日〜8月6日)を過ぎたら食べられるといわれています。茶色くなってきたら旨みが増している証拠。半年熟成でもいいですし、味と色を見ながら、思い切って3年寝かせてみても◎。
もし表面に白いカビのようなものが出てきたら、それは産膜酵母(さんまくこうぼ)です。空気に触れている表面の一部に出ますが、酵母菌の一種なので食べても害はありません。ただ、味噌の風味が落ちるので気になる方は取り除いて食べてください。
おまけ
たくさん仕込んだ場合は、3か月後くらいに「天地返し」をします。これは、味噌を混ぜることで空気を入れ込み、微生物の働きを活発にするために行われます。
このとき、味噌からしみ出た液体をすくってわけておくと、たまり醤油のような風味の自家製「味噌たまり」がつくれます。すぐに使えますし、コクがあっておいしいですよー!
2024年に仕込んだ味噌は、福岡市内にある醸造所〈リブロム〉さんとコラボして我が家の棚田米で仕込んだクラフト酒の酒粕で蓋をしました。レモングラス が入っているので、どんな味噌になるか楽しみ!
手づくりの魔法を味わおう!我が家では、毎年味噌づくりのワークショップを行っていますが、同じ材料を使っていても、不思議と仕上がる味噌の味がみんな違うのです。
それはきっと、その人が持つ常在菌や、発酵過程の環境というものが、それぞれの味噌に作用し、独特の風味をつくり出しているからだと感じています。
今年は、あなたにしかつくれない“あなたの味の味噌”にチャレンジしてみませんか?この記事がそのお役に立てたら幸いです。
〈いとしまシェアハウス〉で味噌づくりワークショップを開催予定!ワークショップでは、〈いとしまシェアハウス〉で手づくりの麹をつくり、海水で塩をつくり、味噌を仕込みます。興味のある方は是非ご参加ください。
詳細はこちら麹づくりワークショップ塩づくり&味噌づくりワークショップ
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いとしまシェアハウス
公式サイト
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CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森