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室温が8度もUP!? 古民家「断熱リノベーション」ワークショップレポート

  • 2025年1月21日
  • コロカル

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

築80年の古民家に住む私たちは、ここ数年「断熱リノベーション」に熱心に取り組んでいます。

これは、壁や床に断熱材を入れたり、気密性を高めていくことで、外気温の影響を減らし、暖かく快適な住環境をつくるリノベーションのこと。

田舎暮らしといえば、昔ながらの古民家の生活に憧れる人は多いと思います。ですが、断熱・気密性能が低い古民家は冬場の室温が10度以下になることも珍しくなく、通気性のいいつくりのため、暖房の効きが悪く、光熱費がかさんでしまうデメリットもあります。

昨冬は自分たちで簡単にできるプチ断熱をご紹介しましたが、今回は、専門の知識を持った講師をお呼びして、我が家のリビングの床、壁、天井と一気に断熱リノベーションを進めたワークショップについてレポートしていきたいと思います。

作業中のリビングに集合したワークショップ参加者の集合写真。

断熱ワークショップ参加者のみなさん、講師の内山さん、そして大工さんたち!

結論からいうと、断熱した部屋はとても快適! 

・リラックスして子どもと遊べるようになった

・体調を崩しにくくなった

・暖気が逃げないので、光熱費の節約になった

・灯油などの化石燃料の使用を抑えることで、ささやかな地球温暖化対策につながっていく

と、メリットだらけ。「もっと早くやっておけばよかった!」と思うほど。

天井にスタイロフォームという断熱材を入れている男性数名の写真。

天井にスタイロフォームという断熱材を入れているところ。

そして、あらためて「リノベする前に断熱について知っておきたかった〜!」とも思いました。

我が家はこれまで、独自に古民家リノベーションを行ってきました。そうして手に入れたすてきな空間も、断熱材を入れるとなれば、また解体することに。そうなると、時間も手間も2倍かかります。

これから古民家リノベーションに挑戦する方が、私たちのような苦労をしなくて済むように。この記事が誰かのお役に立てたらうれしいです!

講師をお呼びした「断熱ワークショップ」

まずは、断熱ワークショップの講師をお願いした、一級建築士/省エネ建築診断士の内山章さんに我が家を見ていただきました。

講師を務めた、一級建築士/省エネ建築診断士の内山章さんの写真。

講師の内山章さん。とても親身になって相談に乗ってくださいました。ありがとうございました!

数々の古民家を断熱してきた内山さんが提案してくれたのは「ゾーン断熱」という手法。

「もともと通気性のいい古民家全体を断熱するのはとても難しいんです。だから僕のおすすめは、家の4分の3を“春夏秋の部屋”として残し、4分の1を“冬の部屋”として暖かい状態にする『ゾーン断熱』です」

古民家らしさが残る土間や美しい縁側は、屋外だと割り切ってそのまま残し、内側の障子や建具を断熱して、寒さが入ってこないようにするのはどうか、というのが内山さんの提案。

大きな梁の組み合わさった古民家の天井裏の写真。

内山さんと一緒に屋根裏に上がり、天井の構造などをチェックしていただきました。

つまり、夏は建具を取り払い、すべて開け放って風を通すことで涼しく、冬は断熱を施した建具や障子を入れて部屋を区切り、暖かくするということ。

季節によって家の形を変化させる工夫は、古民家だからこそできる断熱のアイディアだなとあらためて感じました。

相談を重ね、今回はリビングの二間を1泊2日のワークショップで断熱リノベーションすることに。リビングには薪を使って床下を温める韓国の伝統式床暖房「オンドル」が入れてあるので、できれば化石燃料ではなく、薪を使ったオンドルをメインに部屋が温められればと考えました。

まずは「建具」や「障子」を断熱!

ポリカを入れた障子戸を制作している男性2名の写真。

障子紙を取り除き、中空ポリカを貼りつけていきます。

まずは縁側や土間からの冷気を防ぐため、18畳ほどあるリビングの障子や建具を断熱仕様につくり直しました。

材料には、断熱DIYには欠かせない「中空ポリカーボネート(通称:ポリカ)」を使用。ホームセンターなどで3000円程度(1枚・約182×910センチ)で手に入ります。

プラスチック製の段ボールのような構造で、空気層があるため断熱性にすぐれ、透明度も高く、室内の明るさを保ちつつ断熱してくれるのです。

障子紙をポリカに置き換えた「ポリカ障子」と、ポリカを丸々1枚木枠で囲った「断熱建具」でリビングを囲い、外気温の影響を受けにくくしていきます。

これは簡単で安価な上に、効果も高かったので、たくさんの人におすすめしたい断熱テクニックです! 

中空ポリカが2枚入る、特製の断熱ドアのアップ写真。

中空ポリカが2枚入る、特製の断熱ドアをつくってもらいました。

また、冷気が入ってきやすいリビング隣の土間玄関には、大工の元シェアメイトに依頼してポリカを2重にした強力な断熱ドアをつくってもらいました。空気層が3層あるので断熱効果も抜群で、設置したその日から効果を感じました。

玄関・土間と、リビングを仕切る部分にポリカ入りの断熱ドアを入れている男性の写真。

元シェアメイトの大工さんが断熱ドアを設置してくれました。土間からの冷気が来なくなったので本当に暖かくなりました。

続いては「床下」を断熱!

畳を剥がし、板床を固定する大人数名の写真。

床下については、断熱効果のある畳はそのまま生かしたかったので、畳の下に「透湿防水シート」を敷き詰めて、気密性を高めていきます。

これは、水を通さず湿気を外部に排出する特殊なシートで、湿気を外に出しつつ床下から上がってくる冷気を防いでくれます。

透湿防水シートを貼ろうと畳を退けると、なんと床下の板と板の間には数センチの隙間が! 設計ミス⁉ と驚きましたが、これは意図的に板の間に隙間を設け、湿気を逃がして畳を保護する「荒板」という技術だそう。畳の部屋がすうすうとして寒い理由が、やっと判明しました。

床板に透湿防水シートを貼っている写真。

木の板を固定し直して、透湿防水シートを貼っていきます。シートの隙間には接着力が強く防水性の高い気密テープを貼って気密性を上げていきます。

断熱リノベーションで大切なのは、同時に気密性も高めていくこと。そうしないと、暖気が逃げたり冷気が入り込んでしまったりと、断熱の効果が十分に発揮されません。

この部屋は、透湿防水シートを入れ、床下の気密性が高まっただけで足元のひんやり感が減りました。

ラストは「天井」の断熱!

屋根裏にグラスウールを敷き詰めている写真。

屋根裏に登って作業。リビングの天井にフワフワのグラスウールを敷き詰めていきます。

暖かい空気は上に登っていくので、暖気が抜けないようリビングの天井にも断熱材を敷き詰めます。

使用するのは、細かいガラス繊維の間に空気を閉じ込め、断熱効果を生み出す「グラスウール」。厚みが増すほど効果が高まるため、20センチの厚みのものを使用しました。

こうして部屋のあちこちを断熱したワークショップ最終日には、12月でもストーブなしで室温が20度を超え、驚きと喜びで胸がいっぱいになりました。

断熱リノベをほどこしたリビング二間の写真。男性と子どもが遊んでいる。

断熱したリビング二間。断熱は見た目にはわかりづらいリノベではありますが、障子をポリカに変えたことで光がたくさん入る部屋になりました。二間を間仕切る襖も、断熱仕様に変えました。

断熱リノベで室温が8度もUP! 雪の日の効果は?

さて、気になるのが断熱リノベーションの実際の効果です。雪が降ったある日、「これはチャンス!」とばかりに赤外線温度計で建具の温度を測り比べてみました。

玄関付近で−6.5度と表示された温度計の写真。

−6.5度と、外気温よりも冷えている玄関のガラスのドア。恐怖です。

まず、外気温は2度。その影響をダイレクトにうける玄関のガラスドアは−6.5度(外気温より低い!)。土間とリビングをつなぐポリカを2重にした断熱ドアは6度。そして、石油ストーブとオンドルを焚いて温めたリビング二間を仕切る断熱ドアは18.8度。グラスウールを敷き詰めた天井部分は25.3度でした。

こういった建具を、ただの“モノ”の温度と侮るなかれ。じつは、体感温度=(室温+表面温度)÷2といわれており、体感温度は周りのモノの温度に大きく影響されるのです。−6.5度のガラスドアのある空間が寒く感じるのはそんな理由だったのですね。

天井に向けられた温度の写真。25.3度を示している。

天井の温度を測ってみました。

続いて、室温を測ってみました。

外気温は2度でしたが、断熱なし&暖房なしの部屋は7度、断熱あり&暖房なしの部屋は15度、断熱&暖房ありの部屋は、なんと25度もありました。

暖房なしでも、断熱しただけで8度も室温が上がったのには驚きました。

断熱リノベーションのおかげで、今では5歳の子どもが上着を脱いで、裸足で走り回れるくらいにリラックスできる場所になりました。暖房の効きも全然違うので、光熱費もだいぶ節約できました。燃料費も毎年高騰しているし、少しでも安くなるのがうれしい。もう本当に、いいことだらけです! 

自分たちの手で、古民家を暖かく

断熱リノベを施したリビングでくつろぐ、男性と子どもの写真。

暖かくなったリビングで。厳しい寒さの日は、断熱建具で部屋を区切ります。

最後に、この断熱ワークショップを開催するにあたり、クラウドファンディングに参加してくださったみなさま、講師を引き受けてくださった内山さん、さまざまなかたちでご支援いただいたすべてのみなさま、ご協力、本当にありがとうございました! このワークショップのおかげで〈いとしまシェアハウス〉に冬もリラックスできる場所が誕生しました。

けれど、広い我が家の断熱リノベは、まだまだ終わりません。これから毎年少しずつ、断熱リノベを続けていく予定なので家を暖かくする私たちの挑戦、楽しみにしていてください! 

今年もやります! 古民家断熱リノベワークショップ

今回のワークショップでは、山で間伐材を切り板材にするところからDIYします! 実際に木を切り倒し、製材所でカットするなど、1本の木が板になるまでを体験できる貴重な機会。また、同じタイミングで断熱ワークショップも開催するので、ぜひ体験しに来てもらいたいです! 詳細はこちら

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CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森

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