三重県松阪市の南西部に位置する、飯高町(いいたかちょう)。豊かな自然が残る一方で、道の駅や、大型商業リゾート〈VISON〉も近く、のどかな空気とにぎわいが共存するエリアです。
そしてこの地域で人気を集める飲食店が、〈奥松阪〉。
〈奥松阪〉では「何気ない日常に幸せを」をコンセプトに、地元の食材をふんだんに使った料理やデザートを多数提供。開業以来、多くの人々が訪れています。
店主は、デザイナーとしても活動する高杉亮さん。
店主の高杉さん。
もともとは名古屋市内に事務所を構えていましたが、数年前に松阪市の地域おこし協力隊へ就任し、家族とともに移住。その活動の一環で訪れた古民家にひと目惚れし、大家から譲り受けて2023年1月に〈奥松阪〉を開店しました。
現在は〈奥松阪〉の経営のほか、松阪市の特定地域づくり事業協同組合の理事長兼事務局長など、いくつもの活動を行っています。
地産の食材を使ったランチとスイーツを提供日替わりランチ(1350円)に登場する「松阪極豚のトンカツ&とっとき味噌ダレ」。
〈奥松阪〉で味わえるのは、県産ブランド鶏「みえ錦爽とり」や松阪市産の野菜など、地元の食材をたっぷり使ったランチ。日替わりランチをはじめ、毎日3種類ほどの料理を用意しています。
「ケーキプレート」850円。
カフェタイムには、デザートやドリンク類を提供中。コーヒに合うケーキや焼き菓子、豆花(トウファ)や愛玉子(オーギョーチイ)といった台湾系のスイーツなどを、ゆっくり楽しめます。一度に数種類の食べ比べをしたいなら、「ケーキプレート」もおすすめです。
さらに、デッドストックの食器や雑貨、焼き菓子やコーヒーなども。古き良き、日本の暮らしまわりの道具を手頃な価格で販売しています。
宿泊施設も8月にオープンそして今年8月には、宿泊施設〈Stay奥松阪〉も開業しました。〈奥松阪〉と同じく地元の人から購入した古民家をリノベーションした施設で、一棟貸しをしています。
外観は、木のあたたかみを感じる雰囲気に。周囲の環境にも合うよう、山小屋をイメージしてつくられています。
館内は外観とは一転、まるでモデルハウスのような空間が広がります。ベッドが4台設置されており、家族やグループでの宿泊にもぴったり。無人チェックインができるほか、英語でのチェックインにも対応しています。レジャーでの宿泊だけではなく、ワーケーションにも活用できそうです。
もともと〈奥松阪〉内のスペースでも、宿泊は可能でした。しかし、より宿泊に適した場所をつくりたいとの思いもあり、〈Stay奥松阪〉のオープンに至ったそうです。
開業後すぐに関東・関西など全国から若い世代が訪れ、多くの家族やグループに利用されたといいます。
どこにもない、新たなまちを目指して店主の高杉さんが胸に抱くのは、「県外の人にも、地元の人にも、松阪市を身近に感じてもらうこと」
高杉さんいわく、県外から移住した自分たちはいわば「よそ者」。しかし、このまちは誰もをあたたかく迎え入れる雰囲気があるといいます。そして、だからこそこの土地をもっと盛り上げ、エリアとしての魅力を高めていきたいそうです。
もともと、食や催しを通じて地域の未来を考え、地域に残る食文化や農業を未来につないでいきたいと考えていた高杉さん。今後はパティスリーやコーヒースタンド、マイクロブルワリーの建設なども考えているそうです。
数年後には、〈奥松阪〉を中心とした小さなまちが生まれているかもしれません。
information
奥松阪
住所:三重県松阪市飯高町宮前791
TEL:070-9069-4104
営業時間:11:00〜17:00(ランチは13:30 L.O.)
定休日:水・木曜
Instagram: 奥松阪
writer profile
Hiroko Shimokawa
シモカワヒロコ
しもかわ・ひろこ●岐阜県岐阜市出身。タウン誌の編集者を経て、現在は名古屋を拠点に活動するフリーランスライター・編集者。幼少期から「ローカル」を感じる店や人が好きで、大学ではまちづくり・都市政策を研究していた。