※野生植物は毒を持つものもあるため、必ず毒性がないか調べてからつくりましょう。※採取する際は、土地の持ち主さんに許可をとってからにしましょう。
こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
福岡県の糸島で暮らし始めてからというもの、案外身近なところに、おいしく食べられる野生植物がいろいろとあることを知る日々です。
10年以上暮らしても、まだまだ新しい学びや発見がある、これが田舎暮らしの醍醐味だと感じています。
さて、今回から3回にわたり「スーパーには並ばない、オツな味」と題してあまり知られてはいないけれど、身近かつ、意外とおいしい植物たちをご紹介していこうと思います!
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スーパーには並ばない、オツな味 #01 「ハゼラン」みなさん、「ハゼラン」という野草をご存知ですか? 道端や土手でピンク色の小さな花を咲かせる植物なのですが、ほうれん草にそっくりの味で、調理も簡単、おいしくて、すっかりハマってしまいました。
日本ではあまり食用として認識されていませんが、ビタミンや鉄分、カルシウムなどが含まれており、海外ではほうれん草の代用品として栽培する国もあるのだとか。
見てかわいい、食べておいしいこの野草と出合ったのは、“若杉ばあちゃん”こと、野草料理研究家の若杉友子さんのワークショップ。
「見たことあると思ったら、うちの庭に生えてる!」と手にとったのがきっかけで、サラダ、卵炒め、おひたし、豆腐和え、バター炒め、お味噌汁などさまざまな料理に使っています。
若杉ばあちゃんはこの野草を「月の雫」と呼んでいましたが、正式名称は「ハゼラン」というそう。
クセがなくて食べやすく、ほうれん草やツルムラサキと似た少し土っぽい風味がします。茹でると少し滑りが出て、口当たりはモロヘイヤにも似ているかも?
こんなにおいしいのに、知られていないなんてもったいなさすぎる! ということで、今回はハゼランの食べ方についてご紹介します。
「ハゼラン」ってどんな野草?ちょっと見えにくいですが、たくましい夏の雑草に紛れて生えています。
ハゼランはスベリヒユ科の植物で、もともとは薬用・観賞用として栽培されていましたが、今では多くが野生化し、あちこちの道端で見ることができます。効能は、健胃、せき止め、喘息、婦人病などといわれています。
高さ40〜80センチくらいまで成長し、小さなピンク色の花と、かわいらしい赤い実をつけます。
午後3時頃から咲き始めることから「三時草」という名でも呼ばれています。
ハゼランのつぼみ。もう少しで花が咲きそう。
食べるのは、ぷっくりと肉厚で鮮やかな緑の葉。葉が若くてやわらかい時期に収穫します。食べ頃であれば、茎を折ると「ポキッ」と気持ちよく折れます。ポキッと折れないのは、筋張っている証拠。食べるには大きく育ちすぎているかも。
葉は生食も可能ですが、ほうれん草と同じくえぐみのもととなる「シュウ酸」を含むため、生で大量に食べると腎臓に負担をかける可能性があります。
シュウ酸は水溶性なので、気になる方は湯通ししたり、水にさらすなど、下処理をすると安心です。
<調理前のハゼランの下処理>
葉をちぎっていくと、エキスで手が少しヌルッとします。不思議な感覚。
花が咲いていて、茎がしっかりしているものは「葉」だけを、やわらかい先端部分は「茎ごと」使います。
生食や炒め料理に使う場合は、シュウ酸除去のため、あらかじめ水に浸けておきます。
ハゼランのおすすめレシピ5選ハゼランは、クセがないので調理しやすく、肉厚で食べ応えもあるため、野草初心者さんにもぴったりです。
それでは、私が今までつくったレシピのなかで、簡単でおすすめのものを5つ紹介します。
ハゼランのもずく和え
茹でたハゼランを冷水で洗い、もずくと混ぜて、酢ときび砂糖で味つけ。肉厚な葉を噛むと、シャッキリとした歯応えがあり、そのあとに少しヌルッとした感触が続きます。酸っぱくて爽やかな風味が食欲を刺激し、夏にぴったりです。
アボカドとトマトとハゼランのサラダ
生食のサラダにも挑戦! アボカドと畑で採れたトマトをカットし、オリーブオイルと塩・胡椒・レモンで味つけしました。生の葉をかじると、えぐみがなく、食べやすく感じました。ただ、1枚丸ごと入れるより、少し小さめに切ったほうが味が馴染んで食べやすいかも。
ハゼランのクリームパスタ
ほうれん草のクリームパスタが好きなので、そのままハゼランにも応用!
ニンニク・玉ねぎ・ミンチ肉を炒めて牛乳で煮込み、茹でたハゼランを混ぜ込みます。味は文句なしにおいしい! 野草を使っているとは思えないほど食べやすく、おいしく仕上がりました。
ハゼランのお豆腐和え
塩茹でしたハゼランをお豆腐と和えます。味つけは、鰹節とお醤油でシンプルに。ちょっとネバネバした感じがモロヘイヤを連想させます。箸休めにぴったりの一品。
ハゼランの卵炒め
私が一番好きなレシピはこれ! ハゼランと卵をフライパンで炒め、醤油と胡椒で味つけ。シンプルですが、炒めることでハゼランのコクが出て本当においしい。
ほうれん草と風味がそっくりすぎて「ほうれん草です」と出されても、違いがわからないかも。バターで炒めるとさらにおいしくなります!
野草をおいしく食べるには、収穫時期がポイント!我が家の畑の土質ではほうれん草が育ちにくいので、ほうれん草に似た味わいの野草が自然に生えてくるのはうれしい!
ハゼランのレシピではほうれん草やモロヘイヤを参考にしてみましたが、どれをつくっても失敗なしで、とてもおいしかったです。
普通の野菜と同じような感覚で調理ができる、貴重な野草だと思いました。野草って、食べるまでにあれこれ手間がかかるとなると、だんだんと手が伸びなくなっちゃうんですよね……(笑)。
若い先端の部分は、茎ごと食べられます。
ただ、さすが夏の野草だけあって成長が早い。先週、そろそろ葉が大きくなってきて食べ頃だなと思っていたのに、収穫するときにはもう花の蕾がついていました。
花が咲くと葉がかたくなってきて食べづらくなるので、道端でハゼランを見かけたら、なるべく早く収穫するのをおすすめします。(収穫するときは、土地の持ち主さんに許可をもらってくださいね)
このおいしさ、たくさんの人に味わってもらいたいです!
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いとしまシェアハウス
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CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森