東京の避暑地であり、夏になると深い緑が生い茂り、太陽の光を含んでキラキラと輝く渓谷が美しい奥多摩。
ここに2024年5月16日、沿線全体をホテルに見立てる地域活性化プロジェクト〈沿線まるごとホテル〉の一環で、プロジェクトの中核となる施設 〈Satologue(さとローグ)〉のレストラン及びサウナが期間限定特別サービスメニューでオープンしました。
〈沿線まるごとホテル〉とは、地方創生事業を手掛ける株式会社さとゆめと東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が出資する〈沿線まるごと株式会社〉による、駅とその周辺の集落に点在する地域資源を”編集”し、地域全体を”一つのホテル”に見立てる世界観をつくりだすプロジェクト。
photo by Daisuke Takashige
その第1弾となる〈Satologue〉は、過去にこの地が林業で栄え、養魚場が営まれていた背景を引き継ぎ、歴史・文化・自然や特産品、人々の営みと地域資源の魅力を生かしたさまざまな体験をお客さまへ提供し、「ふるさと」を感じる滞在体験の創出を目指していく施設です。地域の新たな雇用創出も期待されています。
設計は、瀬戸内の宿泊型客船〈guntu(ガンツウ)〉などを手掛ける堀部安嗣氏が担当。
photo by Daisuke Takashige
「すでにそこに存在している宝物のような価値あるものに気づき、それに囲まれているということを、訪れるゲストの方に感じていただきたい」という思いのもと、土地の空気感と非日常を体験できる空間を設計。
レストランは、屋外と室内を極力隔てることのないよう、古民家のフィールド側に大きな窓をデザイン。床座である日本家屋の特徴を生かし、窓に沿って床座のカウンター席が設けられ、景色と一体感のあるつくりになっています。
発汗を重要視した薪サウナは、湿度と温度のバランスや、サウナ小屋の壁といった表面温度と熱容量など、より快適なサウナ体験ができるよう加味された本格派です。
photo by Daisuke Takashige 堀部 安嗣 1967年神奈川県横浜市生まれ。1990年筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業。1991−1994年益子アトリエにて益子義弘に師事。1994年堀部安嗣建築設計事務所を設立。2002年第18回吉岡賞を「牛久のギャラリー」で受賞。2016年日本建築学会賞(作品)を「竹林寺納骨堂」で受賞。2021年2020毎日デザイン賞受賞。2007年−京都造形芸術大学大学院教授。2022年−放送大学教授。
限定コースを提供するレストランのランチ営業と、宿泊者以外の方が使えるサウナを、5月16日から宿泊棟開業までの期間限定オープン。
奥多摩の多彩なストーリーを詰め込んだレストランphoto by Daisuke Takashige
学生時代、共に料理を学んだ駒ヶ嶺侑太さんと高波和基さんが都内から移住し、奥多摩のさまざまなストーリーを詰め込んだ料理を提供するレストラン〈時帰路(ときろ)〉。
photo by Kazuhiko Hakamada
ここでは、奥多摩の自然を感じられる沿線ガストロノミー(*1)に、フレンチのエッセンスを加えた期間限定のランチコースを提供。宿泊棟開業後は、宿泊者のみに提供されるフルコースディナー相当をランチにアレンジした期間限定のお得なコースとなるそうです。
(*1) 沿線ガストロノミー:「ローカルガストロノミー」が、地域の風土、歴史、文化を料理で表現することであるのにもとづき、沿線地域の風土、歴史、文化を料理で表現する意味の造語
photo by Daisuke Takashige
使用する食材は、敷地内の養魚場跡地を再利用した畑で育てた新鮮な野菜や、庭で収穫した香り高い柚子、多摩川上流域の豊かな水で育ったワサビや新鮮な川魚、烏骨鶏の親鳥や雄鶏、ジビエとして売られる鹿のハツ、産卵後の養殖ヤマメなど、地元で採れる四季折々の食材。市場では取引されないような食材に新たな価値を吹き込むなど、地域の資源循環にも貢献した、自由で新しく、そしてどこか懐かしさのある食の体験が楽しめます。
ドリンクは、青梅の老舗酒造〈小澤酒造〉や世界中にファンを持つ奥多摩のクラフトビール〈VERTERE〉のビールなど、青梅・奥多摩ゆかりの酒蔵・醸造所でつくられたお酒などをラインナップ。
駒ヶ嶺 侑太 東京都出身。服部学園調理師本科を卒業後、半蔵門のフレンチ「ARGO」にて修行を積む。その後「ソルト・グループ」へ転職、サステナブルグリル「The Burn」では各地の生産者と繋がりを持ち、ビーガン料理なども担当。同系列のバーガー専門店「THE GOOD VIBES」でシェフ兼マネージャーとして2年間従事。都内で多忙に仕事をこなす中、料理本来の意義や喜びについて考え続け、地域に料理で貢献する道に興味を持つ。調理人歴10年、現在は青梅在住。
高波 和基 岩手県出身。服部学園調理師本科を卒業後、白金高輪のフレンチレストラン「ラクープドール」で5年間修行を積み、前菜からデザートまで全般的に携わった経験が自らの料理の軸になる。神楽坂のワインビストロ「レピコロ」及び系列店の「ヴィアンド」でシェフを歴任、茅場町の「ビストロエル」立ち上げメンバーとして参画し2年間経った時に、専門学校同期の仲である駒ケ嶺氏からの誘いで本事業に携わる。調理人歴10年、現在は青梅在住。
営業時間:11:00〜15:15(完全予約制で11:00〜12:45と13:30〜15:15の2回転)
※希望者にはフィールド散歩15分程度を食事前に提供。
コース単価:5500円+ドリンク別
また、希望制にて食事が始まる15分前にフィールド散歩に参加できます。
photo by Daisuke Takashige
同館の敷地は元養魚場だった特徴を生かし、以前の給水設備や生簀(いけす)を再生させ、手積みのワサビ田やビオトープが造成されています。フィールド散歩では、そんなリデザインされた奥多摩の自然や生態系を直近で感じられることでしょう。
奥多摩を自然を十二分に生かした本格サウナphoto by Daisuke Takashige
〈風木水(ふうきすい)〉は、コンクリートの倉庫を改修した本格薪サウナ。高温になりすぎないためサウナ初心者でも入りやすく、ロウリュで蒸気を発生させて好みの湿度と温度に調節することもできます。薪には林業の歴史が脈々と続く奥多摩の木材を採用。木材のリラクシングな香りでいつもより数段整うことができそう。
photo by Daisuke Takashige
photo by Daisuke Takashige
水風呂は、水道水よりも柔らかなすぐ横の清らかな川の水。外気浴スペースでは、川のせせらぎと青々とした山々の景色を楽しむことができます。
photo by Kazuhiko Hakamada
サウナを堪能したあとには、庭のハーブや柚子などを使ったオリジナルドリンクのサービスも。オプションのハンバーガーのランチは、地場の川魚などの新鮮食材が使用されており、こちらも見逃せません。VERTEREのビールも購入可能です。
風木水
利用人数:定員4名
営業時間:9:00〜15:30(朝の部9:00〜12:00 午後の部12:30〜15:30 1日満喫プラン9:00〜15:30)完全予約制 ※サウナの日帰り利用は宿泊棟開業時まで
提供サービス:半日プラン:単価22000円/2名まで(2名で利用の場合1名11000円)、3名以上の場合は+1名追加7,700円、1日満喫プラン:44000円/2名まで(2名で利用の場合は1名22000円)、3名以上の場合は+1名追加15400円)
※このメニューは、宿泊棟開業までの期間限定でのご提供。
※オリジナルドリンク、ポンチョ、ハット、タオル、化粧水やボディーソープなどのアメニティーは料金に込み。(水着は別途ご持参いただくか、レンタルもご用意)
※特製ハンバーガー(ポテト・ピクルス付:2200円)を付けたプランもご用意しています。
※ランチと組み合わせ、サウナの前後にランチコース料理(5500円)をお楽しみいただくことも可能です。(レストラン、サウナそれぞれの予約が必要)
自然豊かな奥多摩の魅力をモダンに昇華した〈Satologue〉。この夏、癒しを求め、足を運ぶ人が増えるに違いありません。
information
Satologue(レストラン/サウナ)
所在地:東京都西多摩郡奥多摩町棚澤 1
交通手段:JR 青梅線 古里駅 徒歩15分、JR 青梅線 鳩ノ巣駅 徒歩20分
駐車場:あり
休日:火・水曜日(祝日の場合は翌平日休み)
tel:0428-85-8190
Web及び予約:Satologue 公式Webサイト
*価格はすべて税込です。
writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。