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あなたは見分けられる?「自然栽培の田んぼ」と「一般的な田んぼ」

  • 2024年7月23日
  • コロカル

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

今回は、ちょっとしたクイズからスタートしたいと思います。

ここに、「自然栽培の田んぼ」と「一般的な田んぼ」を上空から撮影した2枚の写真があります。どちらが「自然栽培の田んぼ」か、わかりますか?

「どちらがうちの田んぼでしょうか」というテキストと2つの田んぼの俯瞰写真が載った、畠山千春さんのSNS画面。

【1】は左の写真を拡大したもの。

【1】と数字が打たれた、曲線を描き、びっしりと稲が植えられた田んぼの俯瞰写真。

【2】は右の写真を拡大したものです。

【2】と数字が打たれた、稲が直線的に植えられている田んぼの俯瞰写真。

ヒントは、

・農薬や肥料を使っていないこと。

・手で苗を植える「手植え」という方法で田植えをしていること。

SNSでこの問いかけをしてみたところ、反響が大きく、こんなコメントが集まりました。

・不揃いで生命力が強そうなので、【1】が自然栽培

・窒素が濃いと緑が濃くなるので、肥料を入れていないのは色の薄い【2】

・【2】は雑草が生えておらず、人工的に整列されすぎているので【1】

・見れば見るほどわからない……! 

たくさんの回答をいただき、予想としてはほぼ半々でしたが、【1】が若干多い結果となりました。

みなさんはどちらだと思いましたか? 

田んぼの「稲の間隔」に注目!

夏の青空を水面に写した田んぼの写真。

この田んぼを上空から撮りました。

正解は【2】。こちらが私たちの「自然栽培の田んぼ」です。

まず、2枚の写真の「稲の間隔」に注目してください。【2】の田んぼは、稲と稲の間隔を広くとってあるのがわかります。

肥料を入れない田んぼでは土の栄養だけで稲を育てるので、間隔を広くとることで稲1本1本に栄養が行きわたり、茎が丈夫に育つのです。

また、風通しをよくすることで、害虫が発生したり稲が病気になったりするのを防ぐ効果もあります。

ただ、田んぼに植えられる稲の数が少ないので、必然的に収穫量も少なくなってしまうのがデメリットでもあります。

水を張った田んぼに植えられている稲の拡大写真。

自然栽培の田んぼは稲と稲の距離が広いのが特徴。狭く植えると栄養が足りなくなり、稲が育たなくなります。

【1】の写真は、肥料の入った田んぼ。肥料を入れるとよく育つので、稲と稲の間に隙間がなく、エネルギッシュに見えますね。風が吹くと稲が大きくしなり、迫力がありとてもきれいです。

曲線を描く田んぼと、真っ直ぐの田んぼ

それから、「稲の植え方」にもヒントがあります。

【1】の田んぼには、ターンの形跡があるのがわかりますか? これは、田植え機で田んぼに入った際、回転しながら苗を植えていくので、棚田に沿った形になるのです。俯瞰して見ると、苗が描く曲線が絵画のようでとても美しい。

きれいな曲線を描いた機械植えの田んぼ写真。

機械植えの田んぼ。きれいな曲線が見えます。コメントいただいた方のなかには、田植え機の種類まで予想された方がいて驚きました。

一方、手植えの場合は、田んぼを横切るように「田植え紐」をピンと張り、それに沿ってお米を植えていくので、どんな形の田んぼでも端まで真っ直ぐに植えることができます。

「手植え」の方法が書かれたイラスト画像。

苗を手で植える「手植え」の方法。

また、紐の間には竹を浮かべ、竹につけられた印を目安に苗を植えていくので横の間隔も均等になるのです。

田植え紐と竹の目印にそって稲を植える2人の男性の写真。

苗が等間隔でないと除草作業が大変になるので、できるだけ均一になるように植えていきます。ピシリと等間隔に植えられた田んぼを見ると、手仕事の美しさを感じます。

あまりにも直線的なので、こちらを機械植えと思った方も多かったかもしれません。

ターンの跡がなく、端までまっすぐ植えられている手植えの田んぼの写真。

手植えの田んぼ。ターンの跡がなく、端まで真っ直ぐ植えられています。上から見ると人工的な感じがしますね。

竹を使った田植えは、ご近所さんから教わったのですが、この方法を導入してから圧倒的に田植えが早く、そして精確になりました! 

ちなみに、各地域で手植えの方法は違うようなので、調べてみてもおもしろいかもしれません。

肥料の入れ方でも見た目が変わる!

「機械植え・肥料あり」「手植え・肥料なし」と書かれた2つの写真が並んだ画像。

また、「稲の色」にも違いがあります。肥料を入れた田んぼは、窒素という養分の効果で稲の緑が濃くなる傾向にあります。

一方で、肥料を使わない田んぼのほうは緑色が薄め。ゆっくり育っていくので、稲もまだ小さいのがわかります。

さて、このクイズ、あなたは正解することができましたか? 

個人的には、回答が真っ二つに割れたこと、そのなかでも「自然栽培の田んぼのほうが人工的に見える」という方が若干多かったことが、とても興味深かったです! 手植えの田んぼが、機械に負けないくらい整然として美しいということでしょうか(笑)? 

みなさんの周りの田んぼも、稲の植え方や色の濃さなどをよく観察してみると何か新しい発見があるかもしれません。好奇心を持って、田んぼを見つめてもらえるとうれしいです。

田んぼの草とりと、田んぼの生き物たち

田んぼの草取りをする手元の画像。

次はグッと近づいて、田んぼのなかを覗いてみましょう。

田んぼには、稲だけでなくヒエやコナギ、さまざまな雑草が生えてきます。除草剤を使わない我が家の田んぼでは、田んぼ内の除草作業も、棚田の石垣の草刈りも、全部手作業。

記録的な水不足で田んぼに水が入らなかった年は、露出した土の部分から雑草がたくさん生えてしまい稲が見えなくなるほど草に覆い尽くされてしまったこともありました。田んぼに水を入れるのは、雑草を生やさないための対策でもあるのです。

半分は雑草が生い茂り、半分は草取りを終えた田んぼの写真。

雑草でよく見えませんが、左も稲が植えてある田んぼです。右は除草したあとの田んぼ。

その年の草とりは、本当に大変でした! 抜いた雑草を田んぼ内に放っておくとまた根をつけてしまうのでバケツに入れて田んぼの外に出しておきます。雑草が多すぎて、バケツリレーのような状態になっていました(笑)。

草取りを行う人々の写真。

雑草がひどかった年の田んぼ。左側が草とりしたあとで、右側が雑草の生えた状態の田んぼ。

また、農薬を使わない田んぼには昆虫やカエル、鳥などさまざまな生き物が棲んでおり、彼らと共生しながらお米を育てています。その生き物のなかには、除草作業を助けてくれる役割を持つものも。

まずは、「ジャンボタニシ」。ピンクのつぶつぶした卵を稲に産みつけ、たくましく増殖していきます。稲が小さいうちは、稲を倒して食べてしまう天敵ではありますが、その時期を過ぎると、新しく生えてくる雑草を食べてくれるので草刈りがぐんと楽になります。

彼らは水のない所には行けないので、苗が小さい段階では田んぼの水位を低くして稲を守り、苗が育ってきたら水位を上げて、除草に貢献してもらいます。

小さな稲の根元にジャンボタニシがいる写真。

稲を倒して食べるジャンボタニシたち。川から田んぼへ流れる水の入り口など、水が深くなる場所によく集まっています。

続いては、「カブトエビ」。約2億年前から形が変わらないため、“生きた化石”といわれています。

田んぼでは雑草の芽を食べてくれるだけでなく、あちこち泳ぎ回りって水を濁らせ、雑草が育つのを防ぎ稲の根に酸素を送ってくれるといわれています。

手のひらに乗ったカブトエビの写真。

カブトエビ。田んぼをチョロチョロと動き回り、とてもかわいらしい生き物です。

最後は、「トンボ」です。実はトンボって、主に田んぼで生まれるって知っていましたか? 

トンボは水中に卵を産み、そこから孵った幼虫ヤゴは蚊の幼虫であるボウフラを食べ、蚊の発生を抑えてくれます。

さらに成虫は、稲の栄養を吸いとり、大量に枯らせてしまう恐ろしい害虫・ウンカを捕食・駆除してくれる、心強い仲間でもあるのです。

ただ、残念なことに、農薬の使用や、用水路整備などにより、その数は年々減少しているともいわれています。トンボが飛び交う棚田の風景が守られるように、生き物たちが住みやすい田んぼづくりをしていこうと、あらためて思うのでした。

車の窓から青々とした田んぼを撮った写真。

軽トラで走り抜けると、景色がくるくると変わって楽しい!

棚田の田んぼといえば、金色の稲穂の印象が強いかもしれませんが、私はこの、青々としたフレッシュな稲が大好き。さーっと風が吹くと、稲が緑の海のように波打って揺れ、とても幻想的です。

稲は子どもと同じ。あっという間に大きくなってしまうのでこの一瞬の美しさを逃さないように、時間を見つけては棚田を散歩してこの美しさを味わっています。

この棚田を見てみたい! という方は、夏の間にぜひ我が家に体験に来ませんか? 滞在費が無料になる「移住体験プログラム」も参加者募集中です!

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CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森

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