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別府と佐世保のローカルに染まる。人気観光地に船で行く理由は?

  • 2024年7月16日
  • コロカル
船上から見た港まちは、味わい深い

港まちにとって、クルーズ船の初寄港はとても大きなニュースらしい。そのことを知ったのも〈クイーン・エリザベス〉での船旅がきっかけだった。

5月上旬。英国〈キュナード〉社の大型客船クイーン・エリザベスが、大分・別府と長崎・佐世保に初寄港(佐世保は初停泊)した。

船上から見た別府のまち。白い船は大阪行きの〈さんふらわぁ号〉。

船上から見た別府のまち。白い船は大阪行きの〈さんふらわぁ号〉。

先に寄港したのは別府。早朝にもかかわらず、埠頭で「Welcome to Beppu」と手書きの看板を掲げる人がいる。巨大な船舶をひと目見ようと大勢の市民が待っていた。

先に寄港したのは別府。早朝にもかかわらず、埠頭で「Welcome to Beppu」と手書きの看板を掲げる人がいる。巨大な船舶をひと目見ようと大勢の市民が待っていた。

別府港に碇泊したクイーン・エリザベス。

別府港に碇泊したクイーン・エリザベス。

別府では入港セレモニー、佐世保では〈クイーン・エリザベスフェスティバル〉が行われ、旅客船ターミナルは歓迎ムードに包まれた。

別府でのセレモニーの様子。大分県国際観光船誘致促進協議会長の長野恭紘別府市長(左から3番目)とアウレリアーノ・マッツェッラ船長(中央)ら関係者が挨拶し、港章の交換が行われた。

別府でのセレモニーの様子。大分県国際観光船誘致促進協議会長の長野恭紘別府市長(左から3番目)とアウレリアーノ・マッツェッラ船長(中央)ら関係者が挨拶し、港章の交換が行われた。

佐世保港では、佐世保市のご当地キャラクター・バーガーボーイとボコちゃんが出迎えてくれたほか、地元の高校生によるバトントワリングの演舞や、ゴスペルコンサート、地元企業による出店で、初寄港・初停泊を歓迎した。

佐世保港では、佐世保市のご当地キャラクター・バーガーボーイとボコちゃんが出迎えてくれたほか、地元の高校生によるバトントワリングの演舞や、ゴスペルコンサート、地元企業による出店で、初寄港・初停泊を歓迎した。

初めてその土地に寄港をすると、寄港地から盾や記念品が贈呈されるという慣習がある。船内の一角に、それらの品物が博物館のように納められているのだが、世界各国の贈り物のなかで、ひときわ存在感を放つ、日本の伝統工芸品の数々を見ることができる。広島港の記念品はしゃもじ、神戸港は高砂人形、秋田港は本荘ごてんまりといった品々が並び、世界中を旅してきたクイーン・エリザベスの軌跡と、寄港地の名産・特産を知ることができるスペースは一見の価値ありだ。今回の旅を経て、別府市の竹細工と、佐世保市の三川内焼の記念品も加わるのだという。

日本の伝統工芸品が集合する一角。バー〈コモドアー・クラブ〉へ行く通路にあり、多くの客が目にする。

日本の伝統工芸品が集合する一角。バー〈コモドアー・クラブ〉へ行く通路にあり、多くの客が目にする。

別府と佐世保に共通することは、どちらも陸地からは行きにくいところで、空港からバスやレンタカーで1時間ほど移動することになる。インバウンドの観光客がもともと多い両市だが、ダイレクトに2000人から3000人が寄港地にアクセスするクルーズ船は、インパクトも大きい。

近年ではクルーズ船客を呼び込もうと、国際ターミナルの新設や整備改修、多言語対応が進んでおり、別府港は2011年に大型旅客船が接岸可能な旅客船ふ頭が利用開始され、佐世保港も2015年に国際ターミナルビルを改修し、〈葉港テラス〉という愛称がつけられた。他県に目を向けると、2020年に金沢港クルーズターミナル、東京・有明に東京国際クルーズターミナルがオープン。隻数も増え、今後ますます“日本のローカル巡りは船旅で”という需要が高まるといえそうだ。

オプショナルツアーか、自由行動か

寄港地での過ごし方としては、大きく分けてふたつある。ひとつ目は、クルーズ船が用意しているオプショナルツアーに参加すること。主要なスポットを観光バスで効率的に回ることができる。たとえば別府であれば地獄めぐりや、足を伸ばして由布院まで行くコースがあり、食も文化も時間に余裕を持ってまんべんなく楽しめるのが魅力だ。

もうひとつは自由散策。自分で寄港地での過ごし方を考えて観光プランを組み立てる方法だ。港が市街地から離れている場合、港から中心地までシャトルバスが運行しているので、市街地で食べ歩きをするもよし、公共交通機関を使って観光地までデイトリップをするもよし。自由に過ごせるだけあって、計画的に動きたい。

別府と佐世保でデイトリップをするとしたら、どう過ごすか。コロカルならではの寄港地での過ごし方を紹介したい。

別府には市営温泉が100件も。おすすめは別府駅近隣

別府には、「別府八湯」の名のとおり、8つの温泉郷(浜脇温泉、別府温泉、観海寺温泉、堀田温泉、明礬温泉、鉄輪温泉、柴石温泉、亀川温泉)がある。イメージするのは鉄輪温泉の地獄めぐりや蒸し風呂かもしれないが、港からは少々アクセスが悪い。そこで、別府駅周辺の別府温泉の市営温泉で湯巡りするのはいかがだろうか。100以上あるという市営温泉から、源泉かけ流しの別府温泉3選を紹介する。

地元の人から愛される〈不老泉〉は別府駅から徒歩3分。市営温泉のなかでもっとも広い浴槽を有し、「あつ湯」と「ぬる湯」のふたつの風呂がある。明治時代から浴場があったが、数度の建て替えを経て、2014年に現在の姿に。あつ湯は、肌を刺すような熱さで船上生活の疲れやむくみを吹き飛ばしてくれる。

information

不老泉

住所:大分県別府市中央町7-16

TEL:0977-21-0253

入湯料金:大人250円 小人100円

利用時間:6:30〜14:00、15:00〜22:30

休館日:第1月曜

後継者不足で休業するも、1年後の2021年4月に復活を遂げた〈末広温泉〉。淡い色調の鶴見岳・由布岳の壁画が特徴的。ベビーバスも用意されており、老若男女から愛されていることがうかがい知れる。地域の方々の日常に溶け込むのも、旅の醍醐味だ。

information

末広温泉

住所:大分県別府市末広町4-20

TEL:090-1530-2387

入湯料金:200円

利用時間:7:00〜11:00、14:00〜22:00

定休日:毎月15日(8月は無休)

Web:Instagram(@suehiroonsen_bp)

別府駅から徒歩5分ほどにある〈永石温泉(なげしおんせん)〉。古くは永石湯(なげしゆ)、握石(にぎいし)温泉と呼ばれてきたが、地元の大工らが一夜にして木造の温泉場をつくりあげたため「一夜温泉」とも呼ばれたとか。現在の施設は1991年に建造。建物の横には中国烟台市の石でつくった湯あがり空間(ポケットパーク)もある。

information

永石温泉

住所:大分県別府市南町2-2

TEL:0977-26-5789

入浴料金:大人(中学生以上)200円、小人100円

営業時間:6:30〜22:30

※14:00〜15:00までは清掃時間のため利用中止

定休日:第2火曜(祝日のときは変更の場合あり)

佐世保を船からも陸から見てみよう

朝5時。波風ひとつなければ音もなく、船は島々をぬうように走る。佐世保港への寄港の直前がゴールデンタイムだ。

夜明け前の静けさ、海の美しさに息を呑む。島々が重なり、その陰影がますます濃く見えてくるゴールデンタイム。

夜明け前の静けさ、海の美しさに息を呑む。島々が重なり、その陰影がますます濃く見えてくるゴールデンタイム。

日の出の時間。太陽の温かさが染み入る。

日の出の時間。太陽の温かさが染み入る。

九十九島というが、実際は208の島で構成されており、そのうち有人島は3つ。島の密度は日本一で、太古のこの地はすべて大地だったのが、海の動きで徐々に分割され、島になったといわれている。佐世保湾外から北、平戸までの約25キロの海域は、複雑に入り組んだリアス海岸と島々が織りなす美しい景観が広がっており、〈西海国立公園 九十九島〉として、国立公園に指定されている。

高後崎(こうござき)と、相対する西彼杵(にしそのぎ)半島

市街地側から南に延びる俵ヶ浦半島の先端、高後崎(こうござき)と、相対する西彼杵(にしそのぎ)半島の寄船(よりふね)を佐世保湾口と呼ぶが、このわずか800メートルの間を巨大な船がすり抜ける。まだ日常の営みが始動していない集落。美しい海があり海岸があり、船が往来するこのまちの日々の生活を想った。長く長く尾を引く航跡が美しかった。

船から九十九島を見たら、陸からも眺めてみるのはどうだろう。先程船で通ってきた俵ヶ浦にある展望台〈展海峰〉から九十九島を臨む。船上からも散々海を眺めてきたはず、まだ海を見たいのかと問われても、不思議と飽きないのだ。この安閑とした風景は佐世保だからこそだ。〈九十九島パールシーリゾート〉から発着する遊覧船や、九十九島クルージングなど、地形を楽しむ夏のアクティビティもおすすめしたい。

〈展海峰〉から九十九島を臨む

展海峰とは対角にある〈船越展望所〉からは美しい夕景が眺められる。船から見る朝日、展望台から見る夕景。どちらの絶景も味わいたい。

〈船越展望所〉からの美しい夕景

また、市街地に足を運んで、軍港・商港として発展を遂げてきた“港まち佐世保”の歴史や文化を体感するのも一興。「レモンステーキ」や「佐世保バーガー」、「長崎ちゃんぽん」といったご当地グルメに、アメリカンな風を感じる外国人バーや、昔ながらの喫茶店を巡るのも楽しい。

寄港地では有名な観光地を巡るのももちろんいいが、短い時間だからこそ港まちを満喫するという楽しみ方もある。海からアクセスしてローカルにぐっと入り込むと、列車や飛行機の旅とまた異なる魅力が見えてくるに違いない。ぜひ、洋上からも陸上からもその土地のよさを感じてほしい。

editor profile

Yu Ebihara

海老原 悠

えびはら・ゆう●コロカルエディター/ライター。生まれも育ちも埼玉県。地域でユニークな活動をしている人や、暮らしを楽しんでいる人に会いに行ってきます。人との出会いと美味しいものにいざなわれ、西へ東へ全国行脚。

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