日本初の旅の大ブームは、いまからおよそ200年前の江戸時代の後期に起こったと言われています。火付け役は歌川広重の描いた「東海道五十三次」の浮世絵。広重の絵の風景を一目みようと、旅人は東海道を旅していたのだとか。
江戸時代に整備された江戸と京都を結ぶ街道の一つ、東海道。江戸・日本橋から続くその道は品川宿を経て「川」を渡り、その次が川崎宿でした。宿場町とは、大名や各地を移動する旅人のために宿屋や飲食の提供を行う人々が集まる場所です。当時、川崎大師への参拝客で賑わっていた川崎宿は、旅人に宿を提供し江戸の人々やローカル民が交差する場所でした。そして2023年。文化を発展させながら、人と人、ものとものを結ぶ役割をしてきた東海道川崎宿は400周年を迎えました。
蔵元直営〈酒蔵Bar〉でチェックインを行う〈SAKE Kura Hotel 川崎宿〉これまで保存されてきた川崎宿の歴史を背景に、日本酒をテーマにした現代の価値観に合う「宿」として2024年2月9日にオープンしたのが〈SAKE Kura Hotel 川崎宿〉です。
宿があるのは京急本線「京急川崎」駅から徒歩約7分、JR東海道線、京浜東北線、南武線「川崎」駅から徒歩10分ほどの場所。チェックインはホテル1階の吉川醸造直営〈酒蔵Bar〉にて。400年かけて築かれた川崎宿の歴史と、日本酒や米の奥深さに酔いしれるひとときが待っています。
〈酒蔵Bar〉では吉川醸造の日本酒「雨降///あふり」を思う存分呑み比べすることができます。「雨降///あふり」シリーズは、丹沢大山(雨降山)の伏流水を仕込み水として使用する、新ブランドとして誕生しました。国内では珍しい硬度150〜160の硬水が使われ、原料のお米を「削らない」製法、低精白醸造や低アルコールなど、さまざまな挑戦を続けている日本酒です。
このほか雨降ハイボール、雨降カクテルなどもラインナップ。おでんや乾き物を中心とした軽食も、全て宿泊料金に含まれています。
〈酒蔵Bar〉は宿泊者以外も2時間3000円(金曜3500円、土曜4000円)で季節の酒、その日のオススメ酒4〜5種類をフリーフローで味わえます。かつて宿場町として人々が行き交い、いまでも多くの出逢いがあるこの川崎の地だからこその、日本酒の新たな楽しみがありそうです。
「宿場町」と「Kura」を新しく解釈した空間デザイン〈SAKE Kura Hotel 川崎宿〉は「宿場町」と「Kura」を新しく解釈した空間デザインになっています。倉を模した外観、入り口には大きな暖簾。アプローチを抜けるとフロントラウンジへ。
館内には、ヒロシゲブルーを使った家具や川崎宿にちなんだ浮世絵アートなどを展示。“倉”は古来、宝や小判、金や米俵など大事なものを保管する場所でした。〈SAKE Kura Hotel 川崎宿〉のラウンジや客室にも、お米や酒、陶磁器や着物が大切なものとして散りばめられています。
倉の余韻はそのまま客室まで続きます。古伊万里や着物、藍染めのアートが醸す、アンティークな雰囲気の中、時間を忘れてくつろぐことができそうです。
また、朝食には日本酒と同じくお米が主役であるおむすびが味わえます。川崎宿の名物・奈良茶飯をはじめ、食べやすくてホッとする、上品な味わいの朝ごはんです。
客室やチェックアウト後でも食べられるよう、テイクアウトしやすい形で用意されます。
川崎宿の歴史を感じるアートや調度品に囲まれながら、日本酒や食事を楽しめる〈SAKE Kura Hotel 川崎宿〉。歴史ある川崎宿の魅力を、ここでの滞在を通じてより深く感じられそうです。
information
SAKE Kura Hotel 川崎宿
住所:神奈川県川崎市川崎区本町2-8-2
Tel:044-210-0184
1泊1室料金:スタンダード26000円〜、スイート45400円〜
Web:〈SAKE Kura Hotel 川崎宿〉公式サイト
*価格はすべて税込です。
writer profile
Riho Nakamori
中森りほ
なかもり・りほ●東京生まれ東京在住のフリーライター/編集者。仕事やプライベートで月に1回以上、地方や海外へ。各地のおいしい食べ物やお酒、素敵なホテルや旅館を発掘するのが趣味。好きな番組は『ブラタモリ』『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』。