サイト内
ウェブ

廃校利用の事例。滞在型ホテル〈ザ・ホテル青龍 京都清水〉

  • 2023年3月29日
  • コロカル

地域が誇る歴史ある小学校をコンバージョン

今から150年以上前の明治初期。京都市内に「番組小学校」と呼ばれる小学校がいくつもできました。全国に先駆けてできた学区制の小学校で、地元住民の寄付によってつくられました。

コンバージョンされる前の校舎。右に立つ桜の木は今も健在です。

コンバージョンされる前の校舎。右に立つ桜の木は今も健在です。

〈ザ・ホテル青龍 京都清水〉は、その番組小学校のひとつをルーツに持つ歴史ある建物をコンバージョンして生まれたホテルです。

明治2(1869)年に下京第二十七番組小学校として開校し、昭和8(1933)年に移転新築された元清水小学校の校舎を保存、活用しています。清水小学校は2011年に閉校となり、ホテルは2020年にオープンしました。

かつての講堂の姿。

かつての講堂の姿。

新たにホテルとして活用するにあたり、元の建物を保存することが第一条件でした。

すべての客室には、かつての姿を見られる冊子が置かれています。

すべての客室には、かつての姿を見られる冊子が置かれています。

外観はもちろん、廊下や階段、アーチ窓など、意匠を凝らしたモダンな建築だった校舎はホテルのあちこちにその面影を残し、むしろそのデザインを際立たせるように整備、増築。初めて訪れても、自身の小学校時代の思い出と重なって、懐かしい気持ちが湧き上がってくるはずです。

建物のあちこちに残るかつての面影も楽しく

かつての校庭が目に入ります。

アプローチから〈ザ・ホテル青龍 京都清水〉に向かうと、かつての校庭が目に入ります。

階段は形状を継承し、石材を新しく。

階段は形状を継承し、石材を新しく。

校庭から建物をつなぐのは広い階段です。この階段は、階段の下にあった古い郵便ポストとともに小学校だったころから建物にとって象徴的なもの。そのポストも少しだけ位置をずらして、今も設置されています。

アーチ型の梁や、窓のデザインも生かした美しい現在の階段。

アーチ型の梁や、窓のデザインも生かした美しい現在の階段。

建物内部で、かつての日常を色濃く感じさせるのも階段です。幅の広さが学校らしい階段には、手すりに危険防止が目的だったと思われる突起が残されています。長い間、先生や子供たちが登ったり降りたりしたせいで、すり減ってしまった箇所もそのまま。

踊り場の窓も、かつて子どもたちが元気に行き交った姿を映し出すようです。もちろん建物内にはエレベーターが設置されていますが、できるなら階段を使って目的階に移動したくなります。

音楽室だった部屋は、かつての写真がいくつも展示されているアーカイブコーナー。

音楽室だった部屋は、かつての写真がいくつも展示されているアーカイブコーナー。

講堂だった場所は、主に朝食のレストランとして使われます。

講堂だった場所は、主に朝食のレストランとして使われます。同時にホテルのライブラリーとしても利用されていて、高さを生かした本棚から目線を上げると天井のデザインが当時のままであることに気がつきます。

外壁やスペイン瓦、雨どいが間近に見られるという楽しい仕掛け

南と北にある棟を3階で繋ぐ廊下は講堂の外に新設されたもの。外壁やスペイン瓦、雨どいが間近に見られるという楽しい仕掛けです。

廊下のあちこちにはアートオブジェが設置されています。

廊下のあちこちにはアートオブジェが設置されています。これも図画など小学生の作品が置かれていたかつての廊下をイメージさせるもの。廊下の窓から見える校庭や別棟の姿にも、建物内をさまよう楽しさが感じられます。

法観寺「八坂の塔」の迫力を間近に感じる客室やレストラン

パゴダビューの客室からは法観寺「八坂の塔」が大きく見えます。

パゴダビューの客室からは法観寺「八坂の塔」が大きく見えます。

〈ザ・ホテル青龍 京都清水〉がある場所は、清水寺からは徒歩8分という観光に最適な場所。ホテルの中にいると、人通りの多い観光地という土地柄を忘れてしまいます。

「八坂の塔」が見えるゲストラウンジでは、お抹茶をたてる体験も可能です。

「八坂の塔」が見えるゲストラウンジでは、お抹茶をたてる体験も可能です。

しかも法観寺「八坂の塔」は、パコダビューと名付けられた客室や、宿泊者が自由にくつろげるゲストラウンジからも、その重厚な存在が目に入ります。

〈ブノワ 京都〉は店内からも「八坂の塔」が見えます。

〈ブノワ 京都〉は店内からも「八坂の塔」が見えます。

敷地内には、フランス料理界の天才と称されるアラン・デュカス氏率いるデュカス・パリ監修のビストロ〈ブノワ 京都〉があります。

〈ブノワ 京都〉の「北海道産鹿肉のロティ」。

ブノワ 京都の「北海道産鹿肉のロティ」。

京都を愛するデュカス氏が選んだポスターが飾られる店内からも「八坂の塔」が見えます。京都とフランス、双方の魅力を感じられるレストランは、近所に住む人たちが食事に訪れることも多いそう。

カクテルとバーとの付き合い方も学べる〈K36 The Bar & Rooftop〉

〈K36 The Bar & Rooftop〉をプロデュースする西田稔氏。

〈K36 The Bar & Rooftop〉をプロデュースする西田稔氏。

そして、〈ザ・ホテル青龍 京都清水〉で必ずその雰囲気を味わいたいのが〈K36 The Bar & Rooftop〉です。〈K36 The Bar & Rooftop〉は京都を代表するバーテンダー、西田稔氏がプロデュースしています。

〈K36 Rooftop〉は3方向に開けた解放感あふれるルーフトップにあります。

〈K36 Rooftop〉は3方向に開けた解放感あふれるルーフトップにあります。「八坂の塔」や京都らしい黒い瓦屋根が見えるだけでなく、京都タワーや遠くの山々まで見渡せる素晴らしい眺望を見ながらお酒が味わえる場所。夕暮れどきはもちろん、日が落ちたあと、ほの明るい町を見渡すのも一興です。

〈K36 The Bar〉は、閉校前には6年い組の教室だった場所。「お客様にも小学生が授業を受けるように、カクテルの基礎を学んでいただこうと考えています」と西田氏。

「K36 ジン トニック」1650円。持ち帰ることができるメニューには、花言葉のようなカクテル言葉も記載されています。

「K36 ジン トニック」1650円。持ち帰ることができるメニューには、花言葉のようなカクテル言葉も記載されています。

その考えのもと、K36 The Barには名前に聞き馴染みのあるスタンダードなカクテルだけがメニューに並びます。メニュー表を持ち帰ることができるため、復習も可能という気の利きようです。

K36 The Barは遠方から訪れた人がチェックイン前にくつろげるようにと15時からオープン。そして1日の締めくくりをより良くするために遅い時間まで営業して、ホテルでバーを利用する豊かさも経験できるようになっています。そして西田氏の元で働く若手バーテンダーもK36 The Barで学び、それぞれに巣立っていくことを期待しているのだとか。

2つの教室を3つに分けた客室。窓からは対面の元校舎が見えます。

ふたつの教室を3つに分けた客室。窓からは対面の元校舎が見えます。

日本屈指の観光地、京都。その中でも清水寺や法観寺という人気の寺社に近い〈ザ・ホテル青龍 京都清水〉。それでも滞在中はずっとこの空間に身を置いていたくなる場所です。京都上級者ならずとも、美しさと懐かしさに心動かされて、これまでとは違う京都のよさを体験できるでしょう。

information

ザ・ホテル青龍 京都清水(ザホテルせいりゅう きょうときよみず)

住所:京都府京都市東山区清水二丁目204-2

TEL:075-532-1111

客室数:48室

1泊料金:1室2名朝食付き11万4300円〜1室1名朝食付き10万7400円〜

Web:ザ・ホテル青龍 京都清水公式サイト

ブノワ 京都

tel:075-541-0208

K36 The Bar & Rooftop

tel:075-541-3636

*価格はすべて税込です。

writer profile

Saori Nozaki

野崎さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright © Magazine House, Ltd. All Rights Reserved.