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築54年の平屋をセルフリノベ。コンテナの仕事部屋と写真スタジオ併設の半2世帯住宅へ

  • 2022年10月27日
  • コロカル
リノベのススメ vol.7

函館市で設計事務所を営みながら、建築施工や不動産賃貸、ポップアップスペースやシェアキッチンの運営など、幅広い手法で地域に関わる〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さんによる連載です。

今回お届けするのは、築54年の平屋を仲間たちとともにハーフセルフリノベーションするお話。この平屋を〈ケントハウス〉と名づけ、コンテナの仕事部屋とフォトスタジオを併設させながら、半2世帯住宅をつくるプロジェクトをご紹介します。

お祖父さんの家を住み継いでいく

ケントハウスとは、今回の主人公である水本健人(みずもと けんと)くんが生まれ育ったご実家です。健人くんとは、vol.4で紹介した〈箱バル不動産〉でのワークショップをきっかけに出会い、その後、古くなった実家について、建て替えかリノベーションのどちらがいいかと相談を受けてプロジェクトが始まっていきました。

実際に訪れてみると、屋根も外壁も真っ白に塗られ、玄関の庇(ひさし)の上にはシーサーが出迎え、なんだか沖縄の米軍ハウスに来たかのような印象。「このままでカッコいいじゃん!」という家でした。

ビフォー。住宅街のなかでは特に目を引く、まるで米軍ハウスのような佇まい。この辺りでは「ホワイトハウス」といわれている。

家の裏側や側面はつけ足したり、塞いであったりと工事を重ねた形跡があった。

 

この家では、健人くん夫妻と健人くんのお母さん、犬、猫2匹の3人+3匹暮らし。当時、健人くんと奥さんの久美子さんはともに看護師として働いており、夫婦それぞれに夜勤があるため生活がすれ違い、生活音の問題もあって苦労していると聞きました。

家のなかの暮らしを見てみると、健人くんのモノクロームな写真がド迫力で飾られ、お母さんの趣味のドライフラワーがセンスよく吊るされ、棚や机もDIYでつくられていました。なんと外壁も屋根も自分たちで塗り、色分けが面倒だから全部真っ白に塗ったとのこと。この家はもともと健人くんのお祖父さんが建てたもので、できることは自分たちの手を動かす丁寧な暮らしぶりから、お祖父さんが建てた家を大事にしているんだなと感じました。

いたるところにお母さんのドライフラワーがあり、玄関もいい雰囲気。

南側の大きな窓からタップリ光が入ってくる。おしゃれな暮らしぶり。

健人くんが撮って現像まで手がけているモノクロ写真がとても素敵だった。

 

建て替えるのは簡単ですが、お祖父さんからお母さんへ、そして健人くんへと引き継いできたこの家をこの先も大事に住み継いでいくほうがいいはずだと、しっかりリノベーションしていこうと決意しました。

ハーフセルフフリノベで、半2世帯住宅をつくる

小さな平屋のなかで、夫婦とお母さんの生活空間をどう快適にまとめるかが難題となりました。断熱や耐震の補強のほか、以下の目標をあげて、間取りを考えていきます。

・玄関とお風呂と脱衣場だけを共有する半2世帯の形態をとる

・犬や猫との共同生活のため、夫婦側は床暖房を入れた土間にする

・ロフトにたくさんの収納スペースを設ける

・お母さんの趣味のドライフラワーがたくさん飾れるスペースを設ける

・健人くんの作業部屋として、写真の現像などができるコンテナを設ける

ビフォー&アフターの間取り。玄関とお風呂(脱衣場)だけは共有し、キッチンやトイレ、LDKなどは別々につくる計画。

ビフォー&アフターの間取り。玄関とお風呂(脱衣場)だけは共有し、キッチンやトイレ、LDKなどは別々につくる計画。

ご夫婦ともに職業訓練校で少しだけ大工の勉強をしており、今回のDIYではそれを生かしていきたいとのこと。できない部分はプロに頼みながら、ハーフセルフビルドで進めていくことになりました。

お祖父さんから引き継いだ家を自らの手でリノベする挑戦。その生きざまを「ケントハウス・リノベーション」とプロジェクト名に刻みました。

「ケントハウス・リノベーション」のスタート

2018年2月下旬、ついに工事が始まりました。電気やガス、水道を撤去したあと、夫婦ふたりの仕事の合間を縫ってセルフで解体していきます。大三坂ビルヂングの工事に参加していた仲間たち、通称「DIYフレンズ」もお手伝いに加わり、ブナの木のフローリングを丁寧に剥がし、レトロなガラスの建具も保管しながら、壁や天井の内装を撤去していきました。

ここまでは静かなスタートでしたが、双子で大工の工藤厚樹さんと勇樹さんが来てからは一気にスピードアップ。外壁のモルタルまで解体すると、下から出てきた板がいい感じで、これも再利用しようと丁寧に剥がしてもらいます。

まずは健人くん夫婦で内装の撤去を進める。

大工の工藤兄弟が来てから一気に解体のスピードがアップ。外壁モルタルの下から出てきた板は再利用する。

間取り変更のため、要所で梁(はり)をかけ替える。真新しい梁はエイジングして着色し馴染ませる。

屋根は腐った軒先部分を切り落とし、新しく材を入れ替えて屋根の下地である野地板(のじいた)を張っていく。

 

続いて、家の骨格となる部分を整えていきます。無理に増築された押し入れ部分などを減築して引っ込めたり、土台や梁(はり)を入れ替えたり、老朽化したブロック煙突を解体したり、腐った屋根の軒先を切り詰めたり。

それと同時に平屋で三角屋根という構成や、出窓の空間など、この家の個性を伸ばしていく作業が最初の大事な仕事になっていきました。

外壁と屋根の下地まで完了して一服する、健人くん夫婦、大工さんの工藤兄弟、DIYフレンズの真崎麻理子さん、今智さん、武井弘さん。

外壁と屋根の下地まで完了して一服する、健人くん夫婦、大工さんの工藤兄弟、DIYフレンズの真崎麻理子さん、今智さん、武井弘さん。

土間の工事にも多くのDIYフレンズが手伝いに来てくれました。基礎の内側を掘って断熱材を入れるところから鉄筋を組むところまで、部分的に大工さんのレクチャーを受けながら進めていきます。DIYフレンズの今さんは土間コンクリートの打設のお手伝いまでしてくれました。

久美さんも仕事後に砂利のネコ押し作業。コツコツと作業を進める。

外壁モルタルも粉砕して砂利に混ぜてプレートで転圧。その上に砂を平らに敷いてさらに転圧。

土壌蓄熱暖房のサーマスラブのパネルを電気屋さんに敷いてもらい、また砂を敷いて防湿フィルムを敷いてから鉄筋を組む。大工さんから鉄筋の切り方を習い、みんなで鉄筋を組んでいく。

いよいよコンクリート打ち。今さんも駆けつけてくれた。

 

素材の再利用を重ねた空間

土間が固まると今度は内装を進めます。特にこだわったのは建具たち。居間の大きな窓には、この家から出てきた敷居や鴨居などの廃材を使い、大工さんに古木製サッシをつくってもらいました。

玄関ドアもリメイクです。市内の骨董屋さんで健人くんが買ってきたアンティークなドアのガラスを断熱ガラスに入れ替え、断熱材も入れました。元の玄関に使っていた引戸は、お母さんの部屋と脱衣場の間に再利用。市内の解体現場でもらったアンティークなドアも、ドアに合わせた枠をつくって再利用しています。

この家で使われていた敷居や鴨居などを再利用して、古木製サッシのフレームを組む。敷居や鴨居はいい材料が使われているので、こうした再利用は意外と適材適所といえる。

この家で使われていた敷居や鴨居などを再利用して、古木製サッシのフレームを組む。敷居や鴨居はいい材料が使われているので、こうした再利用は意外と適材適所といえる。

右の4枚は、健人夫妻と一緒に駅前の解体現場からもらってきたもの。白いものは元の玄関ドア。ほかは市内のガレージショップ〈太陽〉で買ってきた。

右の4枚は、健人夫妻と一緒に駅前の解体現場からもらってきたもの。白いものは元の玄関ドア。ほかは市内のガレージショップ〈太陽〉で買ってきた。

大工さんが壁と天井の下地を組んで断熱材がパンパンに入ったら、自分たちで防湿フィルムを張り、石膏ボードや合板を切って張っていきます。天井には、外壁のモルタルの下地に使われていた荒板を再利用。板を洗って乾燥させたら大工さんに張ってもらい、あとを追いかけるようにみんなで釘打ちします。

お母さんの部屋と脱衣場には、土間の上に木で床を組んでもらい、足触りのいい道南杉を張っていきました。

工藤兄弟が下地まで組んでくれ、その上に壁の石膏ボードを張っていく。久美さんがボードをカット。DIYフレンズの今さんと、小幡恭子さんが釘打ち。

道南杉の床板を久美さんが切っては、健人くんと真崎さんで張っていく。この板はフローリング材ではなく、野地板という屋根下地に使われる安価な部分にカンナがけしたもの。

内装の珪藻土の塗り壁には、近所の子どもたちも参加。健人先生のコテさばきに見入る。

 

もともと居間の床板に使っていたブナのフローリングは、健人くん夫婦の居間の壁に再利用しました。

また、夫婦側の居間、寝室、トイレにかけて、部屋の上部にはキャットウォークを巡らせています。壁にキャットステップをつけ、ドアには犬用の窓をつけて、上は猫、下は犬とそれぞれの動線を分けました。健人くんの遊び心で、キャットステップには水道管などに使う銅管や昔の琺瑯(ほうろう)のボウルなどを組み合わせています。

工事の最後にはコンテナを搬入しました。ここは健人くんの趣味である写真の現像部屋として使われます。

こうして約8か月かけた工事は、無事に終わりを迎えました。

お母さん(左)のキッチンのタイル貼りには、お母さん自ら体をのり出して参加。真崎さん(右)もお手伝い。

キッチンの上のほうは健人くんと真崎さん、鈴木葉子さんが貼ってくれた。お母さんは監督さんとして見守る。

トイレと居間をつなぐキャットウォークを、寝室と書斎とクローゼットの壁の上に這わせながら、その下には水道管を這わせたり、中継地点にはキャットステップをつけたり。

健人夫婦の居間。壁にモルタルを塗った上から、自ら絵の具でエイジングペイント。

健人くんと買いつけに行って選んだコンテナ。窓や勝手口をつけてもらい、ペンキで家と同じ白に仕上げてもらった。

 

2018年10月に完成! DIYフレンズをご招待して、完成お披露目会を行いました。

2018年10月に完成! DIYフレンズをご招待して、完成お披露目会を行いました。

ニャンコちゃんもお引越し。小窓から顔を見せる。この向こうが健人くん夫婦の寝室。

ニャンコちゃんもお引越し。小窓から顔を見せる。この向こうが健人くん夫婦の寝室。

ケントハウスの完成!

引っ越しも終わった翌年すぐのことです。健人くんはフォトグラファーとして独立し〈FOLPHOTO〉を立ち上げました。16歳と若くして白血病を患い骨髄移植をした自身の経験によって芽生えた「いろんな人の人生の足跡を撮っていきたい」という思いからの独立でした。自宅の居間部分を簡易スタジオへと変身させ、多くの人の足跡をみんなの記憶に残る写真や映像として撮り続けています。

そんな健人くんがその後の自身の暮らしを撮影してくれました。その写真の数々を最後にどうぞ。

リノベから4年が経った外観。(写真提供:FOLPHOTO)

リノベから4年が経った外観。(写真提供:FOLPHOTO)

家に合わせて白く塗られたコンテナの仕事部屋。テラス側(向かって右の側面)に勝手口と窓がある。(写真提供:FOLPHOTO)

家に合わせて白く塗られたコンテナの仕事部屋。テラス側(向かって右の側面)に勝手口と窓がある。(写真提供:FOLPHOTO)

健人夫婦の居間。壁には元の居間のフローリングが貼られ、窓はこの家の元の敷居など古材でサッシをつくっている。ニャンコちゃんたちがゴロゴロと日向ぼっこを楽しむ空間。(写真提供:FOLPHOTO)

健人夫婦の居間。壁には元の居間のフローリングが貼られ、窓はこの家の元の敷居など古材でサッシをつくっている。ニャンコちゃんたちがゴロゴロと日向ぼっこを楽しむ空間。(写真提供:FOLPHOTO)

お母さん側の居間には、趣味のドライフラワーや大好きな篭などが吊るされている。右側にはお母さんの小さな寝室がある。(写真提供:FOLPHOTO)

お母さん側の居間には、趣味のドライフラワーや大好きな篭などが吊るされている。右側にはお母さんの小さな寝室がある。(写真提供:FOLPHOTO)

アンティークドアを断熱仕様にリメイクした両開きの玄関ドアは内装工事や家具製作をする〈BRANT&SONS〉に依頼。(写真提供:FOLPHOTO)

入口のドアは解体されてしまった古民家から引き継いだもの。ドアの枠もこの家から出てきた古材でつくっている。(写真提供:FOLPHOTO)

健人くん夫婦の寝室横にある久美さんの書斎スペース。ニャンコちゃんたちを常に眺めることができる猫愛満載の場所。(写真提供:FOLPHOTO)

寝室の上はロフトになっており、階段下には健人くん夫婦のミニキッチンが収まっている。(写真提供:FOLPHOTO)

クローゼットの一角にあるキャットタワー。右のドアが居間へ通じ、左のドアは健人夫婦側のトイレにつながっている。(写真提供:FOLPHOTO)

健人くん夫婦側のトイレの手洗いは、昔のストーブや琺瑯のボウルを使って。 キャットステップには銅管を使用。(写真提供:FOLPHOTO)

テラスから見た、工藤くん作の古木製サッシ。ここから猫が顔を出す。(写真提供:FOLPHOTO)

 

DIYフレンズと家族総出でつくり上げた健人くん一家の素敵な暮らしが、1枚1枚の写真から伝わってきますね。

次回にお届けするのは、古ビルを引き継いで、函館のまちのためにできることを模索する、僕自身のお話です。

富樫雅行

Masayuki Togashi

とがし・まさゆき

1980年愛媛県新居浜市生まれ。2011年古民家リノベを記録したブログ『拝啓 常盤坂の家を買いました。』を開設。〈港の庵〉〈日和坂の家〉〈大三坂ビルヂング〉で函館市都市景観賞。仲間と〈箱バル不動産〉を立ち上げ「函館移住計画」を開催し、まちやど〈SMALL TOWN HOSTEL HAKODATE〉を開業。〈カルチャーセンター臥牛館〉を引き継ぎ、文化複合施設として再生。まちの古民家を再生する町工場〈RE:MACHI&CO〉を開設。さらに向かいの古建築も引き継ぎ、複合施設〈街角NEWCULTURE〉として再生中。地域のリノベを請け負う建築家。http://togashimasayuki.info

credit

編集:中島彩

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