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楽器の町で、美しすぎるスピーカーのために設計された珈琲紅茶専門店とは?

  • 2022年10月20日
  • コロカル

音楽好きコロンボとカルロスがリスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは静岡県浜松市。

「Listen & Love」スピーカーの圧倒的な存在感

カルロス(以下カル): うわー、なんとも甘美なスピーカー!

コロンボ(以下コロ): ドイツのアヴァンギャルド・アコースティック社の〈avangarde trio〉+〈6 basshorn〉というスピーカーシステムなんだ。オーナーの矢野裕理さんが一目惚れしたんだって。

カル: モダンでメンフィス・デザインのようでいて、エレガント。楽器みたいな官能的なカーブだね。圧倒的な存在感で、まさにスピーカーのためにつくられたようなお店。

コロ: その通りなんだよ。ブルックリンスタイルのレンガの壁から、吹き抜けの天井、すべてスピーカーありきの設計で、スピーカーの色の塗装までオーダーしたらしい。

カル: クルマにある色ならなんでも可能なんでしょう? ジャガー・グリーンでもランボルギーニ・オレンジだろうと。

コロ: そうなんだ。さすが「Listen & Love」をブランドイメージとして標榜するだけある。

CD世代のオーナーの矢野裕理さんはレコードでの初めての体験は「裏があるんだ」と驚いたことだと。

CD世代のオーナーの矢野裕理さんはレコードでの初めての体験は「裏があるんだ」と驚いたことだと。

スピーカーの塗装の色はクルマにある色ならすべて可能だとか。

スピーカーの塗装の色はクルマにある色ならすべて可能だとか。

 

カル: 実際、鳴りはどうなの?

コロ: ピュアでしなやか。まるで魔法をかけたようにスリリングで繊細な音なんだ。サイズは大きいけど、細かい音がとてもクリアで、爆音でなくとも引き込まれちゃう。小さい音でも細胞が揺さぶられるから、へんなマッサージより、セラピーになるってさ。

カル: リラックスし過ぎて、寝ちゃう人もいるだろうね。寝られちゃう音楽はいい音楽ってことでもあるけど。

コロ: 喫茶店っていっても、リスニングスペースはホールみたいな造りだし、カリモクのチェアは座りやすいし、余計にかも。

カル: 〈トゥルネラパージュ〉ってお店の名前、覚えにくいけど。どんな意味?

コロ: フランス語で「ページをめくる」、リフレッシュするって意味の慣用句でもあるんだ。覚えにくい名前をつけることで、覚えたとき、常連になった気にさせるって、矢野さんの企みもあるみたい。

カル: たしかに覚えにくいって感じた自分はまんまと罠にハマってるかも(笑)。壁に飾られたレコードはビル・エヴァンスとセロニアス・モンクばかりだけど。

壁に飾った面出しのレコードたち。この日はビル・エヴァンスとセロニアス・モンクの作品ばかり。

壁に飾った面出しのレコードたち。この日はビル・エヴァンスとセロニアス・モンクの作品ばかり。

知り合いからいただいた5000枚のレコードがオープンのきっかけとなった。

知り合いからいただいた5000枚のレコードがオープンのきっかけとなった。

 

コロ: 「ハママツ・ジャズ・ウィーク」が10月23日まであって、それを記念してってことらしい。さっきも、お客さんが壁のレコードからモンクの『Monk’s Music』を選んでリクエストしていた。

カル: とてもきっちりしたアルバムだから浜松の感じにぴったりな気がするね。

コロ: 浜松のお客さんはおとなしくて、拍手が少ないとか言われたりするらしいけど、それはちょっと心外だって(笑)。面出しのレコードはアーティスト別だけでなくて、クリスマスカラーだったり、タバコを吸っている写真ばかりになったりと、季節季節で変わるらしい。

オープンして18年。機材はほとんど変わっていない。ターンテーブルは名機〈AVID acutus〉。

オープンして18年。機材はほとんど変わっていない。ターンテーブルは名機〈AVID acutus〉。

オーディオのエンジン部分は〈Accuphase〉がメイン。

オーディオのエンジン部分は〈Accuphase〉がメイン。

 

カル: 基本、かけるレコードはジャズなんでしょう?

コロ: そうだね。でも雨の日はなんでもリクエストしていいんだって。蒸気機関車の汽笛の音とか、効果音ばかりの日もあるんだって。

カル: それ行きたいな。ひぐらしの鳴き声なんて、ちょっとしたオーケストラ。

コロ: それと奇数月の第3金曜日の夜はキャンドルナイトといって、テーマに沿った選曲のイベントがあるらしい。次(11月18日)のイベントは「90’s Female Artists」。

カル: 90年代の女性アーティストというと誰だろう?エンヤ? セリーヌ・ディオン?

コロ: カルロス的にはローリン・ヒルとかじゃない?

うっすらと流れていたウェス・モンゴメリーの『California Dreaming』。弦との相性がことのほかいい。

うっすらと流れていたウェス・モンゴメリーの『California Dreaming』。弦との相性がことのほかいい。

カル: コーヒーもスピーカー並みにこだわってるって評判なんだよね。

コロ: ブラジルから生豆を仕入れて、焙煎も自分の所でやっているんだ。トレサビリティもしっかりしている。コーヒーもオーディオ同様にクリーンな味わい。ごちそうになったんだけど、ちょうどかかっていたウェス・モンゴメリーの「SUNNY」とばっちりシンクロしちゃった。粒立ちといい、透明感といい。

カル: オーナーはあのスピーカー、弦楽器の曲によく合うって言ってたらしいけど、コーヒーとも合うんだね。おまけに自家製のバスクチーズケーキもスピーカー同様リッチな味わいなんでしょう。

コロ: そうそう、お塩と胡椒で食べるんだけど、最高!

カル: まさに「形は機能に従う」ってお店だね。

「トゥルネラパージュ」とは気分転換、リフレッシュするという意味が。

「トゥルネラパージュ」とは気分転換、リフレッシュするという意味が。

ブラジルから直で仕入れる、豆からこだわり抜いたコーヒーもファンが多い。

ブラジルから直で仕入れる、豆からこだわり抜いたコーヒーもファンが多い。

 

information

Tournez La Page トゥルネラパージュ

住所:静岡県浜松市中区板屋町628 Y3ビル1F

電話:053-455-7100

営業時間:13:00〜19:00(金・土曜〜21:00)

定休日:月・火曜、不定休

Web:Tournez La Page

 

【SOUND SYSTEM】

Speaker:avantgarde trio + 6 basshorn

Pre Amp:Accuphase C-2800

Power Amp:Accuphase A-60

Turn Table:AVID acutus

CD player:ESOTERIC UX-1

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

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