まちの名産を使った郷土料理は地元の人はもちろん、訪れた旅行者の楽しみのひとつ。
その土地の名産を使ったご当地グルメは昔ながらの郷土料理からB級グルメと呼ばれるものまで多種多様。ネットショップでも手軽に購入できますが、せっかくなら産地ならではの調理法や食べ方をしたいもの。
そこで今回は地域の食材を生かした常備菜を〈地域おこし協力隊〉のみなさんに教えてもらいました。
日持ちもして調理法も簡単。つくり置きして保存できる常備菜はまちの「家庭の味」といえます。たくさんつくってそのまま食べてもよし、アレンジしてもよしの便利な料理ばかりなので食材をお取り寄せしてお試しあれ。
秋田県にかほ市はそばの産地。夏には、あたりにそばの白くて可憐な花が咲き誇ります。
そば粉はこの「そばごめ」と呼ばれる「タネ」の部分を挽いて製粉しますが、「タネ」をまるごと食べるのがこの地域の文化。殻をとってゆでで、麺つゆや出汁をかけて食べるのは「むきそば」という郷土料理です。
それ以外にも、ゆでたそばごめを冷凍保存し、味噌汁に入れたり、和え物にしたり、煮物に添えたりと、何にでも万能に使える常備菜です。
こちらは、麺つゆで和えたなめことそばごめを混ぜたもの。
つぶつぶとした食感がとてもおいしく、また栄養たっぷりなスーパーフードなんですよ。
そばの産地ならではの贅沢な常備菜です。
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國重咲季 くにしげ・さき
京都府出身。秋田県の大学に進学したことを機に、東北各地の1次産業の現場を訪ねるようになる。卒業後は企業に勤めて東京で暮らした後、にかほ市で閉校になった小学校の利活用事業「にかほのほかに」に携わるべく秋田にAターン。地域で受け継がれてきた暮らしを学び、自給力を高めることが日々の目標。夢は食べものとエネルギーの自給自足。
私が暮らす岡山県浅口市鴨方町は手延べ麺のまち。先月は伝統の手延べ麺づくりを守る地域のルールを紹介しましたが今回は、地元でよく食べられている「バチ」とその食べ方を紹介します。
「バチ」とは、手延べ麺づくりの工程で生まれる麺の切れ端のこと。端が広がった形状が、三味線など弦楽器の弦をはじく「バチ」に似ていることからそう呼ばれているのだそうです。
バチは手延べ麺工場の直営店などで袋に入って販売されています。ふつうの麺に比べて短く、大量に入ってお買い得。普段使いの麺として人気です。
長さが短いのでゆでるときに鍋に入れやすく、束になっておらず好きな量だけ使えるのもポイント。
味噌汁に入れるほか、ゆでたバチをお好み焼きにする「バチおこ」というアレンジメニューもあります。
アレンジメニュー「バチおこ」。
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こばん
大阪府出身。〈カブ〉で旅するフォトライター。全国各地を愛車と旅する様子をインスタグラムに投稿するのが趣味。フォトジェニックな「星と海のまちあさくち」に一目惚れし、2017年5月、岡山県浅口市地域おこし協力隊に着任。浅口の魅力を取材し、紙面やWEB、SNSで発信中。
「あさづけ」皆さんはこの名前を聞くと、何を想像しますか?きゅうりやなすなどを塩で揉みこんだ漬物を想像する方が多いと思います。
秋田の「あさづけ」は、夏の常備菜。定番の郷土料理です。
こちらが秋田の「あさづけ」。
気がつきましたか?秋田の「あさづけ」の正体は漬物ではありません!お米を原料にした甘酸っぱい夏バテ防止の食べ物です。
ひと口目は誰もが驚く味なのですが、食べてみると、なぜか3口目くらいから病みつきに。トッピングには缶詰みかんや生のキュウリやイチゴなどが添えられることが多く、つくって常備されている家庭もあれば、買ってきておくことも。米どころ秋田ならではの料理ですよね。
つくり方は簡単。お米でスムージーをつくるようなイメージです。
【材料10人前】米…1合水…6カップ★酢…120cc★砂糖…200g★塩…隠し味程度みかんの缶詰、きゅうり、イチゴ、パイナップル、キウイフルーツなどお好きな野菜や果物
【つくり方】1 米を軽く洗ってひと晩水につける。2 1 をザルにあけて、米と水1カップをミキサーにかける。3 大きめの鍋に2 を入れて水5カップを足し、中火にかける。 (焦げないよう火加減を調整しながらかき混ぜてください)4 全体がお粥状になったら★の材料を加え、木べらで混ぜる。 沸々と煮えてきたら器に盛り付けてお好きな果物と野菜のトッピングして完成。
料理に添えて箸休めに食べることもあれば、おやつや休憩のお供として食べることもあります。
どんな味か想像できますか?病みつき常備菜ですので、ぜひおうち時間でつくってみてくださいね。
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重久 愛 しげひさ・いつみ
「死ぬまでには一度は行きたい場所」で知られる鹿児島県与論島出身。2019年に縁あって秋田県秋田市にIターン。よそ者から見た秋田市の魅力や移住に至る経験を生かして、秋田市の地域おこし協力隊に着任。YOGAを生かした地域交流を図る事業や、移住者を受け入れる市民団体事業をプロデュース中。山菜採りにすっかり夢中に。自称「立てばタラの芽、座ればバッケ、歩く姿はコシアブラ」。
writers profile
Saki Kunishige, Koban, Itsui Shigehisa
國重咲季/こばん/重久 愛