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32年間、ありがとう。福岡天神〈イムズ〉が8月末閉館へ

  • 2021年8月25日
  • コロカル

情報受発信基地、イムズ

福岡市の進める都心部の再開発計画に伴い、この夏、ひとつの商業施設が幕を閉じます。

Inter Media Stationの頭文字をとって名づけられた〈IMS(イムズ)〉は、平成元年の1989年4月12日に開業。「情報受発信基地」として32年間、福岡天神の街に存在感を放ち、多くの人々に愛されてきました。

黄金のタイルを使用した豪華な外装や個性的な内装はいまでも廃れることなく、天神のビル街で異彩を放っています。

黄金のタイルを使用した豪華な外装や個性的な内装はいまでも廃れることなく、天神のビル街で異彩を放っています。

福岡市民だけではなく、開業当時は九州各地から多くの人々がイムズを目指して押し寄せたそう。JR九州の特急列車で長崎や熊本方面から福岡にショッピングに来ていた人たちは「かもめ族」や「つばめ族」と呼ばれ、社会現象にもなったといいます。

最先端のショッピング、演劇やアートを観賞できる文化的なホールやギャラリー。足を運べば常に新しいものに出合えるイムズは、単なる商業施設の枠には納まらない、“クリエイティブな精神”が息づく場所。訪れるたびにワクワクを感じられる、福岡天神のアイコン的施設なのです。

グランドオープン時の貴重な写真

グランドオープン時の貴重な写真。テープカットには女優の山口智子さんが。九州初のスパイラルエスカレーターも話題に。(提供:イムズ)

89年のイムズ芸術祭の広告。

89年のイムズ芸術祭の広告。イムズから発信される「時代に向けたメッセージ」に、刺激を受け心を揺さぶられた人は多いだろう。

記念すべきイムズ開業の記事。

記念すべきイムズ開業の記事。「若者福祉のパラダイス」というキャッチコピーを携えて、華やかにオープン、福岡の新しい時代が始まりました。

芝居やコンサート、トークショーなどのイベントを盛大に開催

前夜祭を含め29日間連続で、芝居やコンサート、トークショーなどのイベントを盛大に開催。この年の来場者数は約1600万人だったそう。熱狂が伝わります。

コピーライターの眞木準氏、前田知巳氏によって手掛けられた「言葉を軸」にした心に残る広告

歴代のイムズ広告。右上から左下へ順に、89’/オープニング、02’/新年、02’/サマー、09’/新年。コピーライターの眞木準氏、前田知巳氏によって手掛けられた「言葉を軸」にした心に残る広告ばかり。『イムズのきもち』(枻出版社)より。

 

イムズは創業から、常に斬新で時代を見据えたコンセプトを発信し続けています。博多祇園山笠など古くからの伝統も残る福岡で、モダンで都会的な文化面を象徴していたのがイムズ。

広告のコピーなどを通じて若者たちへ投げかけられた言葉は、今も色あせることない力強いメッセージを放っています。

「文化に投資すること」を惜しまなかったイムズから、長い月日を経て大きなプレゼントを受け取ることのできた私たちは、心からの感謝しかありません。

イムズで働く、イムズを想う

地下2階から14階までイムズにはさまざまなテナントが入っています。イムズで働く方々の声を集めてみました。

KIRIN SOW-SOW(12階)

12階のレストランフロアにある〈KIRIN SOW-SOW〉。

12階のレストランフロアにある〈KIRIN SOW-SOW〉。

〈KIRIN SOW-SOW〉は厳選された素材を使った創作料理を堪能できるビアダイニング。落ち着いた内装と接客で、ここへ来ると大人びた雰囲気を味わうことができました。思い出のある利用客も少なくないはず。

アルバイトから同店で働き始め、思い入れも人一倍の店長の納富泰祐さん。

アルバイトから同店で働き始め、思い入れも人一倍の店長の納富泰祐さん。

お会計のレジでお客さまに声をかけられると、笑顔でお店の思い出を話されていた納富店長。残りわずかな営業のなか、訪れたお客さまと従業員さんとで交わされる会話、寂しさと喜びの入り混じった光景が印象的でした。

ぜひシェフ自慢の逸品「赤パエリア」などおいしい料理を楽しんでほしいです!

 

H.P.DECO 好奇心の小部屋(1階)

福岡の〈H.P.DECO 好奇心の小部屋〉〈H.P.FRANCE Boutique〉〈Usagi pour toi H.P.FRANCE〉の3店舗の店長兼バイヤーの森典子さん。

福岡の〈H.P.DECO 好奇心の小部屋〉〈H.P.FRANCE Boutique〉〈Usagi pour toi H.P.FRANCE〉の3店舗の店長兼バイヤーの森典子さん。

フランスの輸入雑貨をメインにかわいらしいファッションやインテリアを揃える〈H.P.DECO 好奇心の小部屋〉。イムズの1階入り口に、系列の3店舗を構えます。

「私たち〈アッシュ・ぺー・フランス〉はクリエイションが人を豊かにすると信じています。モノだけでなく、アーティストのクリエイションを大事にしながらアート感のある暮らしを表現しています。 クリエイターの想いを私たちがつなぎ、お届けすることでお客さまの生活がより豊かなものになればうれしいです」と話してくれた森さん。

左から、H.P.FRANCEスタッフの立山さん、南部さん、大浦さん、山内さん、森さん。

左から、H.P.FRANCEスタッフの立山さん、南部さん、大浦さん、山内さん、森さん。

長年通われるお客さまも多く、閉店を告知してからは毎日のように足を運んでくださる方もいるそう。「なくなるのが寂しい」と言われる日々とのことですが、森さんは「お客さまに逆に教えていただきました」と笑顔。

スタッフのみなさんも和気藹々、素敵なお店づくりをされていることが伝わってきました。

 

イムズインフォメーション(1階)

左からインフォメーションの小田原さとみさん、原田真梨子さん。笑顔が眩しいです!

左からインフォメーションの小田原さとみさん、原田真梨子さん。笑顔が眩しいです!

「イムズに勤める前から、天神地区では珍しい高層ビルを生かした吹き抜け空間やイムズレディの斬新な制服が印象的で、天神に来たときにはよく立ち寄っていました。憧れのイムズで最後のインフォメーションの一員として閉館を迎えることができることを大変光栄に思います」と話す原田さん。

イムズ正面玄関を入ってすぐにお客さまを出迎えてくれるインフォメーションは、ざまざまな困りごとや要望に応えてくれる、まさにイムズの顔!

「イムズインフォメーションは、お客さまから直接『ありがとう』という言葉を毎日受け取ることができる、本当にやりがいのある仕事です。お客さまのイムズへの思いを直接伺えるのもこの仕事の特権。

閉館することはとても寂しいですが、特にコロナ禍の今、多くの方が辛く悲しい思いをされていると思いますので、少しでも皆さまへ笑顔を届けることができるよう歴史あるイムズで最後まで明るく笑顔でお客さまに寄り添った接客でお出迎えしたいと思います」(原田さん)

「8月31日、イムズが32年の歴史に幕を下ろす瞬間まで、皆さまと共にたくさんの思い出をつくっていけたら、私共は大変うれしく思います。イムズは最後まで全力で走り続けます」(インフォメーション一同)

イムズで働く人それぞれの思いを胸に。最後の日まで、私たちをあたたかく迎えてくれることでしょう。

三菱地所アルティアムで「最後の展覧会」開催中

本展メインビジュアル

本展メインビジュアル

イムズに来たら一度は訪れてほしい場所が8階の〈三菱地所アルティアム〉です。

現在、「最後の展覧会」が好評開催中。

『絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。』

■展示会日時2021年7月14日(水)〜8月31日(火)10:00〜20:00 ※最終日は19:00まで会期中休館日なし

■入場料一般:400円  学生:300円 高校生以下無料

■出品作家 塩田 千春/淺井 裕介/潘 逸舟/津田 直/山内 光枝/鹿児島 睦/最果 タヒ

過去にアルティアムで展示し、さらなる活躍を続ける7名によるグループ展が行われています。

三菱地所アルティアム。現代アートや地元の若手アーティストなどが活躍できる機会を数多く創出してきた、福岡を代表するアートギャラリーです。

三菱地所アルティアム。現代アートや地元の若手アーティストなどが活躍できる機会を数多く創出してきた、福岡を代表するアートギャラリーです。

写真集やアーティストグッズなどを販売するショップも併設しています。ポストカード一枚を買うにもわくわくしたもの。

写真集やアーティストグッズなどを販売するショップも併設しています。ポストカード一枚を買うにもわくわくしたもの。

三菱地所アルティアムのディレクター・早渕亮平さん。

三菱地所アルティアムのディレクター・早渕亮平さん。

「絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。」

このタイトルは出品作家のひとり、最果タヒさんが、本展に寄せて書き下ろした「絶滅」という詩の一文です。

ディレクターの早渕さんは、「最果タヒさんの詩を読んでもらうと、『絶望』や『死』といったワードが一見センセーショナルなのですが、何度も読むうちに解釈が変化していきます。鑑賞者にはこの詩の持つ意味を自由に感じ、受け止めてほしい。ここで終わりじゃないよ、というメッセージも参加アーティストからいただきました。閉館はひとつ区切りにはなりますが、ここで得た体験をアルティアムがなくなった後でもみなさまの生活の一助としていただければと思います」と伝えてくださいました。

潘 逸舟「where are you now」/山内 光枝「潮汐 2012 -- 2021」/鹿児島 睦「鳥」 三菱地所アルティアムでは、2016 年「Local Prospects 2 アイデンティティ」に出品(潘)、2015年「Local Prospects-海をめぐるあいだ」に出品(山内)、2017年「鹿児島睦の図案展」(鹿児島)を開催。

淺井 裕介「Fllowing the last breath」 会場の床を削って作られた作品。イムズ館内エスカレーター脇のガラス面にも作品が描かれており、最後まで来場者を楽しませてくれます。三菱地所アルティアムでは2010年「淺井裕介 ショッピング」を開催。

塩田 千春「大陸を越えて」 赤い糸と靴を用いたインスタレーション。三菱地所アルティアムでは2012年に「塩田千春 他者である私」を開催。

津田 直「やがて、鹿は人となる/やがて、人は鹿となる」 三菱地所アルティアムでは2018年に「津田直 エリナスの森」を開催。

最果タヒ「絶滅」 三菱地所アルティアムでは2020年に「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」を開催。

 

アルティアムでは、今回の最後の展覧会が333回目の企画だということで、これまで数多くの作家さんが関わってこられたことがうかがえます。

ウェブ上では「From the Artists」と題し、アルティアムに関わったアーティストみなさんからのコメントが当時の展示風景とともに紹介されています。

詳しい情報は、こちらのアルティアム公式HPをご覧ください。

左から、アルティアムの井上野花さん、アルティアム併設のアートショップ〈ドットジー〉齊藤このみさん。

左から、アルティアムの井上野花さん、アルティアム併設のアートショップ〈ドットジー〉齊藤このみさん。

アルティアムは時代を表す多様な芸術表現や、地元作家、独自の思想を打ち出すアーティストの個展を後押ししてきた稀有なギャラリーです。福岡だけでなくアジアにとって、アートや文化発信拠点のひとつとしてなくてはならない存在でした。

「幅広いジャンルの作家や作品との出会いの場として、アルティアムを訪れることで、来場者の日常がより豊かなものになればと思っております。アルティアムは8月末で閉館しますが、来場者の皆さまがここで得た体験や記憶が長く心に留まることを願っております」と広報の井上さん。

1989年の開館以来、“時代の新しい表現”を紹介する場所として、美術、デザイン、建築、文学、映画、演劇、ファッション、食など、幅広いジャンルの展覧会を開催してきたアルティアム。

最後の展覧会をお見逃しなく!

Good bye IMS, Good luck IMS!!

Good bye IMS, Good luck IMS!! 2021年8月末閉館する福岡天神〈イムズ〉。

イムズは流行の先を見つめ、“とがった感性”で好奇心旺盛な若者たちを引っ張り、福岡や九州の一時代を盛り上げる役目を担ってきました。

文化を自分たちの手で創りあげ、地域発展を促しクリエイションへのあくなき情熱をさまざまなカタチで示してくれたイムズ! 人々の交流の場として楽しい時間をもたらしてくれたイムズ!

なくなる寂しさはありますが、それ以上に懐かしさやイムズで過ごした思い出が心に残っている人も少なくないのではないでしょうか。

イムズ営業日も残りわずか。

光り輝く吹き抜けを見上げて目に焼きつけるもよし、近未来的なエレベーターに乗って童心に帰るもよし。足を運べなくても、家族や友人で話題にしみてはいかがでしょうか?

イムズはおわる、イズムはつづく。

32年間、ありがとう。

最後の日までイムズを応援しています!

information

イムズ  Inter Media Station IMS

住所:福岡県福岡市中央区天神1-7-11

TEL:092-733-2001

営業時間:10:00~20:00 ※8月31日(火)は店舗営業時間10:00〜19:00

information

三菱地所アルティアム

住所:福岡県福岡市中央区天神1-7-11 イムズ8階

TEL:092-733-2050

営業時間:10:00~20:00 ※最終日は19:00まで

writer profile

Mayo Hayashi

林 真世

はやし・まよ●福岡県出身。木工デザインや保育職、飲食関係などさまざまな職種を経験し、現在はフリーランスのライターとして活動中。東京から福岡へ帰郷し九州の魅力を発信したいとおもしろい人やモノを探しては、気づくとコーヒーブレイクばかりしている好奇心旺盛な1984年生まれ。実家で暮らす祖母との会話がなによりの栄養源。

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