こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
夏休みもあと半分。自由研究どうしよう? と思っている方へ、“灰でつくる世界最古の洗剤”をテーマにしてみてはいかがでしょう?
普段から湧き水を利用し、下水道もない我が家では、自分たちが使った洗剤はそのまま畑や田んぼに流れ、野菜や米にダイレクトに影響します。そのため、我が家では洗剤も自然から手づくり。
今日は、紀元前から汚れを落とすために使われていたという“灰”のアルカリ洗剤をつくってみたいと思います!
「灰が手に入らない」という方は、蚊とり線香の灰でもOK! 暖炉や薪ストーブを使っている知人や、近隣に石窯ピザのお店などがあれば、灰をわけてもらえないか相談してみるのもひとつの手。
アウトドアやキャンプでの食器洗いなどにも活用できるこの技術、覚えておけば、いざというとき役に立ってくれるかもしれません。
庭のピザ窯の隣に置いてある、灰の保存用バケツ。この灰を使います。
汚れを石鹸に変える!? “灰”のアルカリ洗剤石鹸は、古代の「祈りの儀式」から偶然誕生したといわれています。羊を焼いて神にささげる文化のあった古代ローマで、焼かれた羊から落ちた「脂」と、燃やした「木の灰」が混ざって土にしみ込み、石鹸が誕生したといわれています。ここから「汚れが落ちる土がある」と人から人へと伝わり、暮らしに浸透していったのだそう。
この話にあるように、アルカリ性を示す灰と油脂が反応すると「鹸化(けんか)」という化学反応が起こって、一種の石鹸をつくり出します。
洗濯の場合、服についた皮脂汚れがアルカリと反応すると、皮脂汚れは「汚れ」ではなくなり、一種の石鹸になります。石鹸となった皮脂は、今度は周りの汚れまで洗い流してくれるため、ダブルの効果で皮脂汚れを落とすといわれています。
灰洗剤で水垢がピッカピカになったボウル。ここまでくると掃除が楽しくなってきます。
江戸時代では、灰は農業用肥料・洗剤・染料・アク抜き・傷薬として暮らしに欠かせないものでした。各家庭のかまどに残った灰を買う「灰買い業者」や、灰を売買する「灰市」、さらには「灰の問屋」もあったというのだから驚きです。
我が家でも、薪ストーブや床暖房オンドルで焚いたときの灰があるので、それを使います。昔の人々の暮らしに想いを馳せながら、洗剤を自分で「手づくり」してみましょう。
<準備するもの>・灰
・お湯を沸かす鍋
・ステンレス製のボウルとお玉
・ゴム手袋
・つくった洗剤を入れるビン2本
・(あれば)キッチンペーパー、じょうご
※灰は強アルカリのため、アルミ製のものは溶けてしまうので使わないでください。
※皮膚も溶けます。肌の弱い方はゴム手袋を使用してください。
※目や口に入らないように十分注意して行ってください。
<灰洗剤と研磨剤のつくり方>左が研磨剤、右が灰洗剤。
(1)ステンレスボウルに灰を入れ、沸騰したお湯(灰の倍ぐらいの量)を回しかける
(2)灰と水分が分離するまで置いておく。早く使いたい人は分離したらすぐに使える。濃度を濃くしたい人は、2〜3日ほど置いておくとよい
(3)上澄みをすくってビンに入れる。この液体が「灰洗剤」になります!
(4)ボウルに残ったペースト状の灰は、別のビンに保存し、研磨剤として使う
じょうごとキッチンペーパーで濾すと、さらにきれいな仕上がりに。
強力なアルカリ洗剤なので、素手で触るととろりと皮膚が溶ける感覚がします。原液は取り扱い注意! 日常用は水で薄めて使います。お湯を使うと効果が上がるので、しつこい汚れにはお湯洗いも試してみてください。
アルカリ度数を測ってみよう!さて。この灰洗剤はアルカリ度数いくつくらいなのでしょう。
アルカリ度数を測るためには、pHチェッカーを使用します。pHの数値は0〜14まであり、0に近づくほど酸性の性質が強く、中央値の7を中性とし、14に近づくほどアルカリ性の性質が強いといわれます。
なんとマックスのpH14! かなりの強アルカリ洗剤がつくれちゃいました。使うときは必ず手袋を。
ちなみに洗剤のpH値が6〜8だと中性洗剤、pH値8〜11が弱アルカリ性洗剤、pH値が11を超えるものがアルカリ性洗剤と、家庭用品品質表示法で規定されています。
汚れた洋服などを薄めた灰洗剤につけ置きしておくと、皮脂汚れ(脂肪酸)がアルカリと反応して「石鹸」に変化します。そのときのpH値はどうなっているのか、チェッカーで調べてみてもおもしろいかもしれませんね。
食器カゴの水垢も、びっくりするくらいピッカピカに。
ピカピカになり過ぎて鏡みたいになっちゃいました。
キッチン周りの掃除や、食器洗い、洗濯にも灰洗剤の原液は強力すぎるので、用途に合わせて薄めて使います。
基本の濃度は、水500ミリリットルに小さじ1杯の灰洗剤を入れ、スプレーボトルに入れておきます。慣れてきたら汚れ具合に合わせて10〜30倍に薄めて使ってください。
ガスコンロ周りの油汚れは、高濃度の灰洗剤を吹きかけてしばらく置くと油が剥がれて浮き上がってきます。さっと拭きとって終了!
汚れがふわっと浮き上がります(汚くってごめんなさい)。
浮いてきた油をさっと拭いただけ。こすらずきれいになりました。
灰の研磨剤は、頑固な油汚れに。油汚れのひどい場所に直接塗るか、ウエスなどで包んでこすると◎。 手荒れを防ぐため、使うときはゴム手袋を使用してください。
洗濯には、30リットルの水に灰洗剤大さじ1杯程度を入れて洗います。水によく溶け、すすぎも1回で十分。お水の節約にもなります。
汚れが気になる部分には、15倍に薄めた灰洗剤をスプレーして洗うとよく落ちます。服についた皮脂汚れがアルカリ洗剤と反応して鹸化し、汚れが汚れを落としてくれるので、つけおき洗いが一番効果あり。
ぜひ試してくださいね!
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CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森