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新しいキャンプのかたち?キャンプブームの裏側に着目した〈NONIWA〉の取り組み

  • 2021年8月13日
  • コロカル

アウトドアブームで、キャンプ人口は増加の一途というけれど、そのほとんどは自宅とキャンプ場の往復に終始し、訪れた地域のいいところを何も見ずに帰ってしまうという。せっかく多くの人がその土地に足を運んでいても、地域の魅力を発見するチャンスを逃しているといえる。

確かにキャンプの目的は自然の中で過ごす時間。でも、その土地のおいしいものやいい感じの温泉なんかを味わわないのはもったいない。

そんなキャンプブームの裏側に着目し、ユニークな取り組みをしているのが埼玉県ときがわ町にあるキャンプ場〈キャンプ民泊NONIWA〉だ。キャンプ場と民泊を組み合わせた施設で、オーナーの青木さん夫婦はときがわ町の魅力を発信しながらアウトドアの楽しさを伝えている。

埼玉県ときがわ町にあるキャンプ場〈キャンプ民泊NONIWA〉。場所は非公開で利用するには事前の申し込みが必要。

埼玉県ときがわ町にあるキャンプ場〈キャンプ民泊NONIWA〉。場所は非公開で利用するには事前の申し込みが必要。

リサーチに2年かけて見つけた移住先

都心からクルマで90分、埼玉県の中央部に位置するときがわ町。少し足を延ばせば、秩父・長瀞といったアウトドア・レジャーの名所があり、手前には多くの観光客でにぎわう川越がある。その中間に位置し、山と川に囲まれた日本の里山風景が残るエリアが埼玉県比企郡ときがわ町である。

「妻の影響でキャンプにハマって以来、いつかは仕事と趣味が一緒になったような生活をしてみたいと思っていました。でも、一気に環境を変えるのは怖くて。当時働いていた会社が川越にあったので、まずは都内から川越に引っ越しをして、そこを拠点に近隣エリアで良いところはないかを探し始めました」

と語るのはオーナーの青木達也さん。つい最近まで、川越に本社がある輸入商社に勤めながら、二足のわらじで〈NONIWA〉の運営を進めてきた。

青木さん夫婦は、「野あそび夫婦」としてSNSやYouTubeチャンネルを運営するなど、積極的に情報発信も行っている。

青木さん夫婦は、「野あそび夫婦」としてSNSやYouTubeチャンネルを運営するなど、積極的に情報発信も行っている。

一方、奥さんの江梨子さんはテレビ制作会社のディレクターというキャリアを持ち、移住に向けてのリサーチは彼女が積極的に担ってきたという。

「ローカル線の旅番組のディレクターをやっていて、いろんな土地の方にも取材でお会いしていたんです。だから、行きあたりばったりで移住するのはよくないというのは知識としてあって。かなり念入りにリサーチして、実際に移住するまで2年くらいかかりました」(江梨子さん)

達也さんの仕事の兼ね合いもあり、川越まで通勤できるという条件で絞り込んだのがときがわ町。決め手となったのは東京から近いわりに里山の風景があり、自然環境が厳しすぎないことだった。さすが旅番組のディレクター。リサーチ力は当然プロレベルだった。

「でも実際は、ときがわ町を調べ出したのはひらがな表記でかわいかったからです(笑)。個人経営のカフェがいっぱいあるし、気になるお店に足を運んでいくうちに、若い移住者が多いということもわかっていきました。農家民宿を運営している方の移住相談にも泊りがけで行きましたし、地元の企業がやっている起業塾にも参加しました。そういった人たちとの出会いが財産になっていて、いまでも大変助かっています」(江梨子さん)

“初めてのキャンプ”を青木夫婦がレクチャー

〈NONIWA〉がオープンしたのは2019年6月。完全紹介制という仕組みを取っており、キャンプインストラクターの資格を持っている青木夫婦にキャンプのいろはを教わる。一般的なキャンプ場のように、キャンプサイトを開放せず、初回はステップアップキャンププログラムに参加する必要がある。オープン以来、累計で250組以上が利用しているという。

幅広いスタイルに対応できるよう、さまざまなギアがそろっている。

幅広いスタイルに対応できるよう、さまざまなギアがそろっている。

〈NONIWA〉では、キャンプに必要な道具はすべてレンタルすることができる。母屋にはテントから寝袋、最新ギアにいたるまで、ありとあらゆるキャンプ道具をそろえており、青木さん夫婦がキャンプギアのコンシェルジュのように使い方をレクチャーしてくれる。

テントを設営するスペースは母屋の前にある広大な庭(林に囲まれた離れのサイトもあり)。そこからは周囲に山々の美しい稜線が見渡せ、徒歩数分のところにはきれいな川も流れている。しかし、周りには民家もちらほら。移住者がキャンプ場を運営するには、ハードルが高い環境のようにも思えるが……。

アウトドア初心者のためのプログラムなので母屋のキッチンも利用可能。

アウトドア初心者のためのプログラムなので母屋のキッチンも利用可能。

「こういった環境だったので、紹介制という仕組みにしています。キャンパーに開放して誰でも受け入れてしまうと、マナーやモラルに反する人も出てきてしまう懸念があったので。でも、引っ越ししてわかったのですが、ご近所さんも移住してきた人たちが多いので、理解も得られて仲良くさせてもらっています。びっくりしたのは、移住して間もない頃に、町の観光課の人が町長を交えた沢登りに誘ってくれたこと。『川の楽しさ、自然の豊かさを伝えてください』と応援してくれたのはうれしかったですね」(達也さん)

移住先としてはうらやましい、なんともアットホームな環境である。

アウトドアの切り口で地元を盛り上げたい

〈NONIWA〉の主な活動はキャンプ民泊事業だが、もうひとつ力を入れているのがときがわ町の魅力を生かした新しい取り組みだ。地元の事業者と協力して、地域の文化にアウトドアという要素を組み合わせることで土地の魅力を発信している。

地元ブルワリーと製造した〈HOT WINE MIX(1600円)〉。焚き火を囲んでキャンプのお供にも。

地元ブルワリーと製造した〈HOT WINE MIX(1600円)〉。焚き火を囲んでキャンプのお供にも。

昨年末に発売して話題を集めたのが、地元のブルワリーとコラボしてつくった〈HOT WINE MIX(1600円)〉。キャンプの寒い夜に飲むホットワインを、手軽に楽しめるようにと、地元の桂木ゆずをベースに、ワインに混ぜるだけのシロップを開発した。

「そのほかにも、『ときがわ×アウトドア』ということで、メスティン(野外料理用のクッカー)用のまな板を地元の木材所に協力してもらってつくりました。最近好評だったのは、『BIKE&CAMP』というイベントです。

ときがわには、埼玉屈指のヒルクライムスポット・白石峠があり、年間を通して多くのサイクリストが訪れます。そこで、ときがわ周辺をサイクリングして、地元の手づくりハムとパンの店で昼食を買って河原で食べたり、直売所で買った野菜を使ってキャンプ料理を楽しんでもらうというツアーを企画しました。キャンプの楽しさとのんびりしたときがわの魅力を一度に楽しめたので、今後も続けていく予定です」(達也さん)

青木さん夫婦はキャンプだけでなくサイクリングや登山など、さまざまなアクティビティにも挑戦。ときがわ町に来てからアウトドアの守備範囲も広がった。

青木さん夫婦はキャンプだけでなくサイクリングや登山など、さまざまなアクティビティにも挑戦。ときがわ町に来てからアウトドアの守備範囲も広がった。

キャンプをシンプルにすれば、ローカルをもっと味わえる

コロナ禍をきっかけに注目を集めているキャンプだが、キャンプ自体を目的にしてしまうと、せっかく訪れた地域の魅力を存分に味わうことはできない。実際、自宅から遠いほど、帰りの渋滞を気にして、その土地の魅力を堪能せずに帰路につくという人も多いだろう。

しかし、〈NONIWA〉は都心からのアクセスが良い。チェックアウトは11時だが、その後、ごはんを食べたり温泉に立ち寄ったりしても、夕方までには帰宅することができる。この距離感はなによりの魅力だ。

「ときがわには誰もが知るメジャーなスポットはありませんが、おすすめしたいスポットはたくさんあります。地元で人気の豆腐屋はざる豆腐が絶品ですし、〈NONIWA〉の近くには古民家を移築してつくられた温泉施設もあります。そばやうどんがおいしいお店も多いので、宿泊される方には前もっておすすめスポットをメールでご案内しています」(江梨子さん)

〈NONIWA〉を拠点に、三波渓谷や弓立山などトレッキングコースも案内している。

〈NONIWA〉を拠点に、三波渓谷や弓立山などトレッキングコースも案内している。

実際、〈NONIWA〉に立ち寄るお客さんの多くは、青木さん夫婦の勧めもあってキャンプの後にときがわ観光を楽しんでから帰るという。

「うちにくるお客さんはキャンプ初心者の人が多いので、『キャンプって、これくらいでいいんですよ』と言ってあげるのが僕らの仕事。ファミリーでもテントは大きいものではなく、小さいのをふたつ張るほうが簡単で撤収が楽な場合もあります。どうやったら手間を省けるのか、疲れないでキャンプが楽しめるのか、というのは意識して伝えていますね。そうすれば、本来楽しみたかったアクティビティやその地域の魅力に目を向ける機会が増えますから」(達也さん)

キャンプがブームのいま、キャンプにまつわる情報は豊富にそろっている。それが故に、知識先行であれもこれもと欲張ってしまうと、のんびりできないし、キャンプ自体が面倒くさいと思ってしまいがち。空の移り変わりとか、虫や鳥のさえずりといった、本当に体験してほしいアウトドアの魅力に目がいかないまま終わってしまうのはとてももったいないことだ。

〈NONIWA〉が提唱するシンプルでゆるいキャンプは、アウトドアの楽しさをしっかり味わえるのはもちろん、ローカルの魅力を体験する余裕をも生み出してくれる。これからキャンプを始めたいと思っている人には、ぜひとも訪れてほしいスポットだ。

information

キャンプ民泊NONIWA 

住所:埼玉県比企郡ときがわ町(正式住所は非公開)

WEB:NONIWA

ステップアッププログラム

キャンプ講習〜デイキャンプ体験〜1泊2日キャンプ体験の3つのステップで構成。

キャンプ講習(STEP1)

開催:月1回〜2回(土・日曜・祝日)

時間:2時間

料金:1組 5000円

人数:3〜4組

※プログラムの組み方は相談可。

writer profile

Tadayuki Matsui

松井直之

まつい・ただゆき●エディター/ライター。1975年東京生まれ、東京育ち。出版社で10年、IT企業で10年の編集職を経て2017年に独立。趣味は8歳からはじめたオートキャンプ。現在はアウトドア関連の企画・取材・執筆から、Webメディアのディレクションまで、編集スキルを軸に幅広く活動中。

photographer profile

KAZUO YOSHIOKA

吉岡教雄

千葉県出身。写真のきっかけ、高校一年の春休みにバイトで貯めた資金をもとに単身ネパールへ。『地球の歩き方』とインスタントカメラを手にカトマンズ〜ポカラを徘徊。スタジオ経て2006年フリーランス。東京を拠点として広告、web、雑誌、などコマーシャル分野で活動中。

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