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多彩な軸で「あきた」を探る展覧会『200年をたがやす』が秋田市で開催中

  • 2021年7月20日
  • コロカル
日常生活と表現が交わる展覧会

「生活・産業」「食」「工芸」「美術」「舞台」という5つの軸で「あきた」のこれまでの200年とこれからの200年を探る展覧会『200年をたがやす』が〈秋田市文化創造館〉を拠点に開催中です。

秋田市文化創造館は、2021年3月に開館した文化交流施設。展示や公演を観賞者として受けとるだけの場所ではなく、ジャンルに囚われないあらゆる活動の拠点になることを意図してつくられました。

円窓が印象的な〈秋田市文化創造館〉。JR秋田駅から徒歩約10分、久保田城があった千秋公園の入り口にあり、お堀に囲まれた場所に位置します。〈秋田県立美術館〉として市民に親しまれた建物をリノベーションし、今春オープンしました。(〈秋田県立美術館〉は2013年に安藤忠雄設計の新築建物に移転)

円窓が印象的な秋田市文化創造館。JR秋田駅から徒歩約10分、久保田城があった千秋公園の入り口にあり、お堀に囲まれた場所に位置します。〈秋田県立美術館〉として市民に親しまれた建物をリノベーションし、今春オープンしました。(秋田県立美術館は2013年に安藤忠雄設計の新築建物に移転)

オープニング企画としてはじまった展覧会『200年をたがやす』でも、無料で自由に行き来できる空間に、秋田にまつわる美術作品や伝統工芸品、食のレシピや進行中の市民プロジェクトの断片など、一見バラバラな分野の表現が、建物の1階から3階、屋外のデッキや芝生広場にまで並びます。

1Fのキッチンのそばで紹介されているのは、『あの人から教わったレシピ』。公募で集められた「誰かが誰かに教わったレシピ」がエピソードとともに展示されています。秋田で受け継がれる、郷土料理に限らない家庭料理の数々。テーブルの上には21のレシピカードが並び、無料で持ち帰ることができます。(撮影:草彅裕)

1階のキッチンのそばで紹介されているのは、『あの人から教わったレシピ』。公募で集められた「誰かが誰かに教わったレシピ」がエピソードとともに展示されています。秋田で受け継がれる、郷土料理に限らない家庭料理の数々。テーブルの上には21のレシピカードが並び、無料で持ち帰ることができます。(撮影:草彅裕)

美術館のように「順路」はなく、何をどこから見始めていいかわからないという印象も受けるかもしれませんが、過ごし方も受け取り方も「来館者自身に開拓してもらいたい」と自由。

異なる活動が交わることはもちろん、会場にはブランコやベンチ、椅子やテーブルなどもあり、勉強したり、読書をしたり、「日常生活の一部が、美術作品やプロジェクトと隣り合うような広場」を目指して設計されています。入館料も無料です。

会場2F、美術作品と同じスペースに設置されているブランコ。

会場2階、美術作品と同じスペースに設置されているブランコ。

ブランコのそばには、秋田県十文字町(現・横手市)の農家に生まれ、「農民の暮らし」をテーマに、農業に従事しながら創作活動を行った農民彫刻家・皆川嘉左ヱ門さんの作品が並び、公園で遊ぶように作品を味わうことができます。

皆川嘉左ヱ門さんは米の輸入自由化に反対したデモ活動や、減反田を用いた野外美術ギャラリー〈減反画廊〉の運営でも知られ、本展覧会では「活動家」としての側面にも注目。3階では家族へのインタビュー映像も公開されています。

農民彫刻家・皆川嘉左ヱ門さんの作品群。1本の木から掘り出された大きな彫刻に出会えます。(撮影:草彅裕)

農民彫刻家・皆川嘉左ヱ門さんの作品群。1本の木から掘り出された大きな彫刻に出会えます。(撮影:草彅裕)

楽しみ方は自分でつくる

会場を歩いていると、足下に設置された丸いマークが目に入ってきました。

ここは〈大きな踊り場〉。スポットに付けられた「名前」とコメントが書かれています。

ここは〈大きな踊り場〉。スポットにつけられた「名前」とコメントが書かれています。

2階の大きな鏡の下に設けられたスポットは、〈まちのリビング〉と名付けられていました。寝転がって作品や建物を見上げてもよし、円窓から注ぐ光を浴びて昼寝をしてもよし、クションを積み上げて遊んでもよし。家のリビングにいるように、リラックスして楽しんでほしいと設計された仕掛けです。

建物が〈秋田県立美術館〉であったとき、鏡が設置された壁には、藤田嗣治(レオナール・フジタ)が描いた同じ大きさの大壁画『秋田の行事』が展示されていました(現在は現〈秋田県立美術館〉に展示)。天井の円窓やこの空間は藤田が構想し、『秋田の行事』を展示するためにつくられたといわれています。秋田の祭礼(ハレ)や日常(ケ)を描いた大作であった『秋田の行事』。今日、ここで思い思いに過ごす来場者の姿が鏡に映し出されることで、現在・未来の『秋田の行事』が描き出される場になるようにという願いが込められています。(撮影:草彅裕)

建物が〈秋田県立美術館〉であったとき、鏡が設置された壁には、藤田嗣治(レオナール・フジタ)が描いた同じ大きさの大壁画『秋田の行事』が展示されていました(現在は現〈秋田県立美術館〉に展示)。天井の円窓やこの空間は藤田が構想し、『秋田の行事』を展示するためにつくられたといわれています。秋田の祭礼(ハレ)や日常(ケ)を描いた大作であった『秋田の行事』。今日、ここで思い思いに過ごす来場者の姿が鏡に映し出されることで、現在・未来の『秋田の行事』が描き出される場になるようにという願いが込められています。(撮影:草彅裕)

ほかにも〈小石テラス〉〈大岩遊具〉など、各所に名前がつけられており、なんでもない一角が特別な場所に見えてきます。視点を変えるおもしろさを味わえる一方、それだけではない過ごし方もしていいよという提案も。アイデア次第でいろんな楽しみ方ができる空間です。

3Fのバルコニーのそば、椅子とテーブルが並んでいるエリアは〈自習スペース〉と名付けられていましたが、「自習スペースなんて名前をつけてしまいましたが、ラッパを吹いても大丈夫なはずです」とチャーミングなコメントが。全部で43箇所。どこにあるかなと探し歩くのも楽しいです。

3階のバルコニーのそば、椅子とテーブルが並んでいるエリアは〈自習スペース〉。「自習スペースなんて名前をつけてしまいましたが、ラッパを吹いても大丈夫なはずです」とチャーミングなコメントが。全部で43か所。どこにあるかなと探し歩くのも楽しいです。

〈自習スペース〉と同じフロアにあるのは、〈大館曲げわっぱ〉〈秋田杉桶樽〉〈樺細工〉〈川連漆器〉という秋田の国指定伝統的工芸品をテーマにしたスペース。商品となった完成品だけではなく、材料や道具、つくり手とつかい手のインタビュー映像やエピソードが紹介されています。

「秋田杉桶」「秋田杉樽」の材料や道具の一部。写真は、職人を会場へ招き、製造工程や歴史、現在とこれからの挑戦を聞くトークイベントのときのもの。(撮影:須賀亮平) 

〈秋田杉桶〉〈秋田杉樽〉の材料や道具の一部。写真は、職人を会場へ招き、製造工程や歴史、現在とこれからの挑戦を聞くトークイベントのときのもの。(撮影:須賀亮平) 

『森から暮らしへ』というテーマがかかげられているように、秋田の国指定伝統的工芸品は、どの素材も杉や桜、漆といった、木々から生まれていることも特徴のひとつ。〈縁台〉や〈端材アトリエ〉と名づけられたスペースに座ると、森の香りを感じながら、つくり手・つかい手の言葉にふれることができます。

会場では、今後職人による実演・ワークショップも予定(要申込・一部有料)。職人の技を間近に感じることができるチャンスです。どれも直して使い続けることができる道具。つくる過程や修理方法を聞けば、より愛着が沸き、この先も使い伝えていきたいと思うのでは。

「秋田杉桶樽」をテーマに職人の畠健男さん(能代製樽株式会社)、柳谷 直治さん(有限会社樽冨かまた)から話を聞く様子。(撮影:須賀亮平)

〈秋田杉桶樽〉をテーマに職人の畠健男さん(能代製樽株式会社)、柳谷 直治さん(有限会社樽冨かまた)から話を聞く様子。(撮影:須賀亮平)

変化していく展示

9月26日までの会期中、展示が「更新」され、変化していくことや、プロジェクトや作品づくりの「過程」を垣間見ることができるのも本展覧会のおもしろさ。会期を2回に分け、現在の会期『みせる』の前を『つくる』とし、『みせる』期間にお披露目する作品の制作過程やインタビューの様子などが展覧会の一部として公開されてきました。

舞台分野では8月、9月に演劇公演『soda city funk』(全9回・要申込)の上演が予定されていますが、〈稽古場〉と名付けられた会場の一角(2階)では、稽古の様子を来館者が自由に見ることができます(開催日は不定期)。

〈稽古場〉の入口には「ご自由にお入りください」とサインが置かれています。

〈稽古場〉の入口には「ご自由にお入りください」とサインが置かれています。

演劇の台本は、〈秋田竿燈まつり〉〈秋田万歳〉〈白岩ささら〉など秋田県内の祭り・民俗芸能に関わる人への取材や、秋田に暮らす人から募った「祭りや昔話のエピソード」から言葉を集め制作されました。

〈稽古場〉には取材の過程で感じた演出家・児玉絵梨奈さんの言葉や、取材音源なども展示されています。公演を観る前と観た後では、違う思いを抱くかもしれません。

公演には秋田市在住の学生や社会人を出演者に迎え、民俗芸能に携わる人が経験するという「神様が憑依するような超日常の感覚」の再現に挑みます。

〈稽古場〉の隣にある〈研究室〉も、〈プロジェクト研究会〉のメンバーの考えたりつくる過程の頭の中を覗き見できるようなスペース。秋田市文化創造館の藤浩志館長と一緒に、公募した市民研究員が「秋田のまちの使い方」を考える研究会で、部屋には活動のヒントになるキーワードが散りばめられています。

〈稽古場〉の隣にある〈研究室〉も、〈プロジェクト研究会〉のメンバーの考えたりつくる過程の頭の中を覗き見できるようなスペース。秋田市文化創造館の藤浩志館長と一緒に、公募した市民研究員が「秋田のまちの使い方」を考える研究会で、部屋には活動のヒントになるキーワードが散りばめられています。

気になる場所や、深めたいと思う場所は、十人十色。ここでは紹介しきれないたくさんの表現が展開されています。

日を変えて訪れれば、物理的に変化しているものがあることはもちろん、たとえ同日でも、違うジャンルの展示を体感した後、先に訪れたスペースに戻ると、関係がないと思っていたものがつながっていたり、見えていなかったものに気がついたり、目線や感じ方も変化していく展覧会です。

1Fに設置された〈あきた400ねんリサーチセンター〉では、「生活・産業」という広いテーマで、教科書に載るような歴史的遺産ではない、過去200年の日常にあった“小さなもの”や何気ない風景に宿る記憶や物語を、これからの200年に残していこうと調査、記録。その過程を日記などで公開していきます。(撮影:草彅裕)

1階に設置された〈あきた400ねんリサーチセンター〉では、「生活・産業」という広いテーマで、教科書に載るような歴史的遺産ではない、過去200年の日常にあった“小さなもの”や何気ない風景に宿る記憶や物語を、これからの200年に残していこうと調査、記録。その過程を日記などで公開していきます。(撮影:草彅裕)

秋田県横手市出身の油谷満夫さんが、60年以上かけて集めた50万点に及ぶ生活用具のコレクション〈油谷これくしょん〉の一部や、サーキット・ベンダー(回路を曲げる人)と名乗る作家・内田聖良さんによるプロジェクト〈水山これくしょん〉も展開。秋田で使われていた日用品を3Dスキャンし、バーチャル空間で使えるアイテムに変換、蓄積していく試みで、会期中、来場者から提供される日用品も加えられ日々更新されていく予定です。(撮影:草彅裕) 

秋田県横手市出身の油谷満夫さんが、60年以上かけて集めた50万点に及ぶ生活用具のコレクション〈油谷これくしょん〉の一部や、サーキット・ベンダー(回路を曲げる人)と名乗る作家・内田聖良さんによるプロジェクト〈水山これくしょん〉も展開。秋田で使われていた日用品を3Dスキャンし、バーチャル空間で使えるアイテムに変換、蓄積していく試みで、会期中、来場者から提供される日用品も加えられ日々更新されていく予定です。(撮影:草彅裕) 

「生活と表現の交わる広場」として設計され、オープン後も変化し続けていく展覧会『200年をたがやす』。秋田でたがやされる文化の一端に触れ、秋田の新しい側面に出会えたり、作品をつくったり、プロジェクトに参加したことがない人も、表現や活動をはじめるきっかけやひらめきを得られるかもしれません。もちろんただただぼんやりしたり、おしゃべりしたりするのも自由。思い思いに「あきた」をあそびに出かけてみませんか?

秋田の表現の場として親しまれてきたギャラリー〈ココラボラトリー(通称:ココラボ)〉の15年を振り返るプロジェクト〈ココラブ〉で制作した年表やチラシのアーカイブも公開。秋田という土地で積み重ねられてきた活動の熱量を感じることができます。写真は膨大な資料を整理・分類した『つくる』期間の様子。(撮影:須賀亮平)

秋田の表現の場として親しまれてきたギャラリー〈ココラボラトリー(通称:ココラボ)〉の15年を振り返るプロジェクト〈ココラブ〉で制作した年表やチラシのアーカイブも公開。秋田という土地で積み重ねられてきた活動の熱量を感じることができます。写真は膨大な資料を整理・分類した『つくる』期間の様子。(撮影:須賀亮平)

敷地外にも会場が設けられており、館内を経て、芝生広場からお堀沿いを歩いていくと、日常風景であるまちの中にも展示空間が続いているような、不思議な感覚を覚えます。サテライト会場〈Newテラス広小路〉は秋田市文化創造館から徒歩約5分。8月にはもう1箇所、会場が追加される予定です。

敷地外にも会場が設けられており、館内を経て、芝生広場からお堀沿いを歩いていくと、日常風景であるまちの中にも展示空間が続いているような、不思議な感覚を覚えます。サテライト会場〈Newテラス広小路〉は秋田市文化創造館から徒歩約5分。8月にはもう1か所、会場が追加される予定です。

建物の正面に広がる芝生広場の一角。右手の〈散歩道〉と名付けられた遊歩道を歩いていくとお堀に突き当たります。(撮影:草彅裕)

建物の正面に広がる芝生広場の一角。右手の〈散歩道〉と名付けられた遊歩道を歩いていくとお堀に突き当たります。(撮影:草彅裕)

information

展覧会『200年をたがやす』

会期:開催中〜2021年9月26日(日)

『つくる』:2021年3月21日(日)〜6月18日(金)(終了)

『みせる』:2021年7月1日(木)〜9月26日(日) 

開館時間:9:00〜21:00(サテライト会場Newテラス広小路は19:00まで)

定休日:火曜

主会場:秋田市文化創造館

住所:秋田県秋田市千秋明徳町3-16

入館料:無料

Web:展覧会『200年をたがやす』

information

実演・ワークショップ『“つくる”と“なおす”』

川連漆器 編:2021年7月18日(日)、25日(日)、31日(土)

大館曲げわっぱ 編:2021年7月24日(土)

秋田杉桶樽 編:2021年8月7日(土) ※実演のみ

樺細工 編:2021年9月23日(木・祝)

ワークショップ参加費:有料(回により異なる・要申込) ※実演観覧は無料

Web:実演・ワークショップ『“つくる”と“なおす”』

information

演劇公演『soda city funk』

公演日

2021年8月14日(土)、15日(日)、21日(土)、28日(土)、29日(日)、

9月12日(日)、18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)

※8月15日(日)、21日(土)、9月12日(日)は、終演後にアフタートークを予定

開場:14:45

開演:15:00(16:00終演予定)

入場料:無料(要申込)

Web:演劇公演『soda city funk』

writer profile

Haruna Sato

佐藤春菜

さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行なう。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。

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