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移住したら賃貸? 購入? ついに見つけたわが家は「暮らしながらつくりあげる家」

  • 2021年5月13日
  • コロカル
ついに物件購入へ……!?

伊豆下田に移住して4年の津留崎さん。理想にかなり近い賃貸物件を見つけて暮らしていましたが再び家探しをすることに。その理由は? そしていい物件に出会うことはできたのでしょうか……?意外な展開で進んだ津留崎家の住宅事情について綴ります。

賃貸から中古住宅購入へ

移住にまつわる暮らしについて綴るこの連載をしていると、移住について、特に伊豆への移住について相談をいただくことがあります。最近は新型コロナウイルス感染症が広がるなかで地方移住に注目が集まっているという影響もあるのか、頻繁にそんな話がくるようになりました。

都会に比べると物件価格も安いこともあって、移住希望者の中には「気に入った物件があったら即購入します!」というテンションの方もいます。もちろん、物件に対する考え方、探し方はそれぞれなので正解はないのでしょう。でも、基本的には、まずは賃貸で探すことをオススメするようにしています。

というのも、「しばらく暮らしてみないと、その土地との相性もわからない。なので当初は賃貸がいい」と考えているからです。そんな考えもあって、わが家が移住先探しの旅の末にここ下田で見つけた物件も賃貸。かれこれ移住して4年間、その家に暮らしています。

でも、実はこの5月に中古住宅を購入しました。いま、これからその物件のリノベーションを始めようというところです。

今回は、あらためて「暮らしの器」である家のことについて。賃貸物件に暮らしながらも、同じ市内で物件購入したいきさつなどをご紹介していこうと思います。

下田への引っ越しの様子

2017年4月、わが家は移住先探しの旅を経て下田に移住してきました。

僕らが探していた「家の条件」

まず、いま暮らしている賃貸物件について。下田移住を考えて不動産業者の情報を探し尽くすもなかなかよい物件と出会えず、途方にくれていたときに入った不動産屋で「不動産業者の情報には載らない物件」を紹介していただいたのが、いま暮らしている家です。

この家は移住先探しの旅のときに考えていた「家の条件」の多くを満たしていました。そんな物件との出会いがあって、下田移住が決まったのです(詳しくはこちら)。移住の決め手は「物件との出会い」とよく聞きますが、まさに! という体験でした。

では、移住先探しの際には具体的にどんな条件の家を探していたのか? 当時重視していた条件を抜粋して紹介します。

1 自給的生活のベースとなるような畑のスペースがある家。自分たちの食べる野菜は自分たちでつくりたい、そう思っていたのです。

2 井戸水がひける、もしくは、湧き水が汲めるような立地。日々飲む水が水道水やペットボトルのミネラルウォーターであることに違和感を感じていました。

3 徒歩、自転車圏内に駅やバス停がある。子どもが大きくなったとき、どこに行くにも親が送り迎えをするというのは不自由な気がしていたのです。

4 なるべくお金をかけずに生活を始められる物件価格・賃料。

条件には挙げていなかったのですが、古民家には妻も僕も憧れがありました。

山梨で借りていた古民家

東京で移住を考え始めた頃、縁あって山梨にある古民家をしばらくお借りしていたことがあります。週末に高速道路で通っては庭での野菜づくりやたけのこ掘りや果樹の収穫などを楽しみました。田舎暮らしの楽しさを感じた原点ともいえます。

さらには、いつかは「エネルギーの自給・オフグリッド」にも挑戦したいと考えており、そのベースとなるような家を理想としていました。

松川家で食卓を囲む

地方で暮らしてみたいと考えるキッカケとなるような、僕らが影響を受けた人たちの多くが薪ストーブを使っていました。薪は最も身近な、カーボンニュートラルで再生可能なエネルギー源といえます。写真はvol.075で紹介した、下田で農業を営む松川家の様子。松川家ではお風呂も薪で焚いていました。

そして、移住先探しの旅でたどり着いたのは、海沿いのまち伊豆下田。下田で家を探し始めてからは、万が一の津波のことも考えて「高台」という条件も加えました。

要するに、「高台で駅かバス停に近くて、水が豊かで、畑ができて、エネルギーの自給を可能とするような古民家で安く借りることができる家」を探していたということです。

いま、あらためて振り返ると、なかなか贅沢すぎるくらいの条件だったとも思います。でも、幸いなことに(すべてを満たしていたわけではありませんが)条件に近い家が見つかったのです。

野菜を収穫する娘

敷地内には自分たちが食べる野菜をつくれるほどの畑スペースが。移住して間もない頃、庭に蕗が勝手に育ってるってなんと豊かなんだろうと感じたことを覚えています。

再び物件探しをスタート

ところが、暮らし始めて数年たった頃、再び物件探しを始めました。「条件のよい家」から出ようとしていたのです。キッカケは家に対して抱いていた「理想」に対して「現実」を実感したからかもしれません。

畑は、ほかで田んぼを借りて米づくりを始めたら、余裕がなくなってしまい、ほとんど手をつけることができなくなりました。

また、自分が建築の仕事をしている人間だからということもありますが、住み始めてしばらくすると、自分たちの暮らしに合わせて家を変えたい! という気持ちが強くなりました。

家の立地やつくりから悩まされた「湿気・カビ」問題も、もっと家に手をかければ改善されるはずなのですが、賃貸なのでなかなかそこまで手をかけることができない。「持ち物件」であれば、もっと手の打ちようもあるのでは? と感じることもありました。

さらには、いつかはと考えていた「エネルギーの自給」についても、賃貸ではなかなか動き出しにくいという現実も見えてきました。

そんなこんなで「賃貸の限界」を感じるようになったのです。もちろん、はじめに書いたように、移住していきなり物件を買うのはリスクが大きすぎるとは思います。また、賃貸か? 購入か? というよくなされる議論でも、賃貸のほうが暮らし方の変化によって物件を変えることができるので「コスパ」がよい、という識者もいます。

でも、自分たちは移住して数年たちました。この下田の良いトコも悪いトコもある程度見えてきているとは思います。その時点で、「下田に長く暮らしたい。より自分たちが目指す暮らしをしたい。リスクがあっても、コスパが悪くてもいいではないか?」そう考えて物件所有を考えるようになりました。

下田の海

実は、下田市内での物件探しを始めた当初は賃貸物件を探していました。でも、小さなまちなので、賃貸に絞ってしまうと本当に物件数が少なく、いつまで待っても良い物件に出会える気がしない……。そんなこともあり売買物件も考えるようになったのです。

そして、不動産業者や知人のツテで物件を探し回りました。気になる家や土地があると、知り合いづてに所有者につないでいただいたこともあります。でも都会と比べると物件数自体が少なく、なかなか良い縁に巡り会えずでした。

築80年以上の古民家との出会い

そんなこんなで、探し始めて2年以上たった昨年の秋頃。なかなか進まない物件探しに焦りを感じつつ、久々に狙っているエリアで不動産業者の物件が出ました。いま考えると「この物件はないだろう……」と思うのですが、久々に出た物件ということで期待に胸を膨らませ内見に行きました。

でも……「ここでは自分たちが思い描くような暮らしができない…」という現実を目の当たりにして意気消沈。なかなか物件が見つからない状況に妻とふたりで途方にくれてしまいました。

途方に暮れていてもしょうがない! と、気分転換も兼ねて自宅近辺をふらふらと散歩にでかけることに。

すると、いままでほとんどチェックしていない集落があることに気づき……。なんとなく吸い込まれるように足を踏み入れると、「え? この道行くとこんなに景色が開けるの???」というほどにバッと視界が開けて海を望む場所に出ました。なんだかワクワクしてしまう感じです。

その辺りに家が何軒かあり、ちょうど庭先で草刈りをしている方がいたので話しかけてみました。

「突然すいません……この辺に空き家ないでしょうか? いま近くに住んでるのですが、事情があり引っ越しを考えていて……」

すると、「そこの家、空いてるんじゃないかな? 詳しい人がいるから紹介するよ」

ぜひぜひ! と紹介していただきました。その「詳しい人」と挨拶をしてお話をうかがうと、さきほどワクワクした視界の開けた気持ちのいい場所にある古民家が空き家で、しかも管理を任されているということで、鍵をお持ちだったのです。

「中、見てみる?」とありがたいお言葉まで。お願いして見せていただきました。

古民家の外観

築80年以上の古民家とのことでしたが、とてもしっかりとしたつくりで、状態も築年数を考えるととてもいい。いまの家で悩まされた「湿気」もたまらなそうな立地と家のつくり。しかも、多くの部屋から海を見渡せる! 

海が見える家に憧れはありましたが、それを条件に入れると極端に物件数が少なくなってしまうので、それにはこだわらずに探していました。

そんなこんなで興奮気味の妻と自分。その方はそんな自分たちを見て、近くに住んでいるという家の持ち主さんに聞いてあげるよと、またまたありがたすぎるお言葉をかけてくださいました。

古民家の廊下

暮らしながらつくりあげる家

それから話はトントン拍子に進み、半年ほどたったいま、先日ゴールデンウィーク明けに無事に売買契約を済ませ、これからリノベーションをするという段階に!

購入した古民家の居間

状態はいいとは言っても築年数もあり、傷んでいる箇所もあります。しっかり直して住み継いでいきたいです。

専門的な工事は業者さんにもお願いしつつではありますが、できるところは自分たちでやろうと思っています。「ハーフセルフリノベーション」という感じでしょうか。エネルギーの自給に向けて、念願の「薪ストーブ」や太陽熱でお湯をつくる「太陽熱温水器」なども導入予定です。

敷地内の井戸

敷地内には長く使用していない井戸もあります。まだ使えるかをこれから検証していく段階ですが、もしもまだ水量が安定していて、水質検査をして飲めるほどの水質であれば、水回りで使いたいと考えています。

廊下から見えるキッチン

昔のつくりなのでキッチンは奥にありますが、思い切って海の見える一番景色のいいこの部屋をキッチンにつくり変えることにしました。海の見えるキッチン……!

手書きのリノベーションイメージ

キッチンの向きはどうする? 収納はどうする? 床はどうする? 壁はどうする? などなど日々悩みまくっています。

長く建築の仕事をしてきて、多くの家づくりに「業者」として関わってきましたが、自分の家をつくるのは初めてです。どれもが悩ましい。

隣の古民家

そして、なんと……諸事情あり、同じ方が所有していた隣の小さい家も一緒に購入しました。隣の家も一緒に買う……? 都会では考えられないことですが、2軒合わせても東京だったら家族で住める広さの中古マンションも買えない価格です。

筆者の母と娘。下田を散歩中

わが家を頼り下田に移住してきた僕の母が、いまの家から歩いて数分の場所に住んでいるのですが、足腰が弱くなってきて「歩いて数分」がきつくなってきました。隣の小さい家は母の家にと考えています。こちらも暮らしやすいようにリノベーションする予定です。

きっと、リスクやコスパを考えたらこの選択は「ない」と思います。賃貸でそれなりに満足できる家を探して、暮らしていくほうが賢いのかもしれません。でも、人生は一度きり。ときにはリスクやコスパよりも「ワクワク」を選択してもよいのではないかと思うのです。

ということで、しばらくはこちらのリノベーションに没頭する予定です。物件を購入したのにいつまでも賃貸を借り続けるのは、経済的にも無駄が多いので、全部を仕上げてから暮らし始めようとは考えていません。暮らし始めてからも引き続きつくり続けていこうと考えています。

きっと、完成したつもりでも、ああしたい、こうしたいといろいろと要望が出てくるのでしょう。賃貸ではできなかった、「暮らしながらつくりあげる家」という感じでいこうと考えています。

娘の部屋になる予定の和室

娘の部屋の壁は娘が塗る予定です。ほかにもいろいろと手伝ってもらおうと思っています。「自分の家を自分でつくる」、いい経験になりそうです。

これからの工事の様子もこちらの連載でお伝えしていきます。どのように変わっていくのか? 乞うご期待です!

キッチンにする予定のスペースを確認中の妻

エアキッチンに立つ妻。僕は建築の仕事ではいままでに何百軒ものリノベーションをしてきましたが、彼女が最も手強い施主かも……。

文 津留崎鎮生

text & photograph

Shizuo Tsurusaki

津留崎鎮生

つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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