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観測史上最多の積雪! 雪とともにある暮らしのリアル

  • 2021年1月7日
  • コロカル

雪をかいても捨てるところがなくなる

私が住む岩見沢市は、年末にいまだかつてないほどの大雪に見舞われた。雪が激しさを増していきJRなどが運休し、連日全国ニュースで取り上げられるようになったのは12月14日のこと。しかしそれでも雪は収まらずに、19日の時点で積雪が12月の観測史上最多となった。

この記録は、私たちが移住した10年前の大雪を超える。このとき、道の災害派遣要請を受けて自衛隊が除雪作業に当たったのだが、それを上回る量の雪が降ってきたことになる。

この原稿を書いている12月28日の時点で、累積の降雪量が428センチメートル。昨年のほぼ倍となった!

私の仕事場から見える景色。物置の雪がマッシュルームのようになっている!

私の仕事場から見える景色。物置の雪がマッシュルームのようになっている!

東京で暮らしていた頃、豪雪に対しては日々の雪かきが大変(!)というイメージしかなかったが、今年のような災害レベルの豪雪では、実際にどんな困りごとがあるのかについて、今回は書いてみたい。

まず大きな問題となるのは、雪かき以上に、たまった雪をどこに捨てるのかだ。玄関先の雪を脇に除けるだけでは、2、3日で高い山になってしまうため、捨て場所にすぐに困ってしまう。そのため、みなさん工夫していて、近くの空き地まで雪を持って行って捨てたり、トラックの荷台に積んで指定の場所に持っていったり。

ただ、今回のような豪雪になってくると「排雪」が追いつかない事態がやってくる。私が住んでいる美流渡(みると)地区は過疎地なので雪の捨て場はたくさんあるのだが、市街の状況は深刻で、2車線だった道路は、車1台がギリギリ通れるレベルとなり、大渋滞が起こってしまった。

排雪が追いつかずにバスが運休したり、子どもの徒歩通学にも支障をきたすようになって、いくつかの学校もお休みとなった。

2車線あった道路の幅が狭くなり、対向車が来ると譲り合いながら通行している。(撮影:平野義文)

2車線あった道路の幅が狭くなり、対向車が来ると譲り合いながら通行している。(撮影:平野義文)

道路脇の雪をトラックで運び出す作業は連日行われている。私の仕事場の近くにも雪堆積場があって、今年はトラックがひっきりなしに雪を捨てにやってきて、市の除雪体制のおかげでなんとか暮らすことができていることを実感する。そこに容赦なく新たな雪が降るという状況になっていて、除雪作業に当たる人たちの大変さは計り知れないものがある。

道路脇の雪をトラックに積む様子。(撮影:平野義文)

道路脇の雪をトラックに積む様子。(撮影:平野義文)

また、道路脇に雪がうず高く積まれると、見通しがきかなくなって、かなり厄介だ。私は運転が苦手で美流渡の周辺しか走らないのだが、雪は驚くほど白く、道路と雪の壁の境がまったく見えなくなって、ヒヤッとすることがたびたびある。道路脇の雪溜まりに車を突っ込んでしまい、身動きが取れなくなるというケースも多発している。

道路と路肩を見分けるときの頼りになるのが矢印の標識。

道路と路肩を見分けるときの頼りになるのが矢印の標識。

こんな状況のなかで、吹雪になってホワイトアウトをしてしまうと、命の危険を感じるレベルになってくる。出歩かないというのが一番なのだが、これまで体験したホワイトアウトのことを考えると、予想不可能で巻き込まれる場合も多い。

雪がチラチラと降ってきたかと思うと、数キロ進んだ途端に吹雪になることもあって、こうなると、後ろから追突されないように、ソロソロと走り抜けるしかない。夫によると「まだ地面がわかるうちはいい。本当にひどくなると左右だけじゃなくて、上下すらもわからなくなる」のだという。

吹雪になると視界が本当に悪くなる。

吹雪になると視界が本当に悪くなる。

屋根の雪は氷の塊となっている

そして、今年とくに厄介だったのは、屋根にたんまり積もった雪だ。1メートルほど積もっているところもあり、それが重みに耐えかねて一気に落ち、今年はすでに市内で死者も出ている。

屋根の雪は次第に締まって氷の塊に変化しており、窓ガラスを割ってしまうこともある。また、あまりにも荷重がかかると、軒が壊れたり、ひどい場合には家屋が倒壊する可能性もある。

雪下ろしをしなかった車庫が壊れるケースは、今年の豪雪に限ったことではない。こうしたことから危険を承知で、みなさん屋根に登って雪を下ろす。うちは夫がその役をやっていて、今年は屋根の雪を半分下ろしただけで、窓がすべて埋まってしまった!

屋根の雪が垂れ下がって、窓を塞ぐケースもある。

屋根の雪が垂れ下がって、窓を塞ぐケースもある。

ついに窓の高さまで雪が来てしまった。窓が割れないように雪止めの板をつけている。

ついに窓の高さまで雪が来てしまった。窓が割れないように雪止めの板をつけている。

12月に窓が埋まってしまうのは今回が初体験で、実を言うと、これがもっとも自分にとってはインパクトの大きな出来事かもしれない。

岩見沢は冬になると晴れ間が少なくなり、どんよりとした空模様となる。10年前、移住した最初の年は、北海道の冬というものがどんな感じかがわからなかったこともあって、この暗く重苦しい雪の雰囲気に、メンタルがまいってしまったことがあった。おそらく仕事が忙しく、夜遅くまで働いていたり、外にほとんど出なかったりというのも関係していると思う。

そんなことがあって以来、冬に太陽が出ると日光浴は欠かさないようにしてきたのだ。そして、年の瀬まで「まだまだ秋だ!」と思うようにしていたのだけれど、さすがに今年は冬であることを認めざるを得なくなったし、窓からの光も入らずに薄暗いなかで過ごさなければならなくなったので、これからの厳冬期を前に、何か気持ちがキープできるような対策をとらないとといけないなと考えているところだ。

晴れ間が見えると気持ちが明るくなる。

晴れ間が見えると気持ちが明るくなる。

雪がもたらしてくれるもの

こうした災害レベルの豪雪のなかで、本当にありがたいと思うのが、ご近所さんの協力だ。私はいま住まいとは別に、公営住宅を仕事場として借りており、隣は陶芸家のこむろしずかさん、その向かいには画家のMAYA MAXXさんが暮らしている。

全員が移住者で雪には慣れないだろうと、時々、ご近所さんたちが、重機に乗ってやってきて家の前をきれいにしてくれる。

重機で家の前の雪をご近所さんがきれいにしてくれた。本当にありがたい!

重機で家の前の雪をご近所さんがきれいにしてくれた。本当にありがたい!

先日、MAYAさんの車が雪に埋れて出られなくなっていたときも、ちょうど通りかかったガス屋さんが、サッと牽引ロープをつないでくれて、ことなきを得た。そして、何事もなかったような表情で去っていくのだ。

困っていたら助け合うのが当たり前。豪雪と向かい合ってきた人々の芯の強さとやさしさがヒシヒシと感じられた。

子どもたちはいつでも元気。家の前のマイゲレンデでソリ滑り。

子どもたちはいつでも元気。家の前のマイゲレンデでソリ滑り。

そしてもうひとつ、豪雪は特別な体験を与えてくれる。それは、言いようのない静けさだ。

台風などは激しい音をたてて襲ってくるが、雪は降り積もれば降り積もるほど音が消えていく。そして、世界のすべてが雪で覆われているような感覚がわき、自分がその中でひとり取り残されているような、なんとも言えない孤独感が立ち上がってくるのだ。

そんななかで、ふと思いがけない言葉が浮かんでくることがある。春から秋にかけては外の自然の美しさに目を奪われて心も忙しくしているのだが、外側の情報が遮断されていくことで、自分の内なる心の声が聞こえてくるのかもしれない。雪は生命の危険を脅かす恐ろしさとともに、心の静けさをもたらす、本当に不思議なものだと思う。

長期予報によると、今年はさらなる大寒波がやってくるようだ。被害が最小限になることを願いつつ、長い長い雪の季節とじっくりと向き合っていきたい。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、2001年『みづゑ』の新装刊立ち上げに携わり、編集長となる。2008年『美術手帖』副編集長。2011年に暮らしの拠点を北海道に移す。以後、書籍の編集長として美術出版社に籍をおきつつ在宅勤務というかたちで仕事を続ける。2015年にフリーランスとなり、アートやデザインの本づくりを行う〈ミチクル編集工房〉をつくる。現在、東京と北海道を行き来しながら編集の仕事をしつつ、エコビレッジをつくるという目標に向かって奔走中。ときどき畑仕事も。http://michikuru.com/

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