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多拠点居住のサブスクリプション施設〈LAC伊豆下田〉と空き倉庫のリノベーションプロジェクト

  • 2020年7月23日
  • コロカル
地域の課題解決に向けたプロジェクトが始動

伊豆下田に移住し、地元の工務店で建築の仕事に携わる津留崎さん。その工務店の社長は、地域に大工が少ない、特に若い世代の大工がいないことに頭を悩ませていました。そんなとき、いま話題の多拠点居住サービスの拠点が下田に誕生。それがきっかけで、あるプロジェクトがスタートしました。

空き倉庫をどうやって生かす?

3年前に伊豆下田に移住してからいくつかの仕事をナリワイとして暮らしています。そのうちのひとつが移住前、東京で長く続けてきた建築の仕事の経験を生かして取り組んでいる、地元工務店〈山本建築〉での設計・積算・現場作業・情報発信などの仕事です。

今回は、その山本建築が、地域が抱える課題解決に向けて始めたプロジェクトについて紹介します(山本建築で仕事を始めるようになった経緯はこちら)。

プロジェクトが掲載された伊豆新聞の紙面

先日は、地元紙『伊豆新聞』がこのプロジェクトについて大きく報道しました。空き倉庫をリノベーションし、にぎわい拠点をつくる民間プロジェクト、として紹介されています。

この空き倉庫はしばらくは使われていなかった、もともとは建材店の倉庫です。これをどう生かすか? というアイデアを模索するワークショップが開催されて、その様子を取材していただきました。

ワークショップの様子

ワークショップには市内外から17人が参加。(撮影:土屋尊司)

この空き倉庫を買い取り、プロジェクトを進めているのが山本建築の社長、山本剛生(たけお)さんです。

山本剛生さん

撮影:土屋尊司

空き倉庫を買い取り、それをどう生かすかのアイデアをワークショップで模索……? こう聞くと「用途も決めずに買い取ったの? なぜ?」と思われるかもしれません。

でも、そもそもこのプロジェクトが始まったのは、山本さんがこんな問題に直面したことがきっかけでした。

「地域に若い大工がいない、人口の比率から考えても大工が少なすぎる。どうにかならないのか?」山本さんは、以前よりこの問題について頭を悩ませていました。

地域の建築現場が抱える問題

大工がいないと何が問題なのか? と思われるかもしれません。でも、地域の住環境を維持していくためにも、地域に一定数の大工は必要なのです(昨年あった大型台風で、被災地域で住宅の復旧にすごく時間がかかりました。これも大工不足が原因ともいわれています)。

業界団体の名簿を見ると、最も多いのは60代。70代も多い。40代、50代はまだいるのですが、20代、30代がほとんどいない。もちろん10代もいない、といった感じでした。

あと10年、20年たったらどうなるのか? このまちに必要な大工が足りなくなってしまうのでは?

一般的には工務店の経営者は、当面の自社の職人確保や仕事の確保に目を向けることはあっても、地域の問題としての大工不足を考えることはないのでしょう。でも、山本さんは生粋の下田っ子、そして生粋の大工。

長い間、この地でコツコツとやってきた実績と、お客さんに信頼される人柄、そして技術力がある山本さんのもとには常に仕事の依頼がきます。でも、人手不足によりスムーズに対応できない。多くのお客さんに長く待ってもらっている状況なのです。

下田時計台フロント

昨年は下田駅前のランドマークともいえる土産物店・レストランの〈下田時計台フロント〉の大規模改修工事を行いました。

これは地域のほかの工務店から聞こえてくる話でもあります。仕事はある、でも人手が足らず仕事が回らない。

そんな状況が続いていることから、地域に若い大工がいない、大工が少なすぎるという問題を山本さんは人一倍真剣に考えて、憂いていたのです。

そもそも、若い世代は、大工のような現場仕事、肉体労働をやりたがらない。その要因について、山本さんが痛切に感じていたことがあります。

それは「建築業界」のイメージの悪さです。どんなイメージかというと……厳しい上下関係。不安定な雇用状況。決して、ガラがいいとは言えない職人の雰囲気。といった負のイメージです。

少なくとも山本建築の環境はまったく違うのですが、こんなイメージがあっては、若者は建築業界に入ってきたいと思うわけがない。まずは、そこを変えていかなければいけないのでは?

そして、地域に若者が戻ってきたくなるにはこの地域をどうしていくべきか? それには何が足りないのか?

下田の海とまち並み

移住して東京との違いを感じたことのひとつに、地域の人たちが地域の行く末を自分ゴトとして考えていることです。東京は自分ゴトと考えるには規模が大きすぎるのかもしれません。(撮影:津留崎徹花)

建築業界のイメージを変える。そして、若者が働きたいと思うようなまちにする。まずは、これを実現していかなければ、このまちの大工は減っていくばかり。若い世代も増えることはない。山本さんはそう話していました。

とはいっても地元の一企業ができる話ではないのかもしれません。

そんなときに、流れが変わるふたつの出来事が山本さんの身の周りに起こったのです。

若いクリエイターたちとプロジェクトスタート!

まず、ひとつ目。山本さんの幼なじみで親友の梅田直樹さんがコミュニティマネージャーを務めるワーケーション施設〈LivingAnywhere Commons IZU-SHIMODA〉(以下、LAC伊豆下田)が昨年秋に立ち上がったことです。

社員寮の外観

造船会社の社員寮をリノベーションしてレジデンススペースに。

〈LivingAnywhere Commons IZU-SHIMODA〉内観

〈LivingAnywhere Commons〉は、自宅やオフィスなど、場所に縛られないライフスタイルを実践するためにつくられたコミュニティ。会員になると、全国7か所(2020年7月現在。今後も各地に展開予定)のLACの拠点を利用することができるというサブスクリプションのサービスです。(写真提供:國部華奈)

こちらはいま注目を集める多拠点居住サブスクリプションサービスの施設です。LAC伊豆下田ができたことにより、多くの若い世代が、それも場所に縛られないライフスタイルを持つクリエイターや起業家がこのまちに滞在することになりました。

梅田直樹さん

梅田直樹さんは、現在はLAC下田のコミュニティマネージャーを卒業して、全国のLACの拠点立ち上げに関わっています。2023年までに100拠点を計画しているそうです。(撮影:藤井瑛里奈)

山本建築としては、梅田さんとのつながりもあったことからLAC伊豆下田の諸工事を担当。そして、LAC伊豆下田に出入りしているうちに、滞在するクリエイターや起業家との交流が増えていきました。

空き倉庫

そして、流れの変わる出来事のふたつ目が、「建材店の空き倉庫を山本建築で利用してみないか?」という話がきたことでした。

実際、山本建築の倉庫は足りていました。でも、山本さんはこの倉庫に違う可能性を感じたのです。

この倉庫を買い取り、LAC伊豆下田に出入りする若い世代のクリエイターたちと共にリノベーションしていくことで、まちににぎわいをつくれないか? そうしてできあがった空間がこのまちの魅力となり、若い世代がこのまちに戻るきっかけにならないか?

そして、この空き倉庫をリノベーションする過程で関わった人が「ものづくりの魅力」を感じ、建築の仕事、大工の仕事に興味を持ってもらうきっかけにならないか?

そんな思いが発端となりプロジェクトがスタート。まずは、LACに滞在するクリエイター、起業家が中心となり、市内外からこのプロジェクトに興味のある人を集めて、この空き倉庫をどう生かすか? アイデアを模索するワークショップが企画されました。

倉庫内でのワークショップ風景

撮影:土屋尊司

地域の課題解決への第一歩

ということで話は、冒頭のワークショップの話につながります。もちろんにぎわいを生み、空間を生かし、そして利益も生む仕組みを考えなければ持続して事業を行うことはできません。簡単な話ではなさそうです。

倉庫内の階段と棚

昨日まで建材店が営業していたかのような雰囲気。それがまた、想像力をかき立てられます。(撮影:土屋尊司)

ワークショップでは、さまざまなアイデアが生まれました。

アイデアをメモ中

例えば……「地域の子どもたちと共に倉庫の中に家を建てる」というアイデアが。子どものうちに家づくりの楽しさを体験できたら、建築現場の仕事に対する印象も変わりそうです。(撮影:土屋尊司)

どんなプロジェクトになっていくのか? いまだに全貌は見えていません。なんとも不思議といえば不思議な話です。

大工志望のスタッフが作業中。

そして、こんなプロジェクトが動き出すタイミングで、山本建築には大工志望のスタッフが入ってきました。東京から家族で移住してきた20代の若者です。いま、大工見習として現場で汗を流していて、現場で会うたびに大工らしくなっている彼を見るとうれしくります。

若い世代の大工不足というこのまちの課題に真剣に取り組む山本さんの姿勢が、こうした結果を導いているように感じました。

梅田さんと山本さんの後ろ姿

梅田さん(左)と山本さん(右)。なんとふたりは幼稚園の頃からのつき合い!! いまはこうして仕事でも関わっています。地方と東京の違いのひとつに、こうした子どもの頃からのつき合いが大人になっても続いていて、それが仕事にもつながっているということがあります。東京育ちの自分にはなかった感覚で、なんとも羨ましい関係です。(撮影:土屋尊司)

とはいっても、まだまだこの地域の若い世代の大工は足りません。プロジェクトも始まったばかり。この先、どうなっていくのか?

地域が抱える問題は、それぞれの立場でいろいろと感じることがあるかと思います。その問題を解決するためには、誰かが動くのを待っていてはいけない。山本さんのこの決断、行動を見ていて、そんなことを感じました。

にぎわい空間づくりが、もう少しカタチになってきたらまた紹介したいと思います。

ワークショップ中

撮影:土屋尊司

空き倉庫のリノベーションから関わってみたい! 大工やってみたい!? という方は山本建築Facebookページをご覧くださいませ。イベントなどあるときは告知します。ぜひぜひ、お待ちしております!

information

山本建築

Web:山本建築 公式サイト Facebookページ

information

LivingAnywhere Commons 伊豆下田

住所(NanZ VILLAGE):静岡県下田市一丁目6-18

住所(レジデンススペース):静岡県下田市武ガ浜3-3

Web:LivingAnywhere Commons 伊豆下田 公式サイト

文 津留崎鎮生

text & photograph

Shizuo Tsurusaki

津留崎鎮生

つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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