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商店街を占拠せよ! 立体駐車場を小さなビレッジへ。 アマチュア建築家による「商店街占拠」

  • 2020年2月28日
  • コロカル
勝亦丸山建築計画 vol.1

はじめまして。〈勝亦丸山建築計画〉の勝亦優祐と申します。建築家の丸山裕貴とふたりで、静岡、東京を拠点に活動する設計事務所です。私は2拠点居住をしながらさまざまなプロジェクトに関わらせていただいています。本連載では、静岡での建築設計活動、自治体や大学との取り組み、事業主として設計から運営を行う都内のシェアハウスなど、さまざまなテーマについて、横断的な視点で考えていきたいと思います。

初回となる今回は、活動の原点となった静岡県富士市でのイベントについてご紹介します。

〈勝亦丸山建築計画〉の勝亦優祐(左)と丸山裕貴(右)。

〈勝亦丸山建築計画〉の勝亦優祐(左)と丸山裕貴(右)。

富士山のふもと、静岡県富士市

東京駅から新幹線で1時間、新富士駅で下車すると巨大な富士山に驚くだろう。ここ富士市は南は駿河湾、北は富士山を望み、海から富士山頂へなだらかに登っていくような地形が特徴だ。

富士山は季節ごとに美しい風景を見せてくれるが、雲や空や日の状態で数分ごとに違う表情が現れる。生活するなかでドラマチックな瞬間を見つけると、地元の人ですらついついスマホを構えてしまうほど。

市の人口は約24.5万人、人口は緩やかに減少し、世帯数は増加している。私はこの富士のまちに育った。

東京・富士地図

渋谷の超高層ビルの建築プロジェクトを経て

市内の高校を卒業後、東京の大学の建築学科に進学し、2012年に大学院を出て、大手組織設計事務所で働いた。渋谷の超高層ビルの設計チームで毎日3Dモデルや模型で検討を重ねる日々。200メートル近い高さの巨大な建築は、渋谷のまちに何をもたらすのか、どのようにデザインに反映するのか、先輩の話を聞きながら考えていた。

そのほかにも、オフィスの中では世界中の大規模な建築プロジェクトが検討されていて、世界中の未来の断片がそこにはあるような気がして刺激的だった。

地元のまちには多くの問題が眠っていた

一方で、地元への関心も自分の中で日に日に育っていった。東京の設計事務所を経験したのち、2013年春に富士市に戻ることにした。

大学院時代から建築にハマった理由は、あらゆるスケールの問題を「オモシロ」解決することができる職業だと思ったから。海で本を読んだり、まちを歩いたり、自転車やスケボーで走りまわったり、いろんな人に会いに行ってお酒を飲んだり、地元に戻った私は取り組む問題を探していた。

このまちでは外を歩いていてバッタリ友だちと会ったり挨拶することがあまりないこと、人口が減り始めているのに畑や森が住宅用地として開発されていること、雰囲気のいい個人経営店は郊外にポツンと建ち、専用駐車場を持っていること。

ECサイトや大手でないと物販で生計を立てるのは難しいこと、新規で飲食店を始める人にとって商店街は選びづらく、商店街にはシャッターが下りていること、自治体の財政では新たなインフラ投資など公共事業も減少するであろうこと、など挙げるときりがないが……「問題のようなもの」がたくさん集まった。

これらの問題と私個人のスキルや課題意識、興味関心を直線で結び、企画として自分の動きを定めていった。

まちの人は、商店街が廃れた理由を「駐車場がないから」と言っていた。そこで駐車場がどれだけあるのか調べてみると、車のためのスペースはたくさんあったし、建物が壊されるのと同時に駐車場化し、増えてすらいることがわかった。

青い部分が駐車場、商店街には駐車場がたくさんあることがわかる。問題は運用だ。

青い部分が駐車場、商店街には駐車場がたくさんあることがわかる。問題は運用だ。

“誰か”ではなく、自分がやればいい

商店街の空きスペースに人を誘導するような企画を考えていた。そこで吉原商店街でまちづくり活動をするNPO法人〈吉原宿〉の佐野荘一さんにいくつも企画を提案していたが、「そのアイデアうちでやるよ」とは言ってもらえず、企画のブラッシュアップをし続けていた。

あるとき、佐野さんに「自分でやってみれば? できる支援はしてあげるから」と言われた。私はそこで腑に落ちてしまった。なぜそんなことに気づかなかったのか。

建築家はアイデアを提案し、クライアントを説得し“やってもらう“ものだと思っていた。いまでもとても大切な言葉として残っている。「マクロな視点」と「ボトムアップの運動体」がつながったような気がした。

富士山と対峙する立体駐車場との出会い

企画を考えながら商店街の建物の中や周辺の道を歩き続け、その立体駐車場と出会った。それは5階建ての自走式の駐車場で、閑散とした商店街のシャッター通りからぐるぐるとらせんを描き、屋上を目指して上っていく。

吉原商店街にある立体駐車場。

吉原商店街にある立体駐車場。

ここも車のためのスペースだなぁと思い、コンクリートと白線を見ながら、立体駐車場を上っていく。屋上に差しかかったとき、一気に視界が開けた。巨大な富士山の全容と、なだらかな斜面に張りつくようなまちが見えた。それらは商店街からは建物やアーケードによって普段見えなかった景色だった。

立体駐車場の屋上に差しかかると、富士山がドーン。

立体駐車場の屋上に差しかかると、富士山がドーン。

この場所、この景色を多くの人に知ってもらいたいと思った。資金はもちろんなかったので、まちのいろんな人たちの力を寄せ集めて企画をたて、この駐車場の所有者である佐野さんに3日間無償でスペースをご提供いただき、イベント「商店街占拠」としてまとまっていった。

商店街を占拠せよ

初めてイベント運営を経験するので、いくつものトラブルに直面しながら、ひとつずつ対応していった。

屋上にプールを設置することになり、約7トンの水を地上20メートルまで持ち上げる方法を、地域の防災屋さんに相談をしながら試行錯誤。お隣の民家にご協力いただきホースを屋上までつなげ、水圧で上がることが判明し落着した。運営メンバーの「この屋上でプールに入ったら絶対気持ちいでしょ!」という情熱の賜物だ。

そのほか、屋上を暖色系の照明で飾りつけるため、商店街振興組合にすずらん灯を提供していただいたり、地域の電気屋さんに出店者ブースへの配線をお願いしたり、多くの地域のみなさんのご協力のもと準備を進めていった。

こうして2013年に初めて「商店街占拠」を開催。2015年まで計3回、毎年夏に3日間開催していった。開催を繰り返すごとに、運営メンバーやまちの人々の意見を聞きながら改善されていき、1年目は500人ほどの来場者だったのが、3年目には3000人ほどになった。

地元の子どものダンスチームによる発表会。

地元の子どものダンスチームによる発表会。

コンセプトと仕組み+パッションでまちが動く

商店街占拠への参加を、

1 来場する

2 出店する

3 共用部やステージでパフォーマンスをする

4 企画やアイデアを持ち込む

という、4つの方法で定義した。

ナンバリングされた駐車スペースはそのまま出店者ブースとすることで、出店者がらせん状に並ぶミニ商店街のような空間ができあがった。

駐車スペースの白線をそのまま出店者の区分けに使う。

駐車スペースの白線をそのまま出店者の区分けに使う。

商店街の利用者が減り、上層階から利用率が下がる立体駐車場。空きスペースの活用として、5階建のうち4階から屋上をイベント会場とした。

商店街の利用者が減り、上層階から利用率が下がる立体駐車場。空きスペースの活用として、5階建のうち4階から屋上をイベント会場とした。

屋上にはスケートランプや、プール、ステージや、ラジオブース、飲食系のブースも。夜は映画を大画面で楽しんだり、規制のない公園のような空間ができた。

遠方から観光感覚で近くの宿に泊まり参加する人や、出店者の中には、3日間テントを張って駐車場に住んでしまう人もいた。初めてイベントに参加した人やプロの画家やクラフトマンなどが混ざり合い、出店者同士のコミュニケーションが盛んに行われる。近所におもしろい人たちがたくさんいて、まちを歩くとたまたま仲間に出くわし、あいさつをするような「小さなビレッジ」のような雰囲気だった。

私たち主催者も会場で3日間を過ごすので、本当にそのビレッジの住人になったような錯覚に陥るほどだった。コンセプトはタイトル「商店街占拠」のとおり、「まちを超能動的に使い倒してみること」。参加者も運営メンバーも私も、誰もがまちを占拠している状態だった。

静かになった夜の屋上で、映画『オキュパイ・ラブ』の上映。

静かになった夜の屋上で、映画『オキュパイ・ラブ』の上映。

「吉原祇園祭」の宮太鼓セッション。祭りでは決して交わらない異町内同士の交わりが実現した。

「吉原祇園祭」の宮太鼓セッション。祭りでは決して交わらない異町内同士の交わりが実現した。

結局、3回目の2015年は予算50万(出店料や広告料などの売り上げ見込み)でなんとか赤字にはならず、ホッとした。3年間の累計利益は+10万円ほどだった。

運営メンバーは3回の実施を経て、コアメンバーが3人、その他12人というチームができあがっていた。私を含め運営メンバーは全員がボランティアで、みんな別の仕事をしながら夜に集まってディスカッションしたり、準備を進めていた。その過程でみんなのスキルやアイデア、そして熱量が集結して「商店街占拠」はつくられていった。

「商店街占拠」の運営メンバーたち。

「商店街占拠」の運営メンバーたち。

私には目の前にあるまちで、なにをしようともすべてが自由だと感じられたし、運営メンバーもそれを楽しんでいるように見えた。きっとその雰囲気は、当日3日間をともに過ごした出店者のみなさんや来場者の方々にも伝わったのではないだろうか。

目の前には未開の土地、商店街の空き家などが広がっている。動き方次第でどのようにもできる。この立体駐車場のスペースを占拠した人々が少しずつ、このまちの空きスペースを占拠していく風景を思い描いていた。

イベントを通じて、実際に商店街に関わりを持った人々が増え、新たな取り組みが起きてきたように思う。

次回は、「商店街占拠」の次のステップとして開始した、吉原商店街の築53年のRC4階建てのビルをイベントスペース、店舗、シェアオフィスの複合ビルへリノベーションしたプロジェクトについてお伝えしたい。

writer profile

Yusuke Katsumata

勝亦優祐

かつまた・ゆうすけ●〈勝亦丸山建築計画〉代表取締役。1987年静岡県富士市生まれ。工学院大学大学院工学研究科(木下庸子研究室)修了。静岡県富士市と東京都北区の2拠点で、建築、インテリア、家具、プロダクトデザイン、都市リサーチ、地域資源を生かした事業開発等の活動を行っている。http://katsumaru-arc.com/

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