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この美しい「棚田」を守るために―― 小さなビジネスで 耕作放棄地を救え!

  • 2019年6月25日
  • コロカル

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

田植えの季節になりましたね! 6月初旬は毎日田植えをするので、昼間は限界まで体を動かして、夜は泥のように眠る日々。

田植え作業のあとって、なぜだかプールのあとのように深い眠気がやってくるんですよね。おかげで夜はPC作業中に寝落ちしてしまうほど。(この疲れ、なんだかんだで嫌いじゃないですけどね(笑))

というわけで、今も絶賛田植え後に原稿を書いているので、まだ外は明るいのに、すでに眠気がMAXでやってきております。どうか最後までおつき合いくださいませ。

田んぼの中でいろんな生き物を見つける子どもたち。

田んぼの中でいろんな生き物を見つける子どもたち。

裸足で田植えをすると、水中の生き物の動きや、泥の不思議な感触、さまざまな刺激によって脳が活性されるような気がします。

裸足で田植えをすると、水中の生き物の動きや、泥の不思議な感触、さまざまな刺激によって脳が活性されるような気がします。

さて、今回のテーマは「小さなビジネスで、地域が抱える課題と向き合う」です。

いとしまシェアハウスの田んぼがあるのは、山の勾配に沿った、ユニークな形の田んぼが連なる棚田エリア。

水面に映り込む空、ふわふわと飛び回るホタルたち、カエルの大合唱。こういう風景を見て「美しい棚田のあるところに移住してみたい」と思っている方、多いのではないでしょうか。私もそのうちのひとりでした。

移住して6年、変化する棚田の風景に毎日癒され、この風景に心から惚れ込んでいます。

田植え前の、鏡のような棚田。1年に数日しか見られないこの景色は、住人だからこそ見られる特権。

田植え前の、鏡のような棚田。1年に数日しか見られないこの景色は、住人だからこそ見られる特権。

ところが、実際に住んでみると、この美しい棚田が大きな課題を抱えていることがわかりました。棚田の担い手不足が深刻化しているのです。

若者たちは皆、まちに出て働いているため、集落にある棚田管理のほとんどは平均年齢65歳以上の高齢の方が担っていますが、後継者が見つかりません。

棚田は昼夜の温度差が大きいこと、水源に近く水がきれいなことなどから、おいしいお米が育つといわれていますが、平坦地の水田に比べると「労力2倍、収量半分」といわれるほど生産性が低く、ビジネスとして回していくのは非常に難しい仕組みなのです。

水面に映り込む雲がきれい。

水面に映り込む雲がきれい。

田んぼの面積が小さく、収穫量が少ないこと、大型の機械が入れられないこと、石垣を守るために除草剤は使わず、こまめに草刈りをしなければならないこと……。

こういう理由から、大規模農業が広まった1970年代から棚田の耕作放棄は加速、今や日本の棚田は、全盛期の約4割が失われてしまったといわれています。

私たちの集落でも、田んぼを手放す人たちが増えてきました。耕作放棄地が増えると、景観が損なわれるだけでなく、荒れた土地に野生動物たちが下りてきて、石垣を崩したり、畑の作物を荒らしたり……。その影響で、さらに耕作放棄が進むという悪循環も起きています。

大きく育った稲の苗。

大きく育った稲の苗。

確かに「食料の生産」だけの面から見たら、棚田は非効率かもしれません。けれど、里山の棚田にはたくさんの“役割”があるのです。

・大雨の際に自然のダムの役割を果たし、増水を抑えて土砂災害を防ぐ

・水が地中にゆっくり浸透し、不純物をろ過することで、美しい地下水を蓄える

・土の水路やあぜ道には絶滅危惧種などの生き物が多く生息し、生物多様性が守られる

・美しい景観で人の心を癒す力がある

生きた化石、カブトエビ。田んぼの雑草を食べてくれるうえに、泥をかき混ぜて水を濁らせ、光を遮ることで雑草の発芽を防いでくれます。

生きた化石、カブトエビ。田んぼの雑草を食べてくれるうえに、泥をかき混ぜて水を濁らせ、光を遮ることで雑草の発芽を防いでくれます。

里山にとって、棚田はかけがえのない存在です。けれど本来、棚田は日々の暮らしのそばで活用されてこそ、成り立つもの。ライフスタイルや働き方、物の価値が変わり、棚田の必要性を感じられなくなってしまった現代で、その文化を守っていくことは簡単ではありません。お金も稼げないし、手間も時間もかかるからです。

糸島の棚田。

そして、一度手放され、荒れた田んぼに以前の生態系が戻ってくるまでには、長い時間が必要になります。それがよくわかっているからこそ、地元の人たちは1年でも「休めない」と、棚田での米づくりを続けています。今、里山の棚田はそうやってふんばる地域の人たちの思いだけでなんとか回っている状態ですが、それもいつまで保てるかはわかりません。

山が荒れれば、その先にあるまちにもいつか影響が出てきます。土砂崩れ、洪水、川の氾濫……。最近よく聞くこういった災害も、里山の荒廃が関係しているともいわれています。

手遅れになる前に、今ある棚田だけでもなんとか守っていかないと! それが、棚田の問題を目の当たりにしたこの場所で、強く思ったことでした。

無事田植えが終わって、達成感でいっぱい!

無事田植えが終わって、達成感でいっぱい!

そこで、この課題を解決すべく、去年からスタートしたのが〈棚田のオーナー制度〉です。

耕作放棄地を増やさず、棚田を管理していくには、そこに小さなビジネスをつくることが欠かせません。

例えば、棚田を所有する農家の生活が守られるように、ビジネスで小さくとも保障する、というイメージでしょうか。農家が「儲かる」ということよりも、棚田に関わる「時間やキッカケをつくる」ためのものです。

〈棚田のオーナー制度〉の仕組みとは?

舞台となるのは、集落のなかでも一番小さな田んぼが連なる、美しい棚田です。

初めての取り組みでしたが、去年は4団体がオーナーになってくださいました。

初めての取り組みでしたが、去年は4団体がオーナーになってくださいました。

機械が入れられないからこそ、手植え・手刈り・天日干しなど、昔ながらの方法でお米を育てています。これはまちの人たちに、この小さな棚田のオーナーになってもらい、お米ができるまでのプロセスを肌で感じ、最後は育てたお米を食べてもらうというプロジェクト。

基本的な田んぼのお手入れは、私たちや集落の人たちが担当。それによって地域に小さな雇用が生まれ、棚田を守っていくことができます。

棚田のオーナーさんは、まちに暮らしながらも

(1)棚田に自分の田んぼが持てて

(2)普段流通しない棚田米(しかも自分たちが育てたもの!)を食べることができ

(3)さらに里山保全に参加できる

のです。

月に1回田んぼの草刈りをしたり、秋には稲を天日干しするための竹を山に採りに行ったり、里山で行われてきた昔ながらの米づくりを、ひと通り体験してもらいます。

オーナーさんと、竹を刈りに山へ。

オーナーさんと、竹を刈りに山へ。

たわわに実った稲穂。

たわわに実った稲穂。

昨年はオーナー同士の交流を深めるために、自分たちで育てたお米を持ち寄って食べる収穫祭も企画。皆、初めての収穫に大喜びしてくれました。

2年目の今年は新たにオーナーさんが増え、棚田に新しい看板を増やしました。これまでオーナーさんのほとんどが、同じ福岡県内の方だったのですが、今年から東京から通ってくださる方も増え、うれしい限りです! 毎月来られるというよりは、数か月に一度、お仕事と旅行などを兼ねて参加してくださるそうです。

ここに通ってくれる人が増えるということ、田んぼを守る仲間ができて、とても心強く思っています。

初めての田植えをやりきった新オーナーさんたち。

初めての田植えをやりきった新オーナーさんたち。

そして、棚田のオーナー制度には、もうひとつ隠れた目的があります。それは糸島に関わる「関係人口」を増やすこと。

関係人口とは、IターンやUターンのような移住者・定住者ではなく、住む場所は別にありながら、地域と関わる人たちのことです。

一度きりのイベント参加ではなく、“定期的”な関わり合いであり、オーナーになることで「地域のことが自分ごとにつながる」というところがポイント。

子ども達も率先して田植えのお手伝いをしてくれました。

外部から通ってくれる人たちが、棚田のような地域課題に一緒に取り組んでくれることで、地域が守られたり、新たな雇用が生まれたり、地域に対する愛着が生まれたりするキッカケとなってくれるのです。

そしていずれ、そのプロジェクトのなかから、5年先、10年先に、地域に移住してきてくれる人たちが生まれたらいいなと思っています。

耕作放棄地があちらこちらに目立つ、糸島の棚田。

このオーナー制度の棚田も、道沿いから見下ろすと美しいのですが、ドローンで上空から見ると、ちらほら耕作放棄地が目立ちます。

特に山沿いの荒地はイノシシの被害も大きく、そこから私たちの棚田に侵入されてしまうことも。この耕作放棄地を、棚田のオーナー制度でいつか復活させたいなあというのが、今のささやかな野望です。そうしたら、ここの担当になったオーナーさんとは開墾から一緒に始めたいですね。果てしない作業になりそうですが、一番変化を感じられる、やりがいのあるプロジェクトになると思います! 

いとしまシェアハウスの棚田オーナー制度に興味がある方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

まだ走り始めて2年目、小さな子どものようなプロジェクトではありますが、おかげさまで少しずつ成長しています。一緒にこの風景をつくり、次世代に残していきませんか? 

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今日のシェアハウスごはん

田植え中のお昼ごはんは、田んぼの隣で。

田植えの際のランチ。

田んぼの隣でお昼ごはん!

今年はアフリカン音楽のライブ演奏で、田植えを応援してもらいました。暮らしのなかに音楽があるって、まさにこのことだなあと実感。

ご近所さんから差し入れでいただいたみたらし団子。

田植え作業後のごはんやおやつはおいしい!

おやつはご近所さんからの差し入れ。毎年恒例のみたらしだんごをいただきました!

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CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森

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