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上空から見る絶景! 建築家によるドローン空撮と空き家活用の意外な共通点とは?

  • 2018年11月30日
  • コロカル

blueto建築士事務所 vol.6

今回はこれまでの空き家活用とは違ったテーマの話をします。

〈blueto〉では、建築設計や住まいのリノベーション、空き家活用を行う建築業務のほかに、ドローンを使った映像制作も行っています。

「なぜ建築家が映像を撮影するの?」「なぜドローン?」と思われるかもしれません。ところが空き家活用などの建築関連の仕事とbluetoの映像制作とは、本質的な共通点があるのです。

3つの動画制作の事例を振り返りながら、建築家ならではの情報発信について考えていきたいと思います。

初めてのフライトでドローンを紛失

ドローンを始めたのは、2016年5月頃です。いまとなっては一般的に使用されていますが、当時はまだドローンが世に出始めたばかりの頃でした。

きっと空から見る丹後の景色は美しく、まずは自分自身で上空から丹後の景色を見てみたいと思っていました。

そこで、当時1万円程度のホビードローンを購入しました。いま思えばかなり安価なドローンでしたが、カメラつきでスマホと連動して空からの景色が見られると、ワクワクしながら空撮に挑戦したことを覚えています。

まちなかで飛ばすことはできないので、初めての飛行場所は丹後の日本海上空でした。5月頃は風が強いため、一度飛ばすと一定の位置を維持することができず、かなり不安定な飛行で空撮どころではありません。

最初は高度を地上5メートル程度にしていましたが、高度が足りないためか思った映像が撮れず、思い切って20メートルくらい上空に飛ばしました。すると急に大きな風が吹き、ドローンは海のほうへ流されていきました。

必死でコントロールしようとしたのですが、操作不能となりそのまま海の彼方へと消えて行きました。まさかの初日、ドローンを海でなくしてしまったのです。

かなり落ち込みましたが、どうしても空撮が諦めきれず、すぐに次のドローンを購入しました。

次はGPS機能がしっかりしている〈Phantom3〉という機種にしたところ、機体がしっかりしており、難なく空撮を成功させることができました。

その画面に映った海とまち並みはとてもきれいで、本当に感動しました。上空から見る京丹後の景色は、普段地上から見ているものとは全然違った印象がありました。

2017年京丹後フォトコンテスト ドローン特別賞を受賞。

2017年京丹後フォトコンテスト ドローン特別賞を受賞。

初日にドローンをなくしたことでいまでも慎重に飛ばすのが癖となり、それ以来墜落させたことはありません。

人が主役の動画制作

bluetoが制作担当している動画は、丹後地域や地元企業のPR動画を中心に、最近では丹後の企業の求人動画も増えてきています。その際はただ単に動画を撮るのではなく、クライアントからしっかりと「なにを目的として動画を発信したいか」を丁寧にヒアリングします。

撮影までの手順は以下の通りです。

1動画を発信したい目的をヒアリング

2動画のコンセプトを提案

3作成した動画の発信方法を事前にしっかり決めてから撮影

実は空き家活用や住まいのリノベーションの場合も同じです。

1リノベーションの目的をヒアリング

2空間のコンセプトを提案

3完成後の暮らし方をイメージして設計

リノベーションと動画制作はまったく違う業種に見えますが、このように大まかな作業の流れは同じなのです。

また、bluetoの映像の特徴は、人をメインとした動画であることです。撮影では、一眼レフカメラとドローンを併用しています。

どんなにいい場所や物、建物、料理などを写しても、そこで活躍する人(主人公)の重要性には決してかないません。空撮映像は人の目をひくには効果的ですが、それだけで物語を伝えることはとても難しいのです。

ドローンで空撮した風景は、人の物語を引き立てるひとつの要素。ヒアリングの際はその人の物語をしっかり聞き、できるだけ人を中心とした内容を提案するようにしています。

「どこにでもある田舎」京丹後の日常に秘められた魅力

2018年には京丹後市の移住促進動画を制作しました。

京丹後市は、旧丹後町、旧網野町、旧久美浜町、旧弥栄町、旧大宮町、旧峰山町の6つの町が合併してできた市です。各町とても個性的でいい町なのですが、市全体で見ると広すぎてすべての特色を拾いきれず、どうしても広く浅いプロモーションになってしまいます。

そこで提案したことは、実際に京丹後市に移住してきて活躍されているIターン者にスポットを当て、丹後の暮らし目線の動画を作成することでした。

日本中に多くの市町村があるなかで、なぜ京丹後市を選んで移住してきたのか。移住者のリアルな暮らしを見つめれば、その答えに触れられる気がしました。それを動画という手段で発信すれば、きっと魅力的な移住促進につながると思ったのです。

「“どこにでもある田舎”の京丹後市を選んだ暮らし」というコンセプトのもと、1年を通じて、夏と冬のふたつのバーションを制作しました。

夏バージョンは、移住されたばかりで農業を始めた井上夫婦にお願いをして、ひと夏かけて密着取材させていただきました。

井上ご夫妻の仕事や暮らし、遊びに密着するなかで、地元民である僕にとっては当たり前に感じることも、移住者のおふたりの反応を通じて見ると新鮮に思えて、感動してしまうことがたくさんありました。

例えば、夏祭りの花火大会。打ち上げ本数は少ないですが、都会では考えられないくらいの近距離で上がり、とても迫力があります。

自転車で田んぼを走るシーンは、以前ドローンで空撮したことがある場所で、一度ここを自転車で走ると気持ちがいいだろうなぁと思い、走ってもらいました。

完成した動画がこちらです。

京丹後市移住プロモーション動画 夏ver.「京丹後市を選んだ二人の暮らし」

冬バージョンは、夏と同様に人をメインとした内容がいいと思っていました。

発注主である京丹後市としては、20〜30代の若者に移住してきてほしいという希望がありました。そこで、京丹後市で活躍されているI・Uターンの若者3名を主役にすることにしました。

3名は、もともと地域おこし協力隊員として京丹後市に着任されて、いまではそれぞれ独立開業している方々です。京丹後市の若者の日常を通じて、京丹後市での暮らしと仕事がどのようなものか、移住希望者がイメージしやすいよう心がけました。

京丹後市移住プロモーション動画 冬ver.「京丹後市を選んだ若者の暮らし」

どこにでもある田舎の京丹後市ですが、それぞれの人々がそれぞれに魅力的な暮らしをしています。移住者から見る丹後は、とても新鮮で刺激的な姿をしているように感じました。

コンセプトを磨き、京丹後ならではの観光PRを

同じく2018年3月には、「琴引浜観光宿泊組合PR動画」を制作させていただきました。

この動画は、京丹後市網野町掛津という地区にある旅館組合のPR動画です。この地区では、砂の上を歩くとキュッと鳴る“鳴き砂”で有名な琴引浜があり、夏は海水浴、冬は日本海の蟹料理を目当てに多くの人が訪れます。しかし、近年では観光客の減少という課題がありました。

そこで、ドローンを活用したプロモーションビデオを作成してほしいとbluetoへ依頼がありました。

さっそく組合長さんと数名の組合員さんにヒアリングを行ない、撮影内容を検討しました。

夏の海水浴シーズンに比べて、冬のカニシーズンのホームページへのアクセス数が少ないことや、日本海のカニというだけでは、ほかの地域との差別化が難しいのでは、という意見が出ました。

また、話を聞いていると、既存のお客様のほとんどがリピーターで、旅館のご主人や女将さんとお客様との関係には、親戚のような密なおつき合いがあることがわかりました。「いらっしゃいませ」ではなく「おかえりなさい」と挨拶されるような、ここを第2の故郷のごとく、冬になると毎年必ず訪れている常連客の方も多くいるそうです。

このヒアリングの結果、「帰りたくなる宿 琴引浜」がコンセプトになりました。

ただ単に日本海のカニや各宿の設備を動画で訴えるだけでは、ほかの地域との違いはわかりません。琴引浜で大事にしているお客様とのアットホームな関係こそが琴引浜の強みであり、発信すべき点だと思いました。

8軒の宿にインタビューして、顔出しをお願いして回りました。初めは嫌がられる方もいましたが、琴引浜のためだと説明すると協力的に撮影に参加していただくことができました。

コンセプトをしっかりと決めたことにより、何を撮るべきか、どんなインタビュー項目になるのかが具体的になり、編集もしやすかったです。

4か月ほどの撮影期間を終えて、無事に公開することができました。

琴引浜宿泊観光組合PR動画

動画制作から見えてきた「リノベーション」の本質

個人的な興味から始めたドローン撮影ですが、いまでは京丹後の移住や観光PRの新しい切り口として情報発信することができています。

そのなかで「やって良かった」と思えたことがあります。それは動画を通じて、丹後の地元の方にこの土地の良さを再発見してもらえたことです。

ドローンで空撮した景色や移住者のインタビューを見た地元の方からは「ここはこんなにいいところだったんだね」と驚きの声を聞くことができました。

空撮という、普段人間の目では見ることができない目線も織り交ぜながら、地域の人や風景の新たな魅力を発信すること。

それは空き家を「丹後の地域資源」という視点でリノベーションして、その価値を伝えていくことと本質は同じなのではないかと思っています。

地方におけるリノベーションとは、建築に限らず、地元の人が見えていなかった資産や魅力を再発掘して、編集して、発信することだと確信することができました。

次回はついに最終回です。里の公共員としての“半公半民”の取り組みについて、そして今秋に移転したbluetoの新オフィスについてご紹介します。

writer profile

Dai Yoshioka

吉岡 大

よしおか・だい●1987年京都府京丹後市生まれ。2016年暮らしのリノベーション〈blueto(ブルート)〉設立。住まいのリノベーション、空き家活用、動画製作を行う。現在移住者向けの住まい(桃山ノイエ、島津ノテラス、甲山ノイエ、島津ノイエ)を運営。ドローンによる空撮を生かした丹後地域発信動画制作などを行う。京丹後市三重森本地区の里の公共員として地域全体のリノベーションを行なう。http://blueto.jp

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