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スタッフ、イベント、情報発信。地方でカフェを続けるコツとは?

  • 2018年9月6日
  • コロカル
マチザイノオトvol.3

こんにちは、(株)地域交流センター企画の明石です。前回に引き続き、〈カフェuchikawa六角堂〉の取り組みについてお話しします。

ついにオープン。体にやさしいサンドイッチ専門カフェ

2013年1月22日、雪が舞う富山の灰色の空の下、射水市の漁師町の片隅に小さなカフェがオープンしました。

計画から完成するまでの段階では「オープンするまでが大変だなぁ」と思っていたのに、実際にオープンしてみると、ここからの道のりのほうが100倍も大変だということがわかりました。

まず、工事が終わってから本格的に店の準備をする段階で、見えていなかった山ほどの課題がありました。僕はカフェを経営したことがないので、カフェの店長を経験したことがある人を店長として雇い、彼と一緒に準備を進めました。

夜遅く遅くまで開店準備をしている初期メンバー。

夜遅く遅くまで開店準備をしている初期メンバー。

工事を進めている一方で、カフェに関する本を読みあさったり、東京のカフェ巡りをしたりして、素人発想ながら店づくりを構想しました。

店のメニューのコンセプトは僕の担当です。以前から富山県においしいサンドイッチを出してくれる店が少ないと思っていたので、サンドイッチ専門店のカフェにしようと決めていました。

体にやさしい10種類のサンドイッチを考えました。

体にやさしい10種類のサンドイッチを考えました。

アトピー体質の僕は、化学調味料や保存料などの添加物、化学肥料を使った野菜などが苦手です。なので、外食を心から楽しむことができません。きっと同じような思いをしている人が少なくないはずだと思い、有機栽培や天然由来の食材にこだわったメニュー構成にしました。

コーヒーや紅茶、ジュースやアルコールに至るすべてのメニューにその考え方を取り入れましたが、予想以上に仕入れ原価が高くなり、すべてのメニューが都会価格になってしまいました。それでも、メニューブックに材料やこだわりを書き綴れば、お客さんに納得してもらえると思い、価格はそのままにしました。

すべてのメニューに原材料を表示しています。

すべてのメニューに原材料を表示しています。

僕は「考える」のが担当ですが、それを「カタチにする」のは店長です。毎日、厨房で唸っていた光景を思い出しますが、さぞかし大変な作業だったのではないかと思います。

コーヒーについても、ネルドリップと本格的なマシンで抽出するエスプレッソ系のコーヒーと2種類を提供することにしました。豆は富山市内で有機栽豆を自家焙煎しているショップにお願いして、オリジナルのコーヒーを用意してもらいました。

コーヒーのほか、紅茶やソフトドリンクを含めるとかなりの数のメニューです。このこだわりが仇となり、まったく準備が追いついていないまま、オープンの日を迎えました。

連日多くの方に来店していただきましたが、その波も1か月程度で落ち着き、あとは閑古鳥が鳴いていました。よく言われることですが、御祝儀相場が終わってからが本番です。オープンして1か月間の反省をもとに、スタッフと一緒に改善を重ねていきました。

ご近所さんからの応援を、じんわりと感じながら

お店の経営もさることながら、僕が個人的に一番気にしていたのが、ご近所さんの反応でした。

工事をしているときにお会いした近所の方々は、まだカタチになっていない店への不安な気持ちがあったに違いありません。応援してくださる方がいる一方で、「こんなところに喫茶店をつくっても、1年ももたない」と何人もの方に言われて、へこみました。

来店するお客さんとしてではなく、近所にこんなカフェができたことを住民としてどう思っているのか、を知りたい気持ちに駆られていました。かと言って、こちらから聞くのも変な話ですから、自然に会話ができるタイミングを待つことにしました。

その反応は、思わぬところからやってきました。土日になると遠方からの観光客が増えます。そのうちの何人もの方から「場所がわからずウロウロしていたら近所の人が親切に教えてくれた」とか、「内川を歩いていたら、近くにカフェがあることを近所の人が教えてくれた」といった話を聞くようになりました。

それから折に触れて、そんなエピソードがあったことをご近所の人に話すようになりました。すると、「わかりづらい場所だから仕方なく教えてあげとる」「潰れたらかわいそうだから宣伝してあげとる」など、素っ気なさの中に愛情を感じる言い方で、いつも応援してくれていることを変化球で伝えてくれました。

地方はメディアとの距離が非常に近く感じます。uchikawa六角堂がオープンしたという小さな出来事でも、新聞やテレビ局などマスコミ各社がニュースとして取り上げてくれました。それを読んだり観たりした近所の方が「出とったね!」と言ってくれるときは、うれし恥ずかしの気分です。

感動の瞬間。カフェから眺める曳山祭り

10月1日、待ちに待った曳山祭りの日がやってきました。

店の前の三叉路を、各町内から合計13基の曳山が列をなして通っていきます。この場所は曳山を回転させるのが難しいという噂で、ひとつの見せ場になっていると聞きました。

昼の花山と、夜の提灯山とで装いが変わり、今年は提灯山が三叉路を通る予定でした。ところが、夜に人身事故が起きてしまい、祭りはそこで中断。その年は、uchikawa六角堂の前を曳山が通ることはありませんでした。

その翌年、同じく10月1日、店の前の三叉路を花山が通っていきました。この日の感動は一生忘れません。

13基の曳山が通り過ぎる間、いろいろな場所に移動しながら、写真を撮りまくりました。この日、初めてカフェの存在に気づいた人も多かったように思います。この瞬間を迎えることができて、地域とのつながりが一層深くなったような気持になりました。

地方でカフェを続けるノウハウ

ここからは、地方の漁師町の片隅にある小さなカフェがどうやって生き残っていくか、そのノウハウを伝授いたします。大したノウハウでもないので、あまり期待しないで読んでください。

1 スタッフを集める

地方において、飲食店のスタッフを集めるのは大変なことです。都会でもそうであるようにいまや仕事は選びたい放題なので、立ち仕事で長時間労働の飲食店は人気がありません。さらに、駅から遠い田舎の片隅では、大学生のアルバイトも期待できません。

たぶん、uchikawa六角堂のように、こだわりが強くて、少し変わったカフェで働きたいという人は、富山県内にあまりいないと思います。最初は、店長を含めて地元在住の若者を中心に雇用しましたが、長続きせずに辞めてしまいました。その理由はさまざまです。

その後、地元からの応募は皆無でした。それでついに、都会や他県で働いている人を富山に呼び寄せようと、全国版の求人メディアや、UIターン就職に力を入れた求人メディアに広告を載せることにしました。

その反響は予想以上で、県外から信じられないほど多くの応募がありました。働き方の価値観やライフスタイルが変化し、地方が有利になっているのを実感した出来事でした。

その中のひとりが、いまの店長をやってくれている北原和樹くんです。彼は三重県の地域おこし協力隊の面接に落ちたのがキッカケで、ほかの地方でおもしろい仕事を探していたのだそうです。

東京生まれ、デザインを勉強したのちに料理の世界へ、将来の夢は映画館をつくること。みんなからは「館長」と呼ばれています。そんな彼は、彼女と一緒に富山へ移住して、こちらで結婚しました。

2 イベントを開催する

オープンしてから1〜2年目は、とにかくイベントをするのが大事だと思いました。交通の便が悪い場所にあるカフェなので、夜の来店は期待できません。

そこで考えたのが、店の存在を知ってもらうための夜のイベントです。普通のイベントではインパクトが弱いと思い、カルチャー色満載の企画にしました。主にはアコースティックライブです。知り合いを頼って県外で活動しているアーティストさんにお願いをしました。

最初にコーヒーや軽食を召し上がっていただき、その後に演奏を開始という構成です。宣伝は店側とアーティスト側の両方で行い、売り上げは折半というかたちが多かったです。

アーティストのファンの方も遠方から来ていただけるので、店としては大変うれしいことです。毎回のようにチケットは売り切れに、といっても20名のキャパですから、あっという間に満席となります。

あとは、隔週水曜日の夜に「夜寄るカフェ」という勉強会を開催しました。こちらは僕が進行を務めて、毎回富山県内で活躍している各界の若手の方をゲストにお呼びし、ゲストが話をしたいテーマで1時間ほどトークするという内容です。出演料なしでも、皆さん快く引き受けてくれました。本当にありがたいことです。

ゲストは、デザイナー、建築家、農家、ラジオパーソナリティー、政治家、工芸作家、老舗和装店の社長、酒店の店主、病院経営者など多彩で、参加者は完全予約制の限定8名です。

第25回開催までを数えた頃に、夜カフェをするお客さんが増えてきたことで、いったん中断しました。リピーターが多く、僕自身も大変勉強になった企画でした。このときお呼びしたゲストの多くはいまでも交流があります。

カフェは、カルチャーを発信してなんぼ! 数々のイベントを通じて、そう確信しました。最近は、イベントがかなり手薄になっているので、また復活させたいと思っているところです。

3 思いを発信する

いまやSNSをはじめ、個人がインターネット上に発信できる方法は山ほどあります。uchikawa六角堂はFacebookを中心に、日常の他愛ないことを発信してきました。たぶん、カフェを経営する誰もがやっていることだと思います。

非常にラッキーだったのは、インターネット以外のさまざまな情報発信の機会に恵まれたことです。

カフェが地元新聞で紹介されるようになってから、講演の依頼が来るようになりました。いままで全国を飛び回って仕事をしていたのに、講演の依頼など数えるほどしかありませんでした。ところが、富山に来てから約8年間で50回近くの講演をしています。ときには富山のことを東京で話す機会も何度かありました。

人前でしゃべるのが苦手だった僕が、いまでは1時間の講演を普通に楽しんでやっています。この機会のおかげで、思いを込めたカフェの宣伝をたくさんさせていただきました。

これは特殊な事例のように思えますが、僕はそうではないと思います。最初の講演は、地元の自治会の集まりでした。本当に小さなトピックですが、そのときの様子が新聞で紹介され、それから連鎖が起きて、いまに至っています。

主催者に「なぜ講師が僕なんですか?」と聞くと、「スライドが写真中心で、自分の言葉で語るし、新しい気づきがある」という主旨のコメントを多くいただききました。それが大事なことのようです。文章を書くのが苦手だった僕が、こうして文章を書いているというのも不思議な話です。

どんな場面でも、思いを伝えようと努力していれば、次のチャンスにつながるのだなと思うのです。なぜ自分がこの空き家をカフェにして、経営しているのか、全力投球で発信し続ければ、次がやってくるようです。

uchikawa六角堂が地域の空き家活用の広告塔に

最後に、uchikawa六角堂がオープンしてから、地域の空き家の活用に影響を与えることができたのか!? についてお話しします。第1回目で、このカフェのリノベをキッカケに〈マチザイノオト〉というプロジェクトを始めたことをご紹介しました。

カフェのオープン当時の2013年頃、富山県内では「古民家のリノベ」という文化は一般的に認知されていませんでした。ところが、古い空き家や空き店舗の活用を考えている会社があるというフラグを立ててみると、少ないながらも予想以上の反応がありました。

相談を受けるようになったのは2015年になってからです。ちょうどカフェがオープンして2年を迎えた頃でした。知人から紹介される場合もあれば、カフェに直接来店される方、事務所に電話をかけてこられる方、マチザイノオトを見てメールをくださる方、などいろいろです。

かなり少数ではありますが、富山県内でも古い建物を生かして何かしたいと思う方がいることを知りました。uchikawa六角堂は単なるカフェとしての存在だけではなく、マチザイノオトの広告塔の役割を果たしていることを次第に自覚していきました。

カフェは今年でオープン5周年を迎えました。この間、新湊内川は、映画やドラマのロケ地になったり、まち歩きのスポットとして雑誌で紹介されたりしたおかげで、徐々に県外の方も訪れるような場所になっていきました。

一方で、10年以上前に計画された再開発事業は、計画通りに実行され、空き家になった古い町家は、次々に壊されています。カフェがオープンして以降、この地域にあった町家は確実に300軒以上壊されました。それを毎日のように見ていると、自分のしたことなど、社会に何の影響も与えてない、何も変えることができていないと、自分の無力さを痛感するのです。

いまの僕らにできることは、ひとつひとつの小さな取り組みを確実にカタチにすること、そのために必要なご縁に恵まれること、です。

次回からは、カフェ uchikawa六角堂に続く、内川を中心とした空き家活用の事例をご紹介していきます。

information

カフェuchikawa六角堂

住所:富山県射水市八幡町1-20-13

TEL:0766-30-2924

営業時間:10:30〜20:30(L.O. 20:00)

定休日:月曜、第1火曜(祝日の場合は翌日)

https://inacafe.net

writer profile

Hiroyuki Akashi

明石博之

あかし・ひろゆき●1971年広島県尾道市(旧因島市)生まれ。多摩美術大学でプロダクトデザインを学ぶ。大学を卒業後、まちづくりコンサル会社に入社。全国各地を飛び回るうちに自らがローカルプレイヤーになることに憧れ、2010年に妻の故郷である富山県へ移住。漁師町で出会った古民家をカフェにリノベした経験をキッカケに秘密基地的な「場」をつくるおもしろさに目覚める。その後〈マチザイノオト〉プロジェクトを立ち上げ、まちの価値を拡大する「場」のプロデュース・空間デザインを仕事の軸として、富山のまちづくりに取り組んでいる。

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