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そのおいしさの秘密は…!? ミツバチの楽園〈高橋養蜂〉で上質なはちみつができるまで

  • 2018年9月5日
  • コロカル

ミツバチの楽園づくりから、はちみつができるまで

伊豆下田に移住して、二足のわらじで働く津留崎さん。そのひとつが、ご縁があって働くことになった〈高橋養蜂〉でした。今回のストーリーは、養蜂の仕事を通して知ったミツバチとはちみつのこと。ひとつの巣箱に何万匹という群れをなすミツバチの生態やどんなふうにしてはちみつができるのかなど、これを読むと、はちみつのおいしさが倍増しそうです。

「ミツバチの楽園」づくりから始まる養蜂の仕事

僕は下田に移住してから、いろいろな縁がつながり養蜂場と工務店で働くことになりました。養蜂と建築という不思議な組み合わせの「二足のわらじ」を履いて暮らしています。

移住前から建築の仕事はしていましたが、養蜂の経験はありませんでした。正直にいうと養蜂に興味があったわけでも、はちみつに特別なこだわりがあったわけでもありません(多くの人と同じです)。そんな自分が、移住してきて間もない昨年の夏に〈高橋養蜂〉の養蜂家、高橋鉄兵さんと出会いました。

花の蜜を吸うミツバチ

話をするうちに彼の養蜂に対する強いこだわりと「ミツバチ愛」に驚いたことを覚えています。そして、ミツバチがはちみつをつくり出すだけでなく、多くの農作物の受粉という重要な役割を担っていること、そのミツバチが減っているという現実を知りました。農薬の影響という指摘もあるそうです。

そこで、「ミツバチ愛」あふれる彼は、ミツバチが安心して元気に飛び回れる環境、「ミツバチの楽園」をつくりたいという夢を語ってくれました。そうした縁で、その秋から高橋養蜂に身を置くことになったのです(鉄兵さんとの出会いについてはvol.21、働き方についてはvol.30に詳しく書いています)。

はちみつがどのようにしてつくられるのか? ミツバチがどんな暮らしをしているのか? 高橋養蜂で働くまではまったく知り得なかったことです。また、はちみつという食品の生産現場に立ち会うことで、あらためて食べるということについて考えるきっかけとなりました。

〈高橋養蜂〉での作業風景

そこで今回は、こうして偶然たどり着いた高橋養蜂という職場を通して知った、ミツバチとはちみつについての話です。

ミツバチの巣箱の中

ミツバチの巣箱の中。ひとつの巣箱に2万匹、初夏の最盛期にはその巣箱が3段積み重なって1匹の女王蜂からなる「群」を形成します。6万匹の大家族!

少し季節を戻します。前にこの連載で高橋養蜂のことを書いたのは今年のはじめ。その頃は気温が低く蜂がほとんど活動しておらず、養蜂の作業をあまりしない時期です。耕作放棄地となってしまい獣に荒らされてしまった里山の農園を「ミツバチの楽園」に再生するべく作業をしていました。

そして、春には柵が完成。

柵が完成してしばらくすると、柵の内側と外側では驚くほどに違いが出てきました。柵の外側では相変わらず鹿が出没し、草や木の新芽を食べられています。でも、鹿が入って来ることのなくなった柵の内側は徐々に草木が元気を取り戻してきたのです。

これなら蜜源植物を育てることができる! ということで、草木の種や苗を植えました。

春には春の花の蜜、初夏にはみかんの花の蜜

その頃、暖かくなってきたのでミツバチたちも活発に活動し始めました。養蜂の季節のはじまりです。

ミツバチたちは行動範囲といわれる巣から半径2キロ以内にある花の蜜をたくさん集めてくれます。巣には桜やふじなどの春の花の蜜がたまっていきます。

巣箱の中に、ミツバチが巣をつくるための板「巣枠」が最大8枚入っていて、その巣枠の中の巣房(6角形のひとつひとつの部屋)に働き蜂が蜜や花粉を集めます。

中央の胴体の色が違うのが女王蜂です。こちらはまだ産まれたてなので、まわりの働き蜂(メス)と大きさの違いがあまりありませんが、最終的には2、3倍の体重になります。働き蜂の寿命は1か月、女王蜂の寿命は平均3年で、女王蜂のみが卵を産み、その数は1日1500〜2000個!

もちろん、雄蜂もいます(1群に数百から1000匹程度)。働き蜂より少し大きくて黒っぽい雄蜂は交尾以外は何もしないという怠け者。少しうらやましいと思ってしまいましたが、秋になると働き蜂に巣から追い出されてしまうとか(それはうらやましくない……)。

蜜がたまってくると蜂たちは巣の中で羽で風を起こし、たまった蜜にあてます。そうして蜜の水分を飛ばして熟成させるのです。充分に熟成させたら、ミツバチたちは蜜で蓋(蜜蓋といいます)をして余計な水分が入らないようにします。

この時期に雨が続くと蜜を集めることができなくなってしまい、ミツバチが自ら消費してしまうのでなかなか蜜は増えませんが、今年はうまく集まりました。

蓋の割合が多くなった巣枠を養蜂場から作業場に持ってきて採蜜(巣の状態からハチミツにする作業)します。

こうして春の蜜を採蜜した巣枠を再び山に戻して、みかん畑の多いエリアに巣ごと移動。

下田はみかんの生産が盛んで、多くの種類が栽培されていて、夏前、しばらくみかんの花が咲き続けるのです。巣にはみかんの蜜がたまり、また巣に蓋がされていきます。

ということで春の蜜に続き、初夏に「みかんの蜜」を採蜜します。再び巣枠を巣箱に戻し、みかん畑から別の場所に移動。そうすると、今度は夏の花「カラスザンショウ」などの蜜をたっぷりと集めてくれ、再び採蜜します。

日々の管理から採蜜作業まで

いま、この夏の花の採蜜が終わり、また巣に蜜がたまっている状態です。でも、この蜜はこれからの子育てや巣の外に出なくなる冬に消費する蜜なので採蜜はしません。そして、夏の終わりにはミツバチの天敵、スズメバチの対策や冬を越すための準備が始まります。

こうした季節ごとの作業に加えて、日々、巣箱の点検、管理をします。これが養蜂の一番難しいところとも言えます。

女王蜂や卵・幼虫や働き蜂の様子を見て異常がないかを確認、問題があれば対策を講じる。猛暑だろうが養蜂着を着てこの日々の点検、管理を適切にしなければ、しっかり健康にミツバチが育ってくれず、蜜を集めてくれません。

こうして高橋養蜂では1年に3回、春・初夏・夏の終わりに採蜜をしてはちみつをつくり、商品としています。

「採蜜」といっても、ピンとこないかと思うので、採蜜作業について写真でご紹介します。

まずは地元で売りたい、その思いとは

こうしてつくられた高橋養蜂のはちみつは、いまのところ下田、遠くても伊豆半島内の店舗での販売がほとんどです。むやみに販路を増やすことや売り上げを伸ばすことを目標にしてはいません。

東京に数店舗もあるはちみつの専門店からの打診を受けたこともあるそうですが、お断りしたそうです。受けていればいまより売り上げは安定したかもしれません。でも、受けなかった。

というのも、いまでこそ通年販売する商品が確保できるほどの生産量になったのですが、数年前まではまだ生産量が安定していなかったのです。

「そんな頃から支えてくれたお客さまや販売店、地域の人たちがいるからこそ、いまでもこうして養蜂を続けられている。その感謝を忘れることはできない。とにかくまずは下田で、伊豆でしっかりやりたい」と鉄兵さん。

最後にもうひとつ伝えたいエピソードがあります。

採蜜のため、巣枠を作業場へ持っていくときのことです。そのとき、ミツバチたちはとても怒ります。

考えてみれば……そりゃそうです。必死になって集めた蜜を持っていかれてしまうのですから。ミツバチは普段は温厚で人に攻撃するようなことはありません。でも、このときばかりは違います。一生に一度しか使えないという攻撃のための針をここぞとばかりに使ってきます。それほどに怒っているのです。

でも、こうした過程があってはちみつができます。

はちみつだけではありません。肉や魚はもっと直接的ですが、はちみつと似たスタンスの食品だと卵や牛乳があります。見方を変えれば野菜だって同じかもしれません(植物に感情があるとする説もあるそうです)。

何らかのかたちでの「搾取」があって、食品が、命が成り立っている。そんな当たり前のことを、ミツバチの怒る姿を見てあらためて感じました。

1匹のミツバチが生涯をかけて集める蜜の量はたったの小さじ1杯。心をこめてつくり、おいしくいただきます。

information

高橋養蜂

住所:静岡県下田市箕作787-1

TEL:0558-28-0225

Web:http://takahashihoney.net/

文 津留崎鎮生

text & photograph

Shizuo Tsurusaki

津留崎鎮生

つるさき・しずお●1974年東京生まれ東京育ち。大学で建築を学ぶ。その後、建築家の弟子、自営業でのカフェバー経営、リノベーション業界で数社と職を転々としながらも、地方に住む人々の暮らしに触れるにつれ「移住しなければ!」と思うように。移住先探しの旅を経て2017年4月に伊豆下田に移住。この地で見つけたいくつかの仕事をしつつ、家や庭をいじりながら暮らしてます。Facebook Instagram

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