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ワクワクする“ヒミツキチ”のような場を。古民家をリノベーションしたスペース

  • 2018年8月10日
  • コロカル

「地元が好き」。その思いこそが、すべての原動力

「地元はこんなにすてきな場所なのに、高校を卒業したらみんな市外に出てしまう。どうすれば、若い人にとって魅力的な地元になるのか」

愛媛県八幡浜市向灘で、古民家を改装し、地元の人はもちろん、市外、県外、海外から八幡浜に訪れる人たちが思い思いの“企て”ができる場、〈コダテル〉を2018年1月にオープンした濵田規史さん。

その活動の出発点となったのは、地元のことを大好きな人を増やしたい、というひとつの思いだった。

有数のみかん産地である八幡浜。みかんの山から八幡浜港を一望。

有数のみかん産地である八幡浜。みかんの山から八幡浜港を一望。

「自分の地元のことを自慢できるような場所をつくりたい。大学進学などで一度は市外に出たとしても、絶対いつかは帰ってくる、と思えるような場所にしたい。そうするためには、どんなアクションをしたらいいのか。コダテルのプロジェクトを立ち上げるきっかけは、私の地元への思いでした」と話す濵田さん。

コダテルの“企て人”である濵田規史さん。

コダテルの“企て人”である濵田規史さん。

濵田さん自身、地元の高校卒業後は県外の大学に進学し、就職を機に「どうしても八幡浜に帰りたい」と考え、地元の金融機関に就職。行員として、地域発展のため地元の人とともにまちづくりに関わってきた。

その一方で、NPO法人〈八幡浜元気プロジェクト〉を立ち上げ、まちづくりに関わるイベントを企画するなど活動していた。

地元をワクワクするような場所にしたい。簡単なように思えるけれど、そう簡単なことではない。どうしたら、ワクワクするような場所にできるだろうか、と考えを深める過程のなかで、ふと思い出したことがあった。濵田さん自身の小学校、中学校、高校時代のことだった。

小さい頃から人を楽しませること、何かを企画することが大好きで、近所の人たちを巻き込んで運動会を企画したり、自ら取材、編集をして、新聞をつくってみたり、地域のドラマ制作に挑戦したり、高校生のお店を開店してみたり。とにかく、自分がワクワクするようなことを考え、行動し、周りの人を巻き込んでいろいろな“企て”をした経験だった。

市外県外から訪れる人にとって、八幡浜の活動拠点として利用してもらいたいと濵田さんは考えている。

市外県外から訪れる人にとって、八幡浜の活動拠点として利用してもらいたいと濵田さんは考えている。

「自分自身が県外の大学に進学したものの、卒業したら絶対帰ってくる、という思いがありました。自分のような人間が、もっと増えたらいいんだ、という考えに行き着いたのです。なぜ、帰ってきたいと思ったのか、なぜ地元が大好きだったのか、答えは自分自身の中にありました」

濵田さんが自分自身の中で見つけた答え。それは、小さい頃から地域の人を巻き込みながら「ワクワク」するようなことを企てて、実際に行動してきたこと。

地元愛の原点から導き出した答えは、濵田さんと同じようなワクワクするような企てを、地元の子どもたちに経験してもらいたい。その企てができる、ヒミツキチのような場所を提供したい。そんなシンプルなものだった。

ワクワクするような企てが生まれる“ヒミツキチ”

八幡浜に、ヒミツキチをつくる。濵田さんがめざす方向性は決まった。そこから、「どんなヒミツキチにするか」という模索が始まった。

ヒミツキチ第1号の候補として、築70年になる木造2階建ての古民家があった。玄関から出ると、視界には八幡浜港が広がるというロケーション抜群の場所で、まさに八幡浜を象徴するような風景の中にある建物だった。

「ヒミツキチが地元の子どもたちにとってワクワクする場所であるためには、大人や市外からの来訪者にとってもワクワクする場所であることが大切ではないかと考えました。子どもたちは大人たちと関わることで、いろんな刺激を受けるだろうし、自分たちの企てに大人たちを巻き込んでほしい。大人は大人で、地元で働くことの選択肢を広げるために、業種問わずにいろんな人と出会える場所であってほしいと。

市外からの来訪者は、“八幡浜っておもしろい場所だね”と思って、また訪れてくれるような。大人、子ども、地元の人、市外県外の人が気軽に集まることができるギュギュッと八幡浜の魅力を詰め込んだ場のイメージが、私の中にできていました」と濵田さん。

金融機関やNPOでさまざまなプロジェクトの経験を積んでいた濵田さんにとって、事業計画作成はお手のもの。イメージをひとつひとつ具体的にする段階で、ヒミツキチに3つの機能を盛り込むことにした。

ひとつ目の機能は、学び場。子どもたちや学生が自学スペースとして利用することで、勉強というよりも、これからの働き方や、生き方を学ぶことにつながるような場づくりに。子どもと大人の境界線をあいまいに、つながりを意識したスペースづくりを心がけた。

ふたつ目は、働く場。いわゆるコワーキングスペースだ。フリーランスをはじめ、複業やパラレルワークなど、多様化する働き方に対応できるようなワーキングスペースを目指した。コダテルの利用者がつながり、コラボレーションや新しい事業の立ち上げなど、新しいつながりを生む場所としての役割を持たせた。

そして、3つ目は地元の人と地域外の人が交流できる場としての役割。講演会、講習会の開催も柔軟に対応し、宿泊機能も持たせることで、幅広い利用シーンを想定した。

使う人が育てていく場

自己資金や支援金をもとに、築70年の古民家のリノベーションに着手したのは、2017年の10月。数年間誰も住んでいなかった純和風の古民家を改築することは、予想外のことだらけだった。

「床を開けてみたら、水漏れや柱の補修など、追加の工事が必要となり、当初考えていた予算を軽くオーバーしてしまいました。そこで、クラウドファンディングで支援者を募り、不足していた資金の一部は支援者の方たちのお力を借りることにしました」

濵田さんの熱い思いに、全国から賛同者が集まり、クラウドファンディングのプロジェクトは目標を達成。2018年1月20日に無事オープンの日を迎えることができた。

さて、濵田さんの地元が大好きな思いがギュギュッと詰まった、大人も子どもも集えるヒミツキチ。その名前〈コダテル〉には、いろいろな意味が含まれている。

戸建ての古民家から始まるヒミツキチ。ワクワクするような“企て”が生まれるヒミツキチ。そして、ここに集う人を“照らす”ヒミツキチ。

この名前が生まれたのは、ホームページ制作会社との打ち合わせ兼飲み会の席でのことだそう。人と人とつながる場で、議論を交わしている最中にふと出てきた「コダテル」という名前。いかにも人と人とのつながりを大切にする濵田さんらしいエピソードだ。

オープンから約半年、フリーランスや会社員などの一般会員、高校生などの学生会員など会員数が増えてきている。自学スペースや、コワーキングスペースとしての利用はもちろん、そこから派生したワークショップや、講演会、講習会としての利用が広がっている。

企画当初は市外、県外の人の利用を考えていた宿泊施設が、ご近所さんの交流の場として利用されることもあり、コダテルの利用方法が、使う人によってどんどん変化しているのもおもしろい。

地元の中高生を対象にしたワークショップから、夏には地域のマルシェに出店する高校生チームが出てくるなど、濵田さんが考える「ワクワクするような企て」が生まれている。

また、オープン当初から取り組んでいる小学生向けの「プログラミング教室」も好評だ。教室のすぐ横では書類づくりに専念するフリーランスがいて、子どもたちにも新たな働き方の理解や憧れが生まれてきているという。

みんなのヒミツキチ、コダテルの歩みは、始まったばかり。大人も子どもも、地元の人も、市外からの来訪者も、境界のない小さな空間から、今後どんなワクワクするような企てが生まれ、八幡浜から発信されていくのか。ワクワクしながら、見守っていきたい。

information

コダテル

住所:愛媛県八幡浜市向灘2187

TEL:0894-21-2629

https://codateru.com/

writer profile

Yoko Yamauchi

山内陽子

やまうち・ようこ●企画と文章。熊本生まれ、熊本育ち、ちょっと放浪、熊本在住。地元を中心に、広告・広報の企画を手がけています。おいしいものが大好きで、お米、お水、お魚、お野菜、いろんなおいしいものにあふれている熊本から離れられません。

credit

撮影:山口亜希子(Y/STUDIO)

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