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〈VUILD〉のデジタルFABは、ものづくりの「ひらめき」を呼び戻す!

  • 2018年5月7日
  • コロカル
自由で創造的なものづくりの感性を取り戻す

パソコンでつくったデータを工作機械に送ることで、特別な技術を持っていなくてもものづくりが容易にできるようになった「デジタルファブリケーション」。最近では、それら機械を自由に使える施設なども増え、一般にも普及が進んでいる。

〈VUILD(ヴィルド)〉では、そのデジタルファブリケーション機である〈SHOPBOT(ショップボット)〉を全国に販売している。これは木材加工に特化した機械で、安価で操作も簡単。板からパーツを切り出すことはもちろん、角材を立体的に削ることも可能だ。かつての宮大工のように、加工された木材同士を組み合わせることで、大型なものが製作できる。

〈ヴィルド〉CEOの秋吉浩気さん(左)と、COOの井上達哉さん(右)。

〈ヴィルド〉CEOの秋吉浩気さん(左)と、COOの井上達哉さん(右)。

〈ヴィルド〉の工房は川崎にあるシェアオフィス〈UNICO〉にある。内部の木製品のほとんどは〈ヴィルド〉製作によるもの。

〈ヴィルド〉の工房は川崎にあるシェアオフィス〈UNICO〉にある。内部の木製品のほとんどは〈ヴィルド〉製作によるもの。

〈ショップボット〉があれば、購入者は自分たちの手でさまざまな木製品をつくり出すことができるようになる。ただし、狙いはほかにもある。〈ヴィルド〉代表取締役である秋吉浩気(こうき)さんが教えてくれた。

「ほかのCNC(数値制御)加工機は、加工データが改変できないようになっていることが多いのですが、ショップボットは素人でも簡単に加工データがつくれるよう、オープンな仕組みになっています。そのため、ユーザーも多く、データや情報をシェアしやすい。私たちが目指している理念に一致しているのです」

アメリカ〈ショップボット〉社製の木材切削加工機。

アメリカ〈ショップボット〉社製の木材切削加工機。

現在までに、全国21か所にショップボットを納品した(2018年4月末現在)。企業から行政まで使用方法はさまざまだが、購入者に共通しているのは、現在の林業や木材を取り巻く環境に問題意識を持っており、“公共性”を大切にしていることだ。

たとえば高知県高岡郡佐川町では、小学校の教育プログラムや地域おこし協力隊のメンバーがプロダクト開発に役立てているという。東京都大田区西蒲田でもFAB付き賃貸&シェアオフィスに納入され、「ものづくりのまち」の活性化にひと役買っている。

量産体制の構築やコストカットなど、企業の営利目的のみならず、“まちとの接点”や“人とのつながり”のハブとして〈ショップボット〉が設置されている事例が多いようだ。それぞれが〈ヴィルド〉が持っているビジョンに賛同しているからにほかならない。

〈ショップボット〉はコンピューター制御で正確に木材を切り抜いていく。

〈ショップボット〉はコンピューター制御で正確に木材を切り抜いていく。

デジタル加工機械が普及し、何でもつくれる世の中になった。しかしまだまだ一部クリエイターのプロトタイプやモックづくり程度にとどまっていて、一般市民は暮らしの中で、どの程度使いこなしているのだろうか。

「デジタル加工機械があれば、本人にとって“最適なオリジナル”がつくれるはずです。しかし現代の人間の創造性がいかに乏しいか。本来ならば、制限を取り払ったときに、もっといろいろなひらめきがあるはず。その生活に対する感性や創造力を、ありものの中から選ぶ生活の中で、自分たちはどれだけ失っているか」

そのため秋吉さんは「創造のための設計支援」行っているのだ。

「物の売り買いからではなく、自分でつくることによって生まれる幸福感や達成感を身につけてほしい。それを実感してもらう仕組みを提供したい」

以前、〈ヴィルド〉では、主婦向けに収納家具をつくるワークショップを開催した。どんな家具が欲しいかという答えは人それぞれ。ある人は棚がほしいと言った。しかしよくよく話を聞いていくと、つくるべきものは棚ではなかったりする。

「“収納家具=棚”のように、どうしても既成概念にとらわれてしまいがちです。子どもに遊具をつくろうと伝えて、すぐにすべり台の絵を描いていたことがありました。子どもにしてすでに枠組みに縛られていると思います」

リミッターを取り払うことができるか。そしてゼロから考える力をどれだけ引き出すことができるか。これを繰り返すことで秋吉さんが気づいたことは「最大限、熟考してつくられたものは、その人らしいユニークなもので、この世にふたつと存在しないものになる」ということ。デザイナー視点からみたら美しいデザインではないかもしれないが、つくった本人にとっては、とても幸福度の高いものになる。

「もっと創造的に暮らしたほうが、絶対に幸せだと思います」

ゼロからイチをつくること。私たちの心がその技術に追いつくための方策を〈ヴィルド〉は教えてくれる。

拠点が100か所できたら、産業構造が変わる!?

秋吉さんは、かつて建築家に憧れていた。しかし「デザイン」と「つくること」、そして「社会」の三者がそれぞれ遠のいていると感じた。特にそれは東日本大震災以降に顕著になった。震災復興の過程で、建築家が必要とされていないと感じたのだという。

「建築を勉強してきて、震災直後に何もできない歯がゆさを感じました。ある一定の層だけが“建築家の作品”を享受するのではなく、もっと社会全般に役立てることができないだろうかと考えていました」

秋吉さんから見た建築家が、トップダウンや権力集中の象徴のように映ったのだ。それは同時に、日本が本来持っていたものづくりの精神に反するものであろう。

「震災で感じた一極集中の脆弱性。その背景は“自然対科学”に抽象化できます。しかし日本の本来の技術は、自然と敵対せず分散できる“やわらかい”システムです。境界を完全に仕切らずに、ゆるやかにつながっていること。それが正しいと、日本中で気がついたはずです」

そのころ、3Dプリンターが個人でも購入できるくらいの金額に下がってきた。デジタルファブリケーションの未来への扉が開き始めたのだ。

「3Dプリンターやレーザーカッター、そして〈ショップボット〉のようなデジタルファブリケーション機械が生活に取り入れられるレベルになった現象自体に、僕はかなりの希望を感じました。生産がインターネットのように分散化し、個人が思い描いているビジョンをそのままかたちにすることができるようになる。みんなが社会に参画できるようになる。そうした求心力と参加可能性、そしてフラットさに、デジタルファブリケーションの魅力を感じています」

一極集中ではなく、技術の分散化、つまり「ソーシャルファブリケーション」。〈ヴィルド〉によってこれがもたらされると、何が起こるのか。たとえば東京でものづくりをする場合、材料をどこからか調達しなくてはならない。しかし日本にはたくさんの森林資源があり、木材がある。地域ならば、材料調達の手間は必要なくなる。

「ものづくりにおいて、都会にいる必要がなくなります。たとえば本格的なフレンチのシェフは、わざわざインフラもない場所にオーベルジュをつくろうとします。それは、現地で調理したほうが素材の鮮度が最大限に生かされているからです。林業やものづくりもそうなるとおもしろいなと。生産者の思いを直接知ることもできるし、特別な体験になります。ものづくりの文脈からも、わざわざ足を運びたくなるローカルといった現象が起こるとおもしろいですね」

それを可能にするのは、木材生産地で独立したものづくりできること。すなわち〈ショップボット〉を中核としたデジタルファブリケーション拠点があることだ。

〈ヴィルド〉COOの井上達哉さんは言う。

「パートナーを全国に100か所つくることが、これから3年間の目標です。100か所揃ったら、既存の産業構造が壊れるかもしれません」

秋吉さんも続ける。

「100か所できると、ひとつの大きな製造工場を凌駕できるのではないかと思っています。大量生産・大量消費は、人間も素材もすべてを均一化してしまう。これだけデジタルで綿密に計算できる世の中なのに、ひとりひとりの個体差や、木1本1本の個体差を無視した一元管理というのは遅れています」

暮らしのなかで使用者が使いやすければどんなデザインでも問題ないし、曲がった木の形状を生かした家具をつくったっていい。材料が身近にたくさん揃っている地域ならば、好きな材料で、好きな機能の製品をつくることが可能になる。しかも、ローカル内の小さなネットワークで生産することで、流通と生産にかかるコストが通常よりも圧倒的に濃縮されるので、高品質な製品を安価につくることができる。

「日本中のローカルに、木材加工のスモールスタートができる仕組みを提供していきます。同時に、建築系スタートアップとして、〈ショップボット〉で出力できる家や家具のフォーマットの開発と提供を進めています。機械を導入することから始まり、最終的に住環境をとりまくすべてをつくることのできる、そんな地域で戦うための武器をローカルに提供していこうと思っています。こうして共感してもらえる人たちをネットワークすることによって、草の根的に世の中を変えていけたらと思っています」

分散化していても、ネットワーキングでつながることができる時代。それぞれがオリジナルかつ強固であれば、それは大きなうねりに成り得るだろう。

information

VUILD ヴィルド

住所:東京都北青山2-9-5スタジアムプレイス青山7F(本社) 神奈川県川崎市川崎区日進町3-4 UNICO 1f-A(工房)

https://www.facebook.com/VUILD.co.jp

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:千葉 諭

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