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岩手県西和賀町の郷土料理「すし漬け」やツアーで感じる、雪がもたらす「発酵パワー」

  • 2018年2月14日
  • コロカル

岩手県の山間部にある西和賀町。積雪量は県内一、人口約6,000人の小さなまちです。雪がもたらす西和賀町の魅力あるコンテンツを、全国へ発信していくためのブランドコンセプト〈ユキノチカラ〉。西和賀の風景をつくりだし、土地の個性をかたちづくってきた雪を、しっかりタカラモノとしてアピールしていくプロジェクトです。今回ご紹介するのは、雪がもたらす発酵文化のひとつ、「すし漬け」。後半には2月に開催されるユキノチカラツアー2018「雪国の発酵をめぐる旅」の詳細をお知らせしていますので、どうぞ最後までご覧ください。

魚を麹やご飯などと漬けて発酵させる「すし漬け」は、西和賀の貴重な冬の動物性タンパク源。

これまでさまざまな「ユキノチカラ」を取り上げてきたが、伝統的な発酵食の文化は、その中の最たるものではないだろうか。麹によりデンプン質が糖分に分解されたあと、酵母・乳酸菌によってつくられる発酵食。雪による低温多湿の気候は、この発酵食づくりに適しているといわれる。

しかも奥羽山系の山々に囲まれた盆地の西和賀の場合は、一日あるいは四季の寒暖差が大きく、土も豊かで、水も空気もきれい。今回の「ユキノチカラツアー」にも同行していただく発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが、「発酵に良い環境」として挙げている条件を、すべて網羅している。西和賀の発酵文化が、今も脈々と受け継がれているゆえんだ。

近年ブームの甘酒は、アミノ酸たっぷりの発酵飲料。

そんな西和賀の代表的な発酵食が、「すし漬け」。魚を貯蔵するためにご飯や麹、塩などと一緒に漬けて発酵させた保存食で、西和賀の郷土料理でもある。日本各地に伝わっている「なれずし」「飯ずし(いずし/いいずし)」と同じような料理、といえばイメージできる人もいるだろう。発酵により醸し出される、甘みと酸味が複雑に入り交じったその味わいは、のどを通過しても口中に余韻が残るほど、力強い。それだけに、好き嫌いの個人差も大きいという。

山に囲まれた西和賀の人々は、昔から隣の秋田県から魚を仕入れ、冬の貴重な動物性タンパク源として「すし漬け」をつくり、食べていた。この料理で岩手県の「食の匠」に認定された湯田地区出身・在住の高橋節子さんも、母親がつくっていたことを鮮明に覚えている。「子どもの頃、11月になると両親と一緒に隣の横手市にハタハタを買いに行ったものです。母親はハタハタをすし漬けのほか、麹漬け、塩漬け、米ぬか漬けにしていました。その頃はすし漬けが苦手で食べなかったですけど、塩漬けのハタハタを焼いたものは好きで、毎朝食べていましたね」

「すし漬け」で岩手県の食の匠に認定された高橋節子さん。自宅の冷蔵庫には、塩を加えてつくる「塩麹」と、砂糖を加えてつくる「甘麹」の2種類を常備したり、もち米のおかゆに麹を加えて甘酒をつくったりと、発酵食の達人でもある。

そんな高橋さんがすし漬けを食べるようになったのは、嫁いでから。お姑さんがつくるすし漬けがおいしく、開眼したそうだ。ただし、魚はハタハタではなくホッケ。昔はどの家庭でもすし漬けにはハタハタを使っていたが、高橋さんが嫁いだ頃からハタハタが不漁で値段が高くなったため、高橋家ではホッケなどほかの魚で代用するようになっていた。「以来、私もホッケのすし漬けをつくるようになりました。ほかに、サケ、イカ、生ニシン、身欠きニシン、サンマでもつくります。ホッケを漬ける時にはカブも一緒に入れますが、サケの時は赤カブ、イカの時はキャベツと、魚と相性の良い野菜を使います。すし漬けは家庭料理なので、使う魚も野菜もつくり方も家によってさまざまですよ」

「食の匠」である高橋さんのすし漬けの主なポイントは3つ。ひとつは、下漬けする時に酢を多めに使い、魚の生臭みを消すこと。高橋さん自身が、魚の生臭さが苦手だからだという。ふたつめは、材料を順序よく重ねて漬けること。ホッケの場合、カブのほかに人参やフノリも使い、それらを順番に重ねることで彩り良く仕上がる。これは実家のお母さんから受け継いだやり方だ。3つめもお母さん譲りで、衛生上の理由から、笹の葉を使うこと。盛りつけた時も、笹の葉の緑で、見た目がいっそう美しくなる。

発酵の力でしみ出す奥深いうまみ。 酒やご飯のおとも、お茶請けとしても楽しめる

そんな高橋さんに、「ホッケのすし漬け」のつくり方を見せてもらった。

まずは、ホッケの皮と中骨を取り除き、大きめのそぎ切りにして、酢と塩で一昼夜下漬けする。

次に、ご飯と麹を混ぜてやはり一昼夜寝かせ、塩と砂糖を加える。ホッケと一緒に漬け込むカブや人参を切る。

これで準備完了。ここからはいよいよ漬け込み作業だ。まず、カブや人参の屑、ホッケの中骨を、漬け樽に敷く。野菜屑や魚の骨からもだしが出るため、ムダなく利用するという。次に、その上に笹の葉を敷く。

さらに、カブ、下漬けしたホッケ、寝かせた麹、人参、カブの葉、フノリという順序で何層にも重ねていき、最後に笹の葉をかぶせて重石をのせて終了。10〜12日後、真冬だと20日後くらいで食べ頃になるそうだ。「昔は冬の間中ずっと食べられるようじっくり発酵させていましたが、今は肉などほかの動物性タンパク質があるから、そんなに長い間食べなくてもいい。ですから、むしろ早く食べられるように漬けているんです」

実際ごちそうになったのは、10日ほど前に漬けたもの。ホッケからは生臭みが消え、逆に発酵の力で奥深いうまみがしみ出していた。酒、特に同じ発酵食のどぶろくと相性が良いことは間違いない。高橋さんによると、ご飯のおかずやお茶請けとしても楽しめるという。

まぼろしの「雪納豆」づくりも! ツアーで、西和賀ならではの発酵文化、暮らし、自然を体験しよう!

西和賀にはほかにも、味噌や納豆、どぶろく、大根の一本漬けなど伝統的な発酵食がある。それらをワークショップで体験できるのが、ユキノチカラツアー2018「雪国の発酵をめぐる旅」(2月24日出発/1泊2日)。前述の発酵デザイナー・小倉ヒラクさんを「発酵案内人」に、発酵のしくみを学びながら味わい、雪国の暮らしと自然を体感する2日間だ。目玉はなんといっても、「まぼろしの『雪納豆』づくりワークショップ」。かつて西和賀では、大豆を煮て朴の葉に包み、さらに稲わらでくるんで雪の中に埋めて発酵させる「雪納豆」がつくられていた。ワークショップでは、一時期途絶えたこの伝統食を復活させた沢内地区の中村キミイさんを講師に、大豆をわらでくるみ、雪に埋める作業を体験する。発酵を経て完成した貴重な雪納豆は、後日郵送。本場西和賀でもまぼろしとなりつつある雪納豆を味わえるという、なんとも贅沢な企画だ。また、発酵食を使った納豆汁をはじめ地元のお母さんたちとの郷土料理づくりや、お母さんたちがつくった大根の一本漬けの食べ比べもあり。さらに、かんじきを履いて雪の上を歩いたり、温泉の〈砂ゆっこ〉、牛乳飲み比べなど、西和賀の暮らしや自然を体験できるメニューも揃う。

発酵食には健康や美容への効果が期待できるというから、この2日間で心も体も元気になりそうだ。

information

ユキノチカラツアー 「2018雪国の発酵をめぐる旅」

昨年の様子はこちら

http://travel-link.jp/archives/7500

ツアー行程など詳細、お申し込み受付

http://travel-link.jp/archives/9999

TEL:019-658-8644(トラベル・リンク)

writer profile

Tamaki Akasaka

赤坂 環

あかさか・たまき●フリーライター。岩手県盛岡市在住。「食」分野を中心に、県内各地を取材・原稿執筆。各種冊子・パンフレットの企画・構成・編集も行うほか、〈まちの編集室〉メンバーとして雑誌『てくり』なども発行。岩手県食文化研究会会員。

credit

撮影:奥山淳志

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