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地元ネットワークを都市部でつくる、三重県の取り組みとは?

  • 2018年1月17日
  • コロカル

写真提供:三重県観光連盟

伊勢うどんが世界平和につながる…?

11月上旬、東京・日本橋の某所。「都会のギスギスをなおすのは、伊勢うどんしかないと思っているんです。世界平和のためには伊勢うどんが必要!」と熱弁をふるう、ひとりの男性。そんな彼の話に熱心に耳を傾けているのは、年齢も雰囲気もバラバラな約20名の男女。この集まりはいったい……?

実はこれ、伊勢うどんを深く愛する人たちによる会合……ではなく三重県南部地域活性化局が、県内でウェブマガジンを運営している〈OTONAMIE(オトナミエ)〉と連携して開催した、東京に暮らす三重県出身者を対象とした交流イベント。

南北に長い三重県の南部地域は、ほかの地域に比べて進学や就職時に地域外に転出してしまう若者が多い地域。でも都市部で生活しているからこそ気づく三重県の魅力もあるだろうし、きっと都市部に暮らしながらも地元のために何か貢献をしたいと考えている三重県出身者も多いはず……という想いから誕生したのが、〈OTONAMIE × TOKYO〉と〈OTONAMIE × OSAKA〉。

東京・大阪在住の三重県出身者と、三重に興味がある人が交流を図りながら、SNSなどを通して三重県南部地域などの魅力を継続して発信することを目指すプロジェクトです。そんな〈OTONAMIE × TOKYO〉の発足を記念して、この日の交流イベントは開催されたのでした。

「三重に暮らす・旅するWEBマガジン」をコンセプトに、三重県各地のディープな情報を発信しているローカルメディア〈OTONAMIE〉。記事を書いているのはプロのライターではなく三重を愛する地元の有志記者で、いまやその数は約130名(!)に。

さて、記事冒頭で伊勢うどんについて熱く語っていた気になる人物。この方はイベントのメインゲストであるコラムニスト・石原壮一郎さん。『大人養成講座』『大人力検定』などの著書で、大人が大人として生きるために欠かせない“大人力”を広めてきた石原さんですが、出身は三重県松阪市。

また故郷の名物である伊勢うどんを応援する〈伊勢うどん友の会〉を立ち上げ、2013年には「伊勢うどん大使」(伊勢市麺類飲食業組合&三重県製麺協同組合公認)に就任し、国内のみならず世界に向けて伊勢うどんの魅力を広め続けているのです。

“大人力”シリーズの著作で知られる 石原壮一郎さん。ご自身のサイト『 大人マガジン 』でも、伊勢うどん情報を発信中。

3部構成となったイベントの第1部として行われたのが『三重大人力講座』をテーマとした、石原さんのトークライブ。「近畿地方なのか、東海地方なのか、関西なのか、中部なのかと、よく言われる三重県の武器は、どっちつかずな“なぁなぁ”なところ」と、語る石原さん。

「白黒つけるということは、もう片方を否定するということ。でもそういう無益な争いに与しないで、両方の味方をする、両方の良さを認めるというところが、三重県の人のすばらしいところだと思うんです」

三重といえば伊勢神宮。内宮への入り口にある五十鈴川にかかる宇治橋は、神聖な世界へ入っていく、人と神を結ぶ架け橋。(写真提供:伊勢志摩観光コンベンション機構)

江戸時代よりお伊勢参りの名物だった「伊勢うどん」。太くてやわらかな麺にかけられた、真っ黒な甘辛いタレ。体を温めてくれる、腹持ちのいいうどんには、伊勢のおもてなしの心がつまっています。(写真提供:三重県観光連盟)

そんな県民性と伊勢うどんの共通点について、持論を展開し「伊勢うどんのことを調べれば調べるほど『“大人力”とは、結局伊勢うどんのことを言っていたのではないだろうか?』と感じるようになった」と話す石原さん。コシがなく、太くてやわらかいことが特徴の伊勢うどんですが「その想像を超えたやわからさが、“うどんはコシが大事”という思い込みがいかにアテにならないかということを感じさせてくれるんです」

「いままでとは違う価値観を導入することによって『違う考え方、文化、宗教があっても良いのではないか?』ということを訴えかけ、ありもしない正解にとらわれて悩むことなんてないと教えてくれるのが伊勢うどん。その魅力を周りに伝えるということで世界の平和や、ひとりひとりの自分にとって幸せな生き方を伝えることができるんです」と、三重と伊勢うどんへの愛を深くからめながら、三重県民にとっての“大人力”と伊勢うどんについてユニークなトークを繰り広げる石原さんでした。

参加者たちが考える、空き家の活用法

続いてイベントの第2部として行われたのが「ないから、あるへ。」をテーマとした参加者たちによるグループワーク。冒頭のトークで「私自身、三重に来たとき『何もないところに来ちゃった』と思った」と話したのは、〈OTONAMIE〉副代表の福田ミキさん。

東京から三重へと移住し、テレワーカーとして働く福田さんですが「東京にある人工的なビルやおしゃれなカフェが『暮らしに必要なのか?』と思ったとき、本当に何もないなかでイチから遊びをつくりだしている大人たちが三重には多くて、衝撃でした」と、移住後の暮らし方や毎日の楽しみ方を紹介。

福田さんによる、東海地区に唯一残る〈ドムドムバーガー〉の店舗を営むご夫婦の記事はSNS上でも話題に。

続いて「視点を変えると“何もない”ってことは、多分ないと思うんです」と話したのが〈OTONAMIE〉代表の村山祐介さん。南伊勢の空き家を活用した事例を紹介したあと、「一回離れて違いを知ることで、三重県の良さがわかったりする。ぜひそういう視点で何かが“ある”ということを見つけていただきたい」と話し、三重に実際ある魅力的な空き家をどう活用するかを考えるグループワークがスタート。

東紀州、伊勢志摩、奥伊勢・三重全域と、参加者が3つのグループに振り分けられて行われたディスカッション。

最初は〈OTONAMIE〉スタッフが“三重あるある”や「地元に帰ったら食べたいもの」といったローカルな話題をふり、初対面の参加者たちが話しやすい空気をつくっていましたが、気づけば「交通の便の悪さを感じないよう、いろいろパッケージしたツアーを組むのはどう?」「テーマパークを訪れた県外の人に、もっと広く観光してもらうには?」「外国人向けのゲストハウス不足をどう解消するか?」とディスカッションは白熱。

約45分のディスカッションのあとには、グループごとに空き物件の活用方法をプレゼン。東紀州グループは空き家を活用しつつ、地元の人たちも集まる場所づくりを提案し、奥伊勢・三重全域グループはアートビレッジを建設しつつ害獣を活用したジビエ事業を提案。

また、伊勢志摩グループが提案したのは、地元の暮らしが体験できる村づくりと、「もうひとつの“ふるさと”の思い出を三重県でつくる」をコンセプトとした、一時的な移住を目的とした施設づくり。

「県内の歴史的な価値もある風景を、誰に見てもらいたいかと考えたとき、まず子どもに見てほしいと思った」ことをきっかけに生まれたという、「もうひとつの“ふるさと”」というこのアイデア。県内の空き家を活用し、テレワークなどの仕事ができる環境と住居、そして子どもを預けられる施設を兼ね備えた場所をつくり、待機児童の問題などで悩む都市部在住の家族に、一時的に三重県へ移住してもらう。

もし家族が再び都市部へ戻ったとしても、三重にできた友だちに会いに来るなど、第二の“ふるさと”となった三重へと帰るきっかけづくりにもつながる……と、長期的な視野も盛り込まれたアイデアには、会場にいた多くの人が共感し、プレゼン後には大きな拍手が起こりました。

都市部で地元の縁をつくる

第3部では〈OTONAMIE〉で実際に記事を書いている3人が、「伝えるチカラ」をテーマにトークを展開。SNS上で話題になった記事を参考に、読み手に共感される記事づくりのノウハウを参加者たちに伝授。トーク後にはイベント参加者ひとりひとりに、それぞれの氏名が印刷された〈OTONAMIE〉の名刺が贈呈され、4時間にわたるキックオフイベントは終了しました。

カメラマンの井村義次さん。「伊勢志摩には伝説を作るサーファー達の話がある!@志摩市」をはじめ、井村さんによるサーフィンに関連した記事は、その多くがアクセスランキングに殿堂入りするほどの人気。

イベント終了後も、参加者同士が連絡を交換し合い、賑わいが続いていた会場。「地元が好きという気持ちを、いろいろな人と共有できておもしろかった」と話していたのは、伊勢志摩・南伊勢町出身の山川さん。「東京で仕事をしていると、地元のことを思ったり考えたりする時間がほとんどなくて。今日は好きな地元について、あらためて考える時間となりました」

建築関係の仕事をされているという、三重県北部・朝日町出身の川崎さんは「建築はものをつくって、それが地域に対してどんな効果があるのかといった話を淡々とつめがち。でも、それだけじゃない方法や考え方があるのを知ることができて、刺激を受けました」

ゲストとして参加した石原さんも「三重県でこういったイベントをしても、ここまで盛り上がらなかったと思います」と白熱したグループワークに驚いていたひとり。「実際にそこまで田舎すぎることもないし、いろいろな要素が揃っているのが三重。何もないところを、むりやり盛り上げようとしているわけではないという手応えが感じられたのも良かったです」

「今回のイベントのために空き家調査をしたのですが、すごくいい空き家が三重県にはたくさんあるんですよ」と教えてくれたのは〈OTONAMIE〉代表の村山さん。

「空き家を使って、漁村で食堂やカフェを開いた移住者の方も、僕の周りにはいます。なかには、お店が繁盛するあまり『ゆっくりしたくて三重に来たのに、なんでこんな忙しくなるんだ!?』なんていう人も(笑)。

あと『家賃を安くするから、空き家の中の荷物を処分してほしい』と言われて片づけたところ、ビンテージ品がたくさんでてきて、魅力的な空間が自然とできあがるというパターンも実際に多いですね。若い人が週末だけでも三重県に移住して何かを始めたら、すごい価値が生まれるんじゃないかと思っています」

「『三重県を離れたからこそ感じるノスタルジーのようなものを、もしかしたらみんな持っているのではないか?』と考えたのが今回のイベントのきっかけでした」と話してくださったのは、今回のイベントを主催した三重県地域連携部南部地域活性化局の川島怜太さん。

「このプロジェクトの根底にあるのは、都市部に暮らす三重県出身の方々に、南部地域の自然や食・暮らしなどの魅力を、SNSなどを通して情報発信してもらい、南部地域のファンづくりを進めることですが、三重県としての最終的な目標は、県外の方に移住・定住してもらうことです。でも実際に都市部で働いていると、すぐに移住することは難しいので、まずは都市部に暮らしながら三重のことに関わってくれる人たちのつながりをつくり、三重県に関心をもってくれる人を増やしていきたいと考えています」

また今回レポートしたイベントの翌週には、大阪で〈OTONAMIE×OSAKA〉の交流イベントも開催され、盛況のうちに幕を閉じました。

参加者自身が三重の魅力を発信することで、さらに縁をつなげていく。これをきっかけに、新しいネットワークが東京と大阪でも広がっていきそうです。三重県出身者のみならず、三重に興味のある人は、次の機会に参加してみては。〈OTONAMIE × TOKYO〉と〈OTONAMIE × OSAKA〉のこれからの展開にも注目です。

三重県のコミュニティに参加してみませんか。まずは、こちらをチェック!

三重県のFacebookページ「縁あって三重に住んでます」

三重に暮らす・旅するWEBマガジン「OTONAMIE」

writer profile

Miki Hayashi

林みき

はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手がけた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。

credit

撮影:水野昭子

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