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地元アウトドアガイドと、渓流歩き「シャワーウォーク」を楽しむ

  • 2017年11月30日
  • コロカル
山、森、清流、湖がそろうフィールド

紅葉の隙間からやわらかな光が降り注ぐなか、川の中を上流に向かってじゃぶじゃぶと歩く。肌に当たる水はひんやりと冷たく、日に日に秋が深まっていることを教えてくれる。

なだらかな一枚岩の川床が続く、霧降川の「床滑」。水の流れに逆らって上っていくのが楽しい。

「ここの川底は大きな一枚岩になっていて、シャワーウォークにぴったりの場所なんですよ」「冷たくないですか? こっちのほうが比較的浅くて、歩きやすいですよ」

前を歩くふたりが、こちらの様子をいちいち気にしながら声をかけてくれる。

「夏にここを歩くのも気持ちよさそうですね」と言うと、「だけど夏は歩くだけでも汗をかくから、膝下だけ水に浸るシャワーウォークより、全身ずぶ濡れになるキャニオニングのほうが断然おすすめですよ」とのこと。シャワーウォークは紅葉シーズン限定の、贅沢なアクティビティなのだ。

川の中でも滑りにくい、沢登り用のシューズを着用。

「これからの季節だと1月下旬くらいから、雲竜渓谷のスノートレッキングがイチオシですよ。滝や渓谷が凍って、巨大なつららができるのですが、その年によって形が全然違うんです。

それと、スノーシューという西洋“かんじき”を履いて奥日光を歩く、スノーシューツアーもおすすめですね。本州の北海道と言われていて、サラッサラのパウダースノーの上を歩くことができるんです。奥日光の温泉とセットで楽しむと最高ですよ!」

厳冬の日光の自然を体験できる雲竜渓谷でのスノートレッキングは、NAOCのトレッキングツアーで一番人気。(写真提供:NAOC)

地元がこんなにすごい場所だったなんて

日光東照宮のお膝元である栃木県日光市は、日光連山がダイナミックな地形をつくる自然豊かなエリア。首都圏からのアクセスがよいこともあって、東照宮などの観光だけでなく、本格的なアウトドアを楽しめる場所としても人気を集めている。

鬼怒川温泉エリアをベースにしている〈NAOC(ナオック)〉は、日光にいくつかある、アウトドアアクティビティを提供している会社のひとつ。日光のフィールドを生かして、鬼怒川ラフティングやキャニオニング、マウンテンバイク、スノートレッキングなど季節ごとにさまざまなメニューをそろえている。

シャワーウォークの案内をしてくれた、神山智司さんと沼尾隆平さんはNAOCのアウトドアガイド。とてもフレンドリーで、歩きながら冗談を言って笑わせたりして、瞬時に場を和ませてくれるところはさすが。

ふたりとも日光出身で、Uターンしてこの仕事に巡り合ったことで日光をより深く知り、自分たちが暮らす土地に魅力を感じているのが、言葉の端々から伝わってくる。

「僕の実家は東照宮の近くにあるのですが、高校卒業後は都会に対する憧れもあって横浜の大学に進学して、15年くらい向こうで暮らしていたんです。日光出身だと周りの人に言うと、『あの日光!?』とか『修学旅行で行ったことあるよ』などという反応が返ってきて、大抵みんな知っていて、すごいところなんだなと。いずれ帰ろうとは思っていたのですが、東日本大震災を機に次の職も決めないまま戻ってきてしまいました」と話す神山さん。

学生時代は体育学部を専攻していた、スポーツマン。「トークが武器」と自他ともに認めるムードメーカーだ。大学生のときにラフティングをやったことはあったものの、都会で暮らしていたときは特に、それが職業として成り立つとは思いもしなかったよう。地元でいろんな仕事を調べているうちにNAOCに行き着き、「こんな仕事を日光でできるなんて!」と飛び込んだ。

一方の沼尾さんは、NAOCのベースからすぐ近くの鬼怒川温泉育ち。

「家のすぐ下に鬼怒川が流れていて、僕の部屋の窓を開けるとNAOCがラフティングをやっているのがいつも見えて、楽しそうだなあと思っていました。隣町の大学に進学して、就職を機に日光に戻ってきたのですが、あるとき友人を誘ってNAOCのアクティビティに参加しようと思い、自転車に乗って直接ここに来たんです。予約の際にNAOCの現会長と話をしていたら、僕が自転車で来たもので『いったいどこに住んでいるんだ?』ということになり、ガイドとして誘われたのがきっかけです」

当時勤めていた会社とかけもちで、アウトドアガイドをやるようになり、のちにNAOC一本に。神山さんいわく、沼尾さんは子どもに大人気のガイドで、ファミリーキャニオニングをすると親御さんの間で評判が上々なのだとか。

仕事も暮らしも楽しむことで、魅力が伝わる

現在、NAOCに所属しているガイドの数は、40人以上。関わり方もいろいろで、以前の沼尾さんのようにセカンドワークとして宇都宮市や鹿沼市、栃木市など栃木県内から週末だけ来る人もいるし、毎年夏休みに東京からやって来る大学生ガイドもいる。

「実を言うとまだまだガイドを募集しているんですけど、アウトドアが根っから好きな人というよりも、僕がこの業界に入ったときみたいに、何となく体験してみたら、その楽しさにハマってしまったような人のほうが向いているのかもしれません。うちのガイドにも、もともとはアウトドアの“ア”の字も知らなかったような人もいますから」(沼尾さん)

ふたりがガイドの仕事にやりがいを感じるのは、参加者に笑顔でお礼を言われたとき。

「年配のお客様には『お世話様でしたね』などと言われるのですが、こちらとしては自然のなかでルールを守りつつ、思いっきり一緒に遊んだだけなのに、お礼を言われるなんて、と恐縮してしまいます。お金を払っているからとか、サービスを提供しているからどっちが上というのではなく、人と人の本来のあり方をすごく実感できる場所なんですよね」(沼尾さん)

「ラフティングはひとつのボートに7人くらい乗るんですけど、初対面の人たちでも異様な一体感が生まれるんですよね。全然違うところからやって来た、世代も職業も違う人たちが急速に仲良くなれるような場所って、普通の観光だったらなかなかないじゃないですか。アウトドアは、まだまだいろんな可能性を秘めていると思います」(神山さん)

普通の観光(といっても世界遺産!)もできるし、アウトドアのような体験型の観光も比較的近いエリアでできてしまう日光は、あらためて観光資源の豊富な場所だ。外から来る人たちと接する機会の多いふたりは、実は地元の人たちが日光の魅力に一番気づいていないのでは、というふうにも薄々感じている。

日光市が主宰する、若い世代を対象にした〈日光創新塾(そうしんじゅく)〉というまちづくりセミナーに参加したり、つい最近だと「大人の運動会」なるものを自分たちで企画したのも、そんな思いの表れだ。

「創新塾に参加してよかったのは、日光のことを考えている若い人がたくさんいるのを知ることができたこと。大人の運動会を企画したのも、結局のところ、人とのつながりをつくりたかったんですよね。マイムマイムをみんなで踊って体を温めることから始めて、イス取りゲーム、長縄跳び、ドッチボール、最後にリレーもやりました。参加者のひとりが、観光で来ていたイギリス人カップルを道端でナンパして連れてきたのですが、彼氏がドッチボールでめちゃくちゃ活躍してました(笑)」(神山さん)

もしも海外で、ローカルの人たちとそんな場を思いがけず共有できたら、どんな旅よりも思い出深い記憶となり、その土地ことが大好きになるに違いない。

神山さんがアウトドアガイドの仕事を、こんなふうに表現した。「なんでもそうですけど、自分が楽しまないとお客様もついてこない。だから楽しんだ者勝ちですよね」

たしかにそれは、アウトドアガイドの仕事に限らず、ひとつの土地に根を張って暮らす、ということにも言えるかもしれない。笑顔の絶えない神山さんと沼尾さんと一緒にいると、日光がとても魅力的なまちに思えてくるのは、きっとそういうことなのだろう。

日光の多様な暮らしの一瞬一瞬をとらえた、日光市の移住定住PR動画「MOMENT 鼓動する日光」はこちら

information

NAOC 

住所:栃木県日光市鬼怒川温泉滝871-2

http://www.naoc-jp.com/

writer profile

Ikuko Hyodo

兵藤育子

ひょうどう・いくこ●山形県酒田市出身、ライター。海外の旅から戻ってくるたびに、日本のよさを実感する今日このごろ。ならばそのよさをもっと突き詰めてみたいと思ったのが、国内に興味を持つようになったきっかけ。年に数回帰郷し、温泉と日本酒にとっぷり浸かって英気を養っています。

credit

撮影:石井孝典

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